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14:謎の少年急襲(後編)

この話には以下のキャラクターが出てきます。


少年

挿絵(By みてみん)


少女(子供)

挿絵(By みてみん)


少年(子供)

挿絵(By みてみん)

 少年が殺す勢いで魔法を連続で当てたと言うのに、グラグラと安定しない意識の中、ミコトに助けを呼ぶかのようにフェイトは叫んだ。


 すると、ミコトの腹に乗っかっていた少年へと不思議な波動がぶつけられ、がっしりとした木に少年が波動の衝動でぶつけられてしまった。


 ふぅとミコトが呼吸を整えて立ち上がると、ミコトの周りを光がおおい、光が弾けて消える。今度はミコトとフェイトの唇がキラリと光り、ミコトが自分の頭を触る。不思議なことに、血が流れていない。


「……ヤダやだ。契約しちゃったらチートどころじゃないじゃん。チート通り越してクズだよ、お前くず餅」


 木にもたれかかり、肩を押さえながら、少年はあきれたように吹き出した。


「くず餅? 何だか美味そうな響きじゃねぇか」


 突然のパワーアップに喜びながらも、ミコトはフェイトの剣を少年へと向けた。


「テメェの運命、今俺様が変えてやろう!」


「黙れ小僧! 便乗乙め!!」


 まだ血の収まるところを知らない腕から手を離し、片手のみでミコトを狙った。


「で、コレって一体どんなことが出来るんだ?波とか出るのか? 波とか!!」


 フェイトの方を見て聞いたが、フェイトは意識を失って倒れたままだ。途端にミコトが表情をくもらせ、波を出せそうなポーズを色々試してみるが、どれも反応しない。


「……オウマイゴッドッ」


「ざまぁっ!!」


 少年手首を振った後、片手をミコトの顔面に向けて当てようとする。


「ええい、どうにでもなりやがれっ!!」


 少年の攻撃をよけた後、剣を振ることも出来たが、フェイトのように上手く(みね)の方をぶつける自信も無かった。ミコトは、あえて剣を投げ捨て、少年の視線を剣に向かせると、素手で少年の腹をぶん殴った。


 その直後、急にミコトのいる世界が変動した。


 ・ ・ ・


 ミコトはまるで夢のような何もない真っ白な空間に、首をかしげる。


「どこだ? ここ」


 ミコトのいる地点は真っ暗だ。奥行きのある方に、小さな光が見える。光の先へと走って向かうと、先程戦っていた少年に似た子供と、少年と同じ藍色の髪の少女がいた。


「サチ、一体どうしたの?」


 少年は少女に向けてサチと呼んだ。どこかで聞き覚えのある名前。


「……確か、フェイトが探してるつってた……」


 ミコトはその場に存在していて、2人の眼下に入っていてもおかしくないのだが、2人がミコトの存在について触れない辺りは、ミコトは見えていないのだろう。


「私ね? フェイトちゃんに助けてもらって、もっと強くなりたいと思ったの。だからね、ちょっとの間お兄ちゃんとはお別れするね」


 サチと呼ばれる人物からフェイトの言葉が出た以上、彼女がフェイトの探しているサチであると言うことは確かなようだ。


「僕も行くよ?」


 少年が来ようとすると、サチは首を横に振った。


「何で!?」


「きっと、お兄ちゃんじゃ耐えられないから」


「……耐えられない? そんなところにサチまで連れて行けるわけ」


 少年の言葉を静止させるように、サチは少年の両手を掴み上下にブンブンと振った。


「1人で行くの! 私はもうお兄ちゃんがいなくても生きていけるんだから! シスコンなお兄ちゃんなんて嫌い、大嫌いだもんね!!」


 サチが真っ白で何も無いと思われていた壁に手をかけ、扉を開くと、白い扉の向こうは希望に満ちた青々とした自然の世界が広がっていた。


 そして扉の閉じられた瞬間、世界はまた一変する。少年とミコトを残し、映像がたたみかけるように流れていくと、また白い背景の世界に戻った。


 真っ白な扉が開かれると、多くの鎧に身を包む男性達が現れた。扉の向こう側の景色は重々しい曇天(おどんてん)が広がっている。


「失礼致します。キド様」


 キドと言うのが彼の名前らしい。ミコトは、先程より数年分成長しているキドの方を見た。


如何用(いかよう)で?」


 機嫌の悪そうなキドに男性の1人が裏地の白い紙を手渡した。男性達の側からでは文章が見えない。ミコトはキドの後ろに移動して紙を覗き込んだ。


 すると、そこにはミコトですら目を疑う文面が打たれていた。


挿絵(By みてみん)


「サチが……死んだ……?」


 紙に電子的に打たれた心無い文面には、サチが死んだとのことが記されていた。


「サチが死んだ!? それじゃあフェイトが……」


 フェイトだけではない。ミコトは隣にいるキドの青ざめた表情を横目で見る。


 この先の展開は、おおよそ分かる。多少予想と違おうが、ミコトはもはや聞く耳も持ちたくは無かった。


 真っ白な扉の前へと行き、ミコトは強引に扉をけとばして外へと出た。


 ・ ・ ・


 ミコトはハッと、意識を現実に戻した。左を向けば、キドは頭を抱え、ミコトを血眼の眼球でにらみつける。


「……見たな……?」


 あまりにもオカルトチックな表情と言葉。それも、真実を知ってしまったミコトには、悲しみしか感じられなかった。


 ミコトは攻撃体勢を止め、キドに背中を見せてフェイトの元へと駆け寄ると、フェイトをお姫様抱っこで重たそうに持ち上げる。


「フェイトちゃん!!」


 出遅れてアントニーがライトレットと共に現れると、キドが舌打ちをし、転移魔法で姿をくらましてしまった。


「アイツ……もう狙うなって言ったのに」


「あん? どういうことだ!?」


 アントニーの言葉に、ミコトの鋭い眼光が刺さる。ウッと言葉を詰まらせて、「いや……」と目を逸らすが、ミコトの元々悪い目つきが更に強くなり、アントニーは徐々(じょじょ)におされていく。


「おい!」


 たった一言が、アントニーの精神にずしりとのしかかる。ミコトの契約能力は人の心への攻撃力がとてつもなく強いからである。


 だが、アントニーはそんなことも知りはしない。これ以上何か言われては心が持たないと、アントニーはミコト達に真実を口にした。


(14:謎の少年急襲(後編)了)

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