16:セカイの華世界(前編)
流れ上、男性陣3人が女性のドレスを着ることになった。3人はソレイユのいるクラブの大部屋から去って着替えさせられることになってしまった。
3人を呆然と見送ると、無防備な肩をトントンとソレイユに叩かれ、フェイトにも黒いスーツを着せてくれた。
普段結び目の見えない荒ぶるアンダーツインを作る髪留めを外されると、それをポニーテールにする。
「やっぱりや」
ソレイユの言葉に、フェイトが不思議そうに首をかしげた。
「フェイトちゃん、とっても男前やで」
予想外のソレイユの言葉に、フェイトががくりと肩を落とした。フェイトの乙女心など気にも止めず、ソレイユは両手を合わせて喜んでいる。
「フェイトちゃん!!」
扉越しにアントニーの声が聞こえてきたかと思えば、両手で勢い良く扉を開けて入ってきた。女装をしたアントニーの姿に、ソレイユがウッと言葉を詰まらせて顔を青くさせる。
「ぶっちゃけ言うで。ごつすぎるやろ」
ストレートなソレイユの言葉にアントニーはムッとさせて口をすぼめる。
「腕も足も太すぎるで」
「着痩せするタイプなの!!」
見るも虚しい姉弟喧嘩を、フェイトは普段着ることのないスーツの触り心地を確かめながらチラチラと見つめる。
「まぁ粗大ゴミは放っておいて、可愛子ちゃんのミコト君はまだなん?」
ソレイユの言葉に、ミコトとライトレットを探しに行こうとフェイトが廊下へと出た。しかし、フェイトが出るまでもなかったようで。ミコトは既に廊下に姿を現していた。
以前まで女体魔法をかけられ、普通に女性として生活していたと言うのに。ミコトは頭を押さえ、大股を開いて首を横に振る。その姿はまるで駄々をこねる子供のようで、フェイトから見ても明らかに行きたくなさそうなのが分かった。
「あ、フェイトさんすみません……ミコトさんがなかなか行きたがらなくて」
フェイトは、言葉を発した人物を疑いの目で見た。
「え、ら、ライト君?」
思わずフェイトは1歩2歩後ろに下がった。
前髪を下ろしたせいなのか、あるいは素顔そのものがそう悪くないのか。見ただけでは背の高めな女性にしかフェイトは映らなかった。
「そうですよフェイトさん。メイクしてもらってて、肌の質は大分誤魔化してもらってるんです」
ライトレットの言葉を聞き、フェイトは少し安心したように溜息をついて頷くと、目の前の人物がライトレットであることを百歩譲った様な心境で認めた。こうでもしないと、女性である自分より、ライトレットやミコトが可愛いと言うことになり、女性である自分自身が一体何なのだろう? と感じてしまうからだ。
「ミコト君……」
フェイトの言葉を聞き、ゼンマイ式ロボットのようにぎこちなくミコトが振り返った。徐々にミコトへと近づいていくと、フェイトが口を開く。
「ミコト君は今までずっと女の子だっただけあって、やっぱり可愛いね。小さいし」
そう言ってよしよしとフェイトが笑顔でミコトの頭を撫でた。
フェイトからの褒め言葉ではあるものの、可愛らしさを褒められてしまった上に年下に子供扱いのように頭を撫でられる始末。ミコトは心底嫌そうな表情をし、わずかに力を込めた拳をフェイトの腹筋に突き当て、無言で去ってしまった。
「ミコトさんは一応男性ですし、可愛いとか小さいはちょっと余計だったのでは……?」
2人はミコトの不機嫌そうな背中を見つめ、あちゃあと吹き出しの出ていてもおかしくない表情をした。
(16:セカイの華世界(前編)了)




