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19:溺死の女神セドナ(後編)

この話には以下のキャラクターが出てきます。


カイル

挿絵(By みてみん)

 フェイトが眠ったと同時に夢の世界へと入っていくと、すでにドリがいた。


「ああ、いたいたドリさん!」


「ああ~! フェイトだ~! 僕すごっく会いたかったよ!!」


ドリがフェイトの手を握って微笑むと、思わずフェイトもほころんだ。


「あっとそれでね? 今回は私はドリさんの契約を使って無理矢理眠らせちゃったんだけど」


「フェイトに会えるなら構わないよ!!」


「有難う……あっ、それで、ドリさんって確か見たい夢を他の人に共有させることが出来たよね?」


「うん、何か出来るみたい。必要なの?」


 首を傾げて聞くドリに、フェイトがうなずき、ドリに事情を伝える。その後、部屋で眠る人物に、今の状況を夢化して欲しいと頼んだ。 フェイトの頼みを快く引き受けると、ドリは目を瞑って夢化させる内容を頭に浮かべて展開を順序よく整理する。


 夢が完成したのか、一瞬にしてフェイト達のいる場所が木製の宿屋になり、多くの水がどっと押し寄せると、2人はそのまま溺れて意識を失ってしまった。


 水の押し寄せる音が無くなり、フェイトが扉に頭を付けたまま足元を見ると、ぬれていた跡すらない。


「……嘘?」


 フェイトはまるで夢だったかのような出来事に、動揺を隠せずにいた。


 そんなフェイトをお構いなしに、強引に扉が開かれた。フェイトは即座に扉から離れて出てきた人物を見上げると、驚きから目を見開く。


 扉から出てきた人物は、以前赤鬼討伐の際にフェイト達が妨害した、研究者のような男、カイルだったからだ。


 フェイトが逃げたのが扉によって影となる場所だったことが幸いし、カイルは気付かずに扉を開けたままの状態で受付へと駆け寄って行った。


 カイルがいなくなった隙に、フェイトはカイルのいた部屋の中へと入っていく。部屋には以前から泊まる気が無かったのか、ほとんど荷物は置かれていない。だというのに、デスクの上に置かれていた宿屋の物とは思えないパソコンに違和感を覚える。


 パソコンを開くと、既に電源は付かれ、パソコンはすぐに光を灯した。ディスプレイに映し出されていたモノに、フェイトが驚く。


「私……!?」


 画面に映っていたのは、サチが死んだとミコトに話され、ミコトの腕を掴んでいるフェイトの姿であった。恐る恐るマウスを動かして、一時停止を解除する三角ボタンをクリックする。


 動き出したフェイトは、泣き崩れてミコトを一層強く掴んでいた。今こうして見るとミコトは明らかにフェイトに腕を掴まれて痛がっている。泣き崩れる顔はとても汚く、色々とショックを受けた。


 そこでふと、フェイトが思い出す。下の階には男性陣がいるはずだ。それだと言うのに、男性陣は駆け上がって来ないのは何故だ? と。


 胸騒ぎがした。階段を登ってくる足音は、あくまでゆっくりだ。フェイトはパソコンのふたをしめ、息を殺して、逃げようとした。


 だが、彼がなぜフェイトをパソコンの画面に移し、どのようにしてフェイトの姿をこの液晶の中に収めたのかが知りたくなってしまった。そこで、急いで隠れる場所を探した。


「しまった……」


 カイルはポリポリと頭をかいて顔をしかめた。部屋のいたる所を改めて見渡し、フェイトがいないかを確かめる。ベッドの下、クローゼットの中、テーブルの下。そして、トイレのドアノブに手を掛けた。


 それと同時に、トイレから大量の水が押し寄せカイルの顔面に降っかかり、トイレに溜まっていた水は、デスクの下にしゃがんで潜んでいたフェイトの元へもやって来た。内心焦っていたものの、ここで出てはやられてしまう。フェイトは息を殺して目を固く閉じる。


 カイルは、数秒固まっていると、頭を抱えて悲鳴を上げた。フェイトはカイルの突然の悲鳴に驚き、思わずデスクの隙間からカイルの様子を覗き込んだ。


「汚い汚い汚い汚いっ!! ああああああっ! もう! もうっ! 最悪、キモイ、ゲロい!!」


 カイルはその場に跪いて落胆して首を左右にブンブンと振り始めてしまった。


「……いや。これをかかってしまった時点で、ゲロは俺なんだ。俺がゲロと化してしまったんだ……。笑うがいいさ、ゲロとなってしまった俺を、誰か笑うが良いさ!!」


 その後も、不浄な物が降りかかってしまったカイルの独り言は、とにかく陰湿であった。一瞬にして汚れてしまった自分を、何度も何度も自虐した。


「……もうどうでも良いや。風呂に入ろう」


 自虐行為にすら()えたカイルは、力無く立ち上がり、風呂の蛇口をひねる。すると、今度は蛇口から出てきた水が瞬時に凍り、先をするどくさせると、カイルの腹を貫いた。


 何かが突き刺さる音と、カイルの小さく出たうめきに、フェイトが飛び出した。だが、フェイトが飛び出した頃には、もう2回程突き刺さる音が聞こえ、フェイトは唇をキュッと噛む。風呂場の方を見れば、腹を3回刺されたカイルが腹から血を流し、両手を押さえて壁に横たわっていた。フェイトが狼狽えている感に、カイルがもう1度刺されてしまった。


 実体の見えない敵となればと、フェイトが声を張る。


「イアカットプリースト、契約者フェイトを守るため、その力いざ開かん!!」


 契約の力によって瞬時にゴーグルとヘッドフォンが装着され、フェイトは前へと現る。


「……やっぱり潜んでやがったか……」


 カイルはそう呟くが、顔をふせると、意識を失ってしまった。


「あなたの運命、今変えてみせましょう」


(19:溺死の女神セドナ(後編)了)

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