4:夢魔ドリームメーカー(後編)
━━もう、僕なんて死んじゃえばいいんだ。
その時、夢の少年の言葉が過ぎった。赤い顔を隠していた手をバッと離し、顔を上げる。
「あの夢、何だったんだろう。……あの男の子、どんな子だったんだろうなぁ」
「夢の子がどんな子って。夢の子は夢の子だろ」
「そうかなぁ」
ミコトの言うことも一理あるが、そもそもフェイトはあまり夢を見るタイプでは無く、そして何より少年の寂しそうな姿を、フェイトは放っておけなかった。
「夢、ねぇ。夢って言えば、これがピカイチかな?」
アントニーがギルドリストをめくって指をツンツン指した。
「夢魔、ドリームメーカー……? 何か枕とかでありそうな名前だね」
「夢魔を除いてな」
「詳細は少ないけれど、時々夢を勝手に変な風にしちゃうんだって。夢魔って言われてて名称もこうしてちゃんとあるけれど、姿を見た人はいない。……って言うか、みんな夢にはいっぱい人とか草木とかも出てくるから、どれが正体なのか分からないって」
「へぇ。で、それはどこにいるんだ?」
「載ってない」
アントニーが即答すると、ミコトが大きく舌打ちする。
「意味ねぇだろ!!」
「けれど、夢でしょ? なら夢の中に行けば会えると思うんだよ!!」
人差し指を立て、えへへと笑ってアントニーが提案すると、フェイトも頷いた。
「マジかよ!? じゃあ寝ないと会えないじゃんか!!」
「だから! 公園行って昼寝しよう!!」
「お前なぁ。昼間っから酒浴びる程飲んだオッサンじゃねぇんだから……」
「……駄目?」
フェイトが困り顔を見せると、ミコトは一瞬意地悪そうな顔をして、「やっぱりなぁ……」と焦らして見せたが、フェイトが諦めそうになったのを見て、小さく微笑む。
「ま、俺様達と出会ってからの疲れは一晩の眠りじゃ取れねぇだろうしな。けど、長丁場はゴメンだぜ? さっさと戻って来いよ」
ミコトから許可が下りると、フェイトは満面の笑みで、「うん!!」とうなずいた。
「それじゃあ早速……あ、ドM忘れるとこだった」
「あはは、それじゃあもうひと眠りするね」
フェイト達は、近くの公園へと移動することにした。
「俺様とライトがいた村がハジメだろ? で、コイツがいた森周辺がお前の名前通りイナバで……ったく、当たり前な話だが、世界は広いよな」
セカイ、この世界の地図を広げ、ライトレットがリストと地図を照らし合わせて色分けでマークを付ける。
ミコトとフェイトはその地点をどちらが早く見つけるか競争して指をさし合い、1番年上のアントニーは頬杖をついて微笑ましそうに見つめていた。
「図で見ればこんなに小さいのに、不思議ですよね。魔法を極めている人はこの地図も魔法で浮かびあげたり、最新機械でも地図が出てくる時代ですけど、そもそも地図を作った人はどんな方法で作ったんでしょう?」
「私そんな風に思ったことなかったなぁ」
「お前の出身は?」
「ここ!」
「ウミノイエか。臨海の商業街だな」
「……の、ここ」
フェイトは、地図のウミノイエの文字部分に乗せていた人差し指を少しだけ上に滑らせた。
「お前、俺様達以下じゃん」
「人里離れていたから、ちょっと変わってるんでしょうか? 服装とか」
「2人共、出生地が分かった途端に言いたい放題だね」
「まぁまぁ。俺は10年近く森の中だったし、変わんないよ!」
「それは結構変わる気が……」
フェイトが困惑の表情でアントニーを見上げていると、アントニーはフェイトの頭を撫でてニコニコと笑った。
「よし、とりあえず今日はこれくらいで良いかと! その夢魔? にも会わないといけませんし、フェイトさんそろそろ寝た方が良いのでは?」
「そうだね! それじゃあみんな、おやすみなさい」
普段はあまり昼寝などしないフェイトだったが、長旅で疲れていたのか、それとも、夢魔ドリームメーカーの力に引き寄せられてか。ベンチに横たわると、目をつぶって10分程で、寝息を立てていた。
(4:夢魔ドリームメーカー(後編)了)




