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17:セカイの華世界(後編)

 適当に細い木々を掻き分けて、人に見つからなそうな場所へとやって来ると、抱えていたフェイトを降ろした。


「ミコト君、何!?」


 えっ、えっ、とフェイトは明らかに動揺していた。この先のミコトの行動がフェイトには何か全く分からない。


 ミコトは雑草の上に胡座をかいてどかっと座る。フェイトは置いてきてしまった2人の心配してしきりにやって来た道の方を見たが、ミコトが地面を叩いて座れとうながすと、フェイトはそこに乙女座りになる。


「サチって女の話なんだけど」


「サチちゃん!? 知ってるの?」


「ちょっと」


「そうなの? ミコト君友達だったの? それとも知り合い? ミコト君にとって、サチちゃんってどんな子だった?」


 続けざまに質問攻めするフェイト。そんな彼女の瞳はキラキラと輝いていた。この瞳の輝きを、自分が消し去ってしまうのかもしれない。ミコトの表情がくもっていく。


「どうしたの? ……もしかして、あまり良くない出会いだったの?」


 ミコトの目の能力も理解していたため、フェイトは心配になり、おだやかにたずねる。


「サチは、死んだ」


 本当はかもしれないと言いたかったが、曖昧に話して、もしも彼女が死んでいたら。ショックは倍以上になるだろうと、ミコトはあえて心を鬼にした。


「……え? えっと、今、何って言ったの?」


「サチは、死んだ」


 フェイトは笑顔のまま、と言うより、そのまま表情も動きも固めてしまい、まるでミコトが嘘だと言ってくれるのを待つようにずっと動きを固めている。


「死んだ。死んだって言ったら死んだ」


 曲げないミコトの言葉に、徐々に固まっていた表情をくもらせていく。ミコトの見たくなかったモノが、今目の前にある。


挿絵(By みてみん)


「……何で!?」


 フェイトはミコトの両肩を掴んでミコトを力強く揺らした。早く嘘だよと言えと脅すかのように、何度も揺らし、眉を吊り上げて怒鳴る。


「何で、どうして!? 根拠は!!? 君はその光景を見たの!?」


 フェイトの崩れる表情、痛む程強く肩を掴む腕、怒りのあらわとなった声、全てがいちいちミコトの胸に突き刺さる。人の苦しむさま、痛がるさま、怒るさまなど何度だって見てきたはずだった。だと言うのに、今はこんなにも痛くて苦しい。ミコトはそれでも、否定もかもしれないの付け加えもしない。


「お前を狙った藍色の髪の男いたろ」


 ミコトが言葉を発し始めると、ギチギチと肩を掴む力が強くなっていく。ただでさえ馬鹿力に定評のある彼女、これ以上掴まれては両肩が粉砕するかもしれない。それ程に苦しい痛みだった。


「アイツは、サチの兄ちゃんだ」


 その言葉を聞いた途端に、フェイトの腕の力が徐々に弱まり、うつむいた顔がゆっくりと上がる。うつむいて隠されていた目からは、涙と鼻水がこぼれ落ちた。


「……彼が……?」


「サチは、強くなるって言ってあの兄ちゃんの前から消えて数年後、亡くなったらしい。ご丁寧に手紙で来る辺り……殉職なんだと思う」


「……ミコト君、知ってる?」


「何をだ」


「あのね、どこかの組織でね、人体改造が出来るらしいの」


 何を言いたいのか予想出来てしまったミコトは、眉間にシワを寄せて首を強く横に振った。


「黙れカス」


「……私の体があれば」


「ウルセェ、肥溜(こえだ)め沈めんぞ」


「サチちゃんは、生き返るかな?」


 ミコトの抵抗も虚しく、フェイトは言葉を貫いてしまった。


 こんな言葉を聞くくらいなら、旅をやめると言ってくれた方が良かった。彼女は、人の運命を変えると何度も言ってきた。 人の運命を変える為なら、自分の命も惜しまないなんて。


 ミコトは更に眉間に力を込め、瞳に涙を溜めると、イカれた様に微笑むフェイトの頭を叩き、フェイトを強く抱きしめた。


「んなモンは偽善だろ!? お前はそれでもいいかもしれないし、もしかした

らあの妹や、兄ちゃんだって喜ぶかもしんねーけど、残されたこっちはどうなると思ってるんだよ!?」


「……え?」


「お前がやってみろ、次はお前を助けるためにこっちがお前の身代わりになってやるからな! それでいいならいくらでも死ね!! 死ね死ね死んじまえ!!!」


「ミコト……くん……」


 なぜ自分はこんな1人の少女の為に命をかける発言までしているのだろう。急に冷静になったミコトがハッとして熱くなった額に手を当て、抱きしめていたフェイトを静かに離して言った。


「……今の無し!!」


「……な、無しなの……!?」


「んだ。有りであって欲しかったのかよ」


「ちょっと……仲間として信頼してくれてたんだって、思うから」


 抱きしめられて、身代わりになるとまで言った異性を、あくまでも仲間だと思っているらしい。ミコトは腹立たしさを覚えると、「テメェにくれてやる命なんて無ェわ!!」とブチ切れた。


「フェイトちゃん、その馬鹿坊主の言葉は聞かなくて良いよ」


 ミコトが声の方へと視線を向けると、やって来たのはやはりアントニーとライトレットだ。


 アントニーの方をフェイトが見ようと体を動かしている瞬間に、アントニーがフェイトに飛び付いてきつく抱きしめる。


「俺はやだよ。フェイトちゃんが死んじゃうの。……ついでに、お前が死ぬのもね」


 アントニーはミコトの方を見つめて皮肉ったらしくほくそ笑んだ。


「……!!」


「それにねフェイトちゃん。1度亡くなってしまった命を不条理に生き返らせるのはとても難しい。そもそも、魂が無ければ、体を捧げても誰の魂と一緒になるか分からないじゃない? 今のフェイトちゃんがするべきなのは、サチちゃんがどこでなぜ亡くなってしまったのか事情を知ることだと思うんだ。そして、もし君がその要因に関わっていたのだとすれば、君はサチちゃんの分まで頑張って生きていかなくちゃいけない。多くの人の運命を変える為に」


「アントニーさん……」


「だとしたら、あの男の人に会うのが早いかもしれませんね」


「まぁ、そういうこと。アイツのことだから、いずれ勝手にやって来ると思うけどね」


「アイツの名前なら、キドっつーらしい」


「あ、意外と立ち直り早かった」


 ライトレットがミコトの様子を見て呟く。


「そっか。キド君、か……今度会った時は、あなたやサチちゃんのことを……」


「……前へ進みましょう。フェイトさん」


「……分かったよ、みんな、ありがとう」


 フェイトが立ち上がると、皆嬉しそうな顔をして、全員立ち上がった。


(17:セカイの華世界(後編)了)

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