21:下僕契約とレプティリアン(後編)
4人は宿屋へと戻ることへとなった。宿屋へ戻る途中、フェイトは重大なことを思い出す。
「……蛇口切り落としちゃった」
「蛇口? ああ~あの部屋? まぁ良いでしょ、泊まってたのはあの男だし」
アントニーの言い分も一理ある。元はと言えば、フェイトはカイルを守るために蛇口を切り落としたのだ。宿屋に申し訳無い気持ちはあるが、お金を
請求されるのも困るので、フェイトはアントニーの言い分にうなずいた。
「……さぁ分かるよな?」
耳に入ってきた声は、木陰の方からだ。他の面々も気がついたようで、視線を木陰の方へと全員向けていた。
そこにいたのはコモードの村人らしき男性と、緑色の鱗の生えた女性だった。
「あ、レプティリアン……!」
3人もそれに気がついたようで、抜き足差し足と慎重に木陰へ近づく。近づくにつれ、会話が鮮明に聞こえてくる。
「ですが私は……」
「抵抗する気か! 契約主様が下僕であるお前ともっとお近づきになってやろうつってんだぞ!?」
2人の様子がどうやらおかしい。会話の内容を聞けば聞く程、その事実は確信となっていく。
既に彼女はあの男性によって契約を無理矢理させられていたらしく、彼女は男性に体を狙われているようだ。
どこに契約をしたかまでは不明だが、強く逆らえない程度に重たい部分なのだろう。
「もう討伐完了しちゃってるみたいだね。これ以上はフェイトちゃんの目に毒だろうし、行こうか?」
アントニーが小声でフェイトに言う。契約上、フェイト達が彼女を救える問題ではない。
だが、彼女を思うと、同じ女性としてとても不憫でならなかった。フェイトはゆっくりと歩み寄ると、2人に、「すみません」と声をかける。
男は突然現れたフェイトに驚き、とっさにレプティリアンから離れると、はははと小さく笑った。
「あの……あっ! あなたがレプティリアンね!! 確かギルド討伐リストに……」
ぎこちない演技で、フェイトがカバンから紙を取り出そうとする。
無防備な背中を見せているフェイトに向けて、男が懐から短剣を取り出してフェイトの背中に突き刺そうとすると、フェイトを飛び越えてやって来たミコトが盾に変身した。空中から落下すると、男性の手に命中して地面に突き刺さる。
「えっ!?」
フェイトが振り返ると、丁度ミコトが元の姿に戻っていた。
「お前がいきなり飛び出すから悪いんだぜ。お前がもっと慎重にやってたら、腕ごと粉砕しなくて済んだんだからよ」
ミコトの言葉に、フェイトは、「あうう……」と申し訳無さそうに男性を見る。
「……悪いけれど、私はもう討伐リストから外されているわ。さっき、その人に、倒されたから」
レプティリアンはそう言うと、そのまま林の奥へと隠れるように歩いて行ってしまった。
「キサマ等……いきなりこんなことをして、許されると」
「お前が先に、いきなり刃物をコイツに刺そうとしてたんだろ。行くぜ」
ミコトはフェイトの腕を掴み、宿屋へとずんずんと向かって行った。
「……下手にこう言うのに関わると、ロクなこと無いんだけどなぁ」
アントニーはぼそりと呟くと、頭をかきながら宿屋の中へと向かい、ライトレットも急いで皆について行った。
・ ・ ・
チェックインを終わらせると、ミコトはフェイトと共に部屋の中に入り、扉の鍵を閉めた。
「どうしたの?」
不思議そうに尋ねるフェイトも無視して、フェイトの眠る予定のベッドにフェイトより先に腰掛けて腕と足を組んだ。
「下僕契約って、マジに怖いやつなんだな」
「お前で良かったよ。村の奴がこんなシステム知ってたら、今頃俺様どうなってたか」
うつむいて表情が見えないが、ミコトが怯えていることは予想がつく。フェイトはミコトの隣に座ると、背中を強く平手で叩いた。
「何すんだよ!!」
「男の子でしょ、もっとしっかりなさい」
いたずらっぽく微笑むその笑顔にミコトの胸が数秒高鳴ったが、高鳴りが終わると同時に冷めた表情でフェイトを見て言った。
「お前、年上に向かって何上から言ってるんだよ」
ミコトの突き刺さるような瞳と健在なツッコミによって、フェイトは本来する必要がないのに、その場に土下座をして謝った。
(21:下僕契約とレプティリアン(後編)了)




