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8:再戦、夢魔ドリームメーカー(後編)

この話には以下のキャラクターが出てきます。


ドリ

挿絵(By みてみん)


ムクロポート

挿絵(By みてみん)


エルル

挿絵(By みてみん)

「な、何!?」


 フェイトもドリもフェイトの姿だったモノを疑いの目で見る。


「ここまでお前を調教するのに10年もかかったと言うのに、その私を裏切るとは。……だが、もう従わなくなったのならキサマ等は必要無い。その魂ごと、消し去ってやろう」


 フェイトの腕に回復魔法をかけていたドリも、腕に傷を負っているフェイトも一歩下がることしか出来ない。


 ゾンビの見た目をした敵が飛ばす魔法を2人が見つめていると、真上からエルルとムクロポートが現れ、エルルが一時的にバリアを張って攻撃を防いだ。


「何だアイツは。爺さんのゲートボール仲間か?」


「んなわけないでしょう! ってかゲートボールしてないし!!」


「ムクロポートさん! エルルさん! ……2人と夢で会える日が来るなんて」


「この子のおかげですよ」


 エルルがあごで指したのはバリアを出す方と逆の腕に抱える夢喰いバクであった。


「バクに他の夢を見ていた私達の夢の一部を幾度となく食べてもらい、やっとこの夢への通路を見つけて来れました」


 ムクロポートがエルルの腕からバクを奪うと、バクをボールのようにフェイトに投げつけ、辛うじてフェイトが傷を負っていない方の手でバクをキャッチした。小さなバクは突然強引に掴まれ、挙句に投げ飛ばされたせいか、ムクロポートの方を見てブルブルと涙目で震えだした。


「魔獣をボール扱いって……」


 フェイトの困り果てている横顔を見て、ドリは嬉しそうに微笑んでいた。


「爺さん、いいからヤツをぶっ潰すぞ」


「はいはい」


 バリアを消し、エルルが魔法を使用すると、ミコト同様に武器に変身した。ムクロポートに見合ったごつくて大きい剣だが、細かい装飾がある面は、どことなくエルルらしさがある。


 見ただけでも重そうな剣は、1度後ろに振ると、ムクロポートそのものの力強さもあってフェイト達の元へと強烈な風がやって来る。


 駆け出したムクロポートがゾンビに剣を振り落とすと、体に深く切れ目が入るものの、ゾンビの体質ゆえか、すぐに元に戻ってしまう。


「いいえ、そうでもありませんよ」


 エルルがすぐさま元の姿に戻り、一旦攻撃を防ぐためにバリアを張った。バリアをすぐに消すと、「任せて下さい!」と言い、両手を合わせると今度は腕のみを刃に変形させて、相手の腹に刃を刺した。


「同じじゃないか! 出しゃばっていないで早く戻ってこい!!」


 ムクロポートが怒鳴っていたものの、エルルは戻ってくる気配がない。 フェイト達も心配そうにエルルを見ていたが、やがて、「やめろ……やめろ……」と、ゾンビのおぞましい声が聞こえてくる。


「何をした?」


「いわゆる、体内から直接じわじわと体力を削る魔法を使ってみました」


 助けを呼ぶゾンビの声に動じるどころか、腕を元に戻し、もう一度手を合わせてトドメにゾンビに大火を浴びせた。


 燃えつきた後、青色の液体状になってしまったゾンビだったが、やがて液体がうごめきだして合体する,と、毛並みの青い小さな馬へと変わった。


挿絵(By みてみん)


「……バッファロー!!」


「バッファロー?」


 フェイトは思わず聞き返したが、ドリは明らかに牛ではなく、馬を見てバッファローと言っていた。馬もドリを見つけた途端に可愛らしくパカパカと音を立ててドリに駆け寄り、ドリの頬を舐めた。


「あはは、くすぐったいよバッファロー!!」


「その子は?」


「この子は昔からの僕の相棒なんだ。昔はこうして夢の中でよく会っていたんだけど、いつの間にか会えなくなっちゃったと思ったら、あのフェイトっぽい人とよく会うようになって……。でもね、あのフェイトと会う前に、フェイトと前に1度会ってるんだよ? フェイトは分からないかもしれないけれど」


「私が全身着ぐるみだった時?」


「うん!」


 バッファローはドリのお腹の中から、その身を溶け込ませていくと、姿を消してしまった。フェイトが心配そうに見ていると、ドリが微笑む。


「大丈夫、もうバッファローは敵じゃないから」


「……ドリさん。ずっとあなたに会いたかった」


 それまで控えめだったドリの頬の火照りが鼻元や耳下まで一気に広がった。だが、純粋な瞳で言うフェイトを信じて、「僕も」と返した。


 照れ隠しにドリは何か別の話題を出そうと考えていると、ふととある疑問に行き着く。


「僕が初めて君と言う存在を夢で見たのは、10年前だったんだけど……」


「えっ? 私もっと最近だよ」


 フェイトが彼を夢で初めて見たのは数日前からの話。これは明らかな矛盾である。


「それはきっと、それが運命だったからですよ」


 エルルが2人の元へと歩み寄る。ドリとフェイトが声を揃えて、「運命?」と聞いた。


「ええ。フェイトさんがドリのために全力を尽くして守ってくれるのは、時も出来事も関係無く、それがきっと運命だったからです」


「科学者らしくないことを言うじゃないか」


「夢を前にして、科学者らしいことなど言えませんから」


 自分から言い出したものの、ムクロポートは、「そうか」と両腕を組んで興味無さそうに返した。


「それじゃあ、そろそろ皆さんもお待ちかねの頃でしょうから。戻りましょうか」


 エルルの問いに、フェイトとドリは声を揃え、「はい!」と元気よく答えた。エルルが両手を叩くと、意識はパッと現実世界に引き戻された。


「まー、早い方だったか。お疲れ」


「フェイトちゃん。途中手おさえてたけど大丈夫?」


「うん。ドリさんに治してもらったから」


 安心したのか、同じタイミングで笑いをこぼした男性陣3人に、フェイトは改めて3人の温かい一面を見た気がした。


「……ねぇフェイト。これから暇?」


 着ぐるみを完全に地面に置き、素のままの綺麗な目で、ドリはフェイトの目を見つめる。


「暇と言えば暇かな?」


「じゃあ僕と一緒に、ギルドへ来てくれないかな!」


「うん。大丈夫だよ」


 この時、フェイトはドリがフェイトをギルドへ誘った意味が分からなかったが、状況を察した男性陣はそれぞれ呆れたり、悔しんだり、悲しんだり。皆、個性ある反応を見せていた。


(8:再戦、夢魔ドリームメーカー(後編)了)


夢魔ドリームメーカー

挿絵(By みてみん)

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