レベル18 交渉成立からの利害関係爆誕
「で? どうするつもりさ」
「う~~~~~~…ん…」
「ほんっと昔っから頼まれごとに弱いよね」
「でもまぁ、ホラ、なぁ?」
「語彙力が欠落してるよ」
「取り込み中悪いけど、しばらくはヒイラギにはこの国に居てもらうからね。」
にっこにこと上機嫌なロワは呻き声を上げているヒイラギとその横で呆れたようにため息を吐いているヴァニタスを逃がすまいと追い打ちをかけて行く。
「ヒイラギって思ったより有能だね。
あの異次元の連中をあっさりと丸め込んじゃうなんて。」
ヒイラギはあの後、ロワに引きずられて客間に強制的に連れていかれたわけだが。
ヴァニタスも途中までついては行ったが、ロワの「二人だとややこしいから外で待っててくんない?」と言う言葉で何かを悟ったらしく客間に入ることは無かった。
ここまで来てヒイラギも大きな抵抗をしていないならもういっかとどこか諦めた瞬間なのだろう。
わけのわからないままヒイラギはロワの客に会ったわけだが、立ったまま意識飛ばしてえなと思うくらいにはうざかったそうな。
「貴族と思えない支離滅裂な発言に後先考えず現在の自分の利益…じゃねえな私利私欲のみで発言するあたり救いようがねえわ」
とあのヒイラギに言わせるほどの酷い出来上がりだったそうで。
ロワはロワで、ならもうサクッと殺っちゃおうぜと言うおかしなテンションに入っており貴族を相手にするよりもヒイラギの体力と精神力を削ったのはロワなのだが…。
結局、話にならず下手げに手を出せば面倒な事になると言う事で、ヒイラギの交渉術が火を噴いたわけであり。
貴族たるものが旦那のいる女性をそう誘うのは非常識で、品格を疑われる。国の一角を占める貴族がそんな調子ならば国の品を他国に疑われ不利な状態になる。
この様なことが続くのであれば、それ相応の対処をするので行動を改める様に等々…若干脅しに似た様な言葉を緩衝材に包み込みうま~~~くやりのけたのだ。
それに、疲れているヒイラギはとっとと話を終わらせるために威圧するような雰囲気を纏って交渉話をしていた。
モンスターであるヒイラギは顔もちょっと怖めの配置になっているため、モンスター耐性の無い貴族はすぐに大人しくなったとかなんとか…。
「ウチの国にはヒイラギみたいな人材が必要不可欠だね。いや本当に。
金なら好きなだけあげるしさっき言ってた奇跡の花?だっけ?も好きにしていいからしばらくこの国にいてくれると俺的にとても助かるんだけど」
「奇跡の花を貸してくれるのか!?」
「すごい食いつきと態度の豹変に正直ちょっと怖いって思ったよ、俺」
「後からやっぱなしとかねえよな? 奇跡の花を調べさせてくれんの? その代わりに貴族連中適当にあしらえばいい? それだけでオレの好奇心の元を預けてくれんのか!?」
「保護者さん、これはどういうこと? 俺こういうノリ嫌いじゃないけど相手にするのは嫌なんだけど」
態度がころっと変わり、きらっきらとした瞳でロワに詰め寄るヒイラギ。
ロワの方も態度がころっと変わり、げっそりしたようにヴァニタスを見る。
ヴァニタスは涼しい顔…と言うかどこか遠くを見つめている瞳でフッと笑って何も言わなかった。
その姿に哀愁が漂っていたのはここだけの話であり…。
「じゃ、交渉成立ってことでいいのかな?」
「あー、待った。
金は別にいいけど、休日とか貴族相手にしなくていい時どこまで自由にしていいかだけは教えてくれ」
「そんなこと?
俺の邪魔さえしなければ何しててもいいよ。
別に国を出てもいいし。次の日にちゃんと戻って来るならだけど。そうだね、あとは俺が呼んだらすぐ来ること、かな」
「それは構わねえけど俺は具体的に何するんだ?」
「貴族の相手。あとは国の運営の相談に乗ってくれればいい。」
「わかった。
じゃ、こっちからも一つ条件をいいか?」
「いいけど」
とんとん拍子で何やら話が決まっていく。
ヴァニタスはげっそりと、しかし諦めたように苦笑してその様子を見守っている。面白くはなさそうな顔だが。
「先生には一切手出ししない事、干渉しないこと、貴族には合わせない事、は約束してほしいんだけど」
「そんなこと?
俺が欲している人材はヒイラギであってお前の保護者じゃない。
そもそも、お前の保護者はお前に何かあれば必ずついてくるし、お前が必要な時に使ってくれるんでしょ?
信用しきったわけじゃないけど、そこらの度合いはお前らに一任してあるしそこだけは信じてるから大丈夫。」
「オレより先生のが国系の話には強いんだけどなぁ…」
「強くても、協力する意思が感じられないし、協力するにしてもヒイラギが協力するのがまず前提になってきそうだからね。」
「あ~~~…」
ヒイラギがちらりとヴァニタスを見れば、ヴァニタスはにっこり笑い、
「ヒイラギの望む未来を俺は用意してあげるよ」
等と口説き文句染みた台詞をまた吐いている。
「だそうだけど」
「うん。相変わらずな先生だな」
「ドライだね」
「いやだって。オレの望む未来には先生さえいれば実現されるから用意してあげるよ言われても先生そのものが必要だから答えるにも答えられないじゃんか」
「シラフでそれ言えるのすごいよね、ヒイラギ」
「そうか?」
あはは、と笑うヒイラギにため息を吐くロワ。ヒイラギの横ではヒイラギの言葉を聞いて動きがぴしりと止まったヴァニタスがおり…。
と、まあ色々あったがロワとヒイラギは交渉を成立させ利害関係を築いたのであった…。
◇◇◇
視点は変わり、国を出て呑気に旅をしているギムレット一行。
呑気とは言いながらも、現在ギムレット一行は見事にばらばらになっている。
原因はと言うと、罠である。
ありきたりなチームをバラバラにしてしまう罠。そうと解っていて意気揚々と罠にかかりに行ったのはギムレットで、それに巻き込まれたのがカトレアたちである。
ギムレット曰く「レベルが0の時一人でも対処できるように訓練しとかないと何かと不自由だろ」と言う脳筋ならではの発想であり。
ちなみに言った本人がその時レベル0だったのでもう救いようがない。
と、まあ、一番勇者っぽい事をしていたはずのギムレット一行は今現在一番使い物にならない状態になっているのである。
◇◇◇
視点は戻りヴァルム王国。
ヒイラギはロワから尚書官(仮)と言う地位を貰ったが、今ひとつ実感がない&気ままな性格の為ロワに呼ばれたりしない限りは奇跡の花と睨めっこをしているか、好き勝手に国の中をふらふら歩いてはもめ事を片付けとしていた。
ヴァニタスも最初はそれを大人しく追いかけていたが、すぐに悲鳴を上げた。
「ねえヒイラギ!?」
「おう」
「せっかくなんだからさ? もめ事とかじゃなくて俺とデートしようよ。ね!? ね?!」
「それもいいけどよ、奇跡の花の生態は未知数でわくわくするよなぁ!」
楽し気に笑うヒイラギは城下町をふらふらと行き抜きの散歩中である。
ヴァニタスはそんなヒイラギの返答に顔を覆ってその場に撃沈した。
ヒイラギは気にした様子もなく、ヴァニタスをほっぽって散歩を続けている。
ヒイラギがそうしている時、これまた何の因縁かギルドチームがこの国に入国したのであった。
「先生、いつまでそうしてんだよ」
「ヒイラギが俺の話を聞くまでかな…」
「めんどくさ…」
「そゆこといっちゃう!?」
おそろしいほどに
更新をしていなかったという現実に震えており…
またちまちま更新していけたらなと思っております。