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レベル17 王様生活は面倒事がいっぱいの様です

「ああ、そうだ。戻ったら俺はちょっとだけやることがあるから待っててね」

「おう」


 城に戻り、客間らしき場所にヒイラギ達を押し込んだロワは思い出したようにそんな事を言った。

 時間的にはロワがこの城を飛び出して一時間経った程度。そう。ルーチェに頼んでいた仕事が完了している頃合いなのである!


 ヒイラギが客間を興味深げに見渡しているのを確認し、ロワはヴァニタスにこそっと


「絶対ヒイラギをこの部屋から出さないでね。頼んだよ保護者さん」

「ちょっとちょっと。保護者は語弊があるよ。」

「何でもいいけど、使用人共の気配的に俺が不在の時に公爵が来ているっぽいんだよ。」

「それってどっちの公爵?」

「おそらくduke」

「これはまた面倒なのが」


 ヒイラギに聞こえないようにごちるロワ。

 公爵(duke)は王にも匹敵する爵位のトップ! 大貴族である! もう一つの公爵(prince)はduke程脅威ではないのだが、面倒なdukeが来てしまっている様である。

 とは言え、ロワの開いた政治だの軍だのは今までのものとは一変しており、魔法を極力使わないものにシフトしている。ので、現在は言う程力を持たないのだが今までが今までだった為少々勘違いをしている大貴族なのだ。


 ロワもそれを理解しているのか、下手げに刺激をして敵対されるのが嫌なのだ。敵対=殺すと言う思考を持っているロワは極力国民を殺さないように自分から問題を起こすのを控えるようになっている。


「向こうはこっちど同等の場所にいるとか勘違い(笑)してるから本当に面倒なんだよね。

 しかも王が変わったのはやむなくとか思ってるらしくて、自分の方が有利な場所に立っているとか思ってやがる。おまけにあそこの息子はレイナがいたく気に入ったのか見つけるたびに口説こうとするから隙みて殺すつもり。娘もいて俺に言い寄って来る始末だからもうどうしようもないかな。嫁持ち旦那持ちに媚びる辺り頭は残念らしいし…」

「現実突きつけてもとことん話を聞かないタイプってやつやな。」


 ロワのイライラとした愚痴に呆れたようにため息を吐くヴァニタス。どうやら相当ロワは嫌っているらしく、なかなか客間から出て行こうとはしない。


「その大貴族さんって結構面倒だけど、現実を飲み込んだら従順になる系じゃね?

 オレにも覚えがあんぜ。オレが国王になりたてのころ似た様な貴族にうざいほど絡まれてさ、その時は仲間の一人が笑顔でブチギレてよ、騒動巻き起こしてこちらの確かな実力示したんだよな。そうしたらことんと大人しくなっちゃって。

 あ、でもそれでも噛みついてくるやつはちらほらいたな。先生がなんか言ったら大人しくなったけど」


 ヒイラギに聞こえないように話していたはずだが、ばっちり聞いていたらしいヒイラギがいきなり話題に入って来る。

 ロワは一瞬やっちまったとばかりに顔をしかめたが、ヒイラギの話を聞いている中で徐々に明るい表情になって来る。


「成程ね。じゃあ誰か一人を血祭りにあげれば…ってだめだよ。恐怖政治はレイナに怒られる」

「対処は後々考えるとして、さっさと行った方がいいんじゃねえの? そう言う連中って待たせれば待たせた倍嫌味言って来るだろ?」


 ヒイラギの一言でやばっとロワは部屋を飛び出していく。

ヒイラギはがんばれーとひらひら手を振っており、対岸の火事と言う様な表情をしている。


「首突っ込まなかっただけ偉いね、ヒイラギ」

「子供扱いすんなって。そもそも首の突っ込み様がねえだろ。ここはオレの国でもなければ先生の国でもない。ロワの兄ちゃんの国だしよ。

 それに、オレはしばらく冒険者ライフ楽しむ予定だからそう言った権力者関係には関わりたくねえ」

「権力者のロワと知り合いってだけでもう関わっているだろうけどね」


 ヴァニタスの呆れた様な言葉に、ヒイラギは「まだセーフだろ」と呑気に笑う。


◇◇◇


 ロワが出て行ってから随分と時間が経ち、そろそろヒイラギが大人しくしていられなくなった頃。


「ヒイラギって王様だったことあるんでしょ?」

「おう。お帰り。いきなりどうした」


 勢いよく扉が開き、イライラカンストと言った顔のロワが戻って来たのである!

 ヴァニタスは何かを察したらしくご愁傷様と言う様な視線をロワに送っている。


「頭の足らない勘違い野郎貴族の追い払い方教えてくれない?」


 扉を壊す勢いで閉め、ヒイラギに詰め寄るロワ。


「さっき実力差でどうこうって言った気がするんだが」

「それが実現不可能な場合は?」

「ええ…。スルー?」

「それもできない場合は?」

「ロワの兄ちゃん一体何があったんだよ」


 イライラカンストと言う表情をしている癖に嫌に真顔なロワに少々驚きながらヒイラギは苦笑する。


「あの低能共、こっちが下手に出てやればつけ上がりやがる。

遠回しに王座を渡せみたいなことを言い出すからそろそろ殺そうかなって」

「あー…。

あーーーーーー…。」


 ロワのイライラとした言葉を聞いて、何やら思い当たる節があるらしいヒイラギは一度天井を見上げ、次に床を見下ろす。


「あの低能野郎、レイナにちょっかいかけに城内うろつくし、放っておけばきっとレイナに触り始める勢いなんだよね。

 もう殺していいよね?」

「……………王の立場がないのならぶちのめしているところだけど、王の立場があるとなるともっと穏便に…」

「無理。」

「……どうしようか先生」


 ロワの表情がぴくりとも動かないのを見て何を言っても無駄だと察したらしいヒイラギはヘルプと言う様にヴァニタスを振り返る。


「あれぇ? いつぞや似たような事になった時、ヒイラギってば王様やってたのに思いっきり相手の事ぶちのめしてなかったぁ?」


 振り返られたヴァニタスはハハハといい笑顔でそんな事を言う。

 ヒイラギが「ばっっっか!!」と叫ぶのと同じタイミングで


「ヒイラギがぶちのめしたなら俺もぶちのめしていいと思う。殺してくる」


 満面の笑みを浮かべたロワが腕まくりをして部屋を出て行こうとする。


「待て待て待てロワの兄ちゃんちょっと待ってくれ!!」


 そんなロワを慌てて引き止めるヒイラギ。何さと振り返るロワに、ヒイラギは言い訳をするようにわたわたと焦り出す。


「あのな? こっちの場合はどっちも独身だし、決まった相手もいなかったワケ。だから、ホラ、相手さんだってロワの兄ちゃんが相手するほど非常識野郎じゃなかったんだよ。

 ただちょーっとばかし非常識だっただけで!?」

「ヒイラギ、落ち着いた方がいいよ。めちゃくちゃなこと言ってる。

それだとお前がおかしいみたく聞こえるよ」


 若干斜め上の発言をかましたヒイラギにヴァニタスが冷静に横槍を入れる。


「結論から言うと?

ヒイラギが相手にしたやつは一体何をやらかしたわけ?」

「オレが相手にした奴はオレ相手に色々垂れ流したんじゃなくて、先生に対して色々やったっつーか?」

「つまりね、ヒイラギよりも色々知識があって力もある俺が変に口説かれたの。

口説いて来た奴はどうやら本当の権力者は俺だと勘違いしていたみたくてね? 最初はにこにこ笑って流していたヒイラギだけど、長い間そんな事が続いてその間はその非常識女が俺にべったりでヒイラギと俺がちゃんと一対一で話す時間がなくなってしまってさ。

 それで限界が来たヒイラギが職権乱用でその女の貴族地位を剥奪したと言うか」

「ぶちのめすって物理的に殴るとかじゃないのかよ。つまらないね」


 ヴァニタスの簡単な説明に、ロワは期待外れだと肩を落とす。


「職権乱用してもいいけど、相手が相手で色々面倒なんだよなぁ。逆恨みされるのも面倒だしやっぱり事故と見せかけてサクッと殺すか…」


 そしてやはり殺すと言う思考に走ったらしいロワ。

 ヒイラギはしばらく自分の黒歴史を晒されたことによりその場に撃沈していたが、復活したらしくパッと立ち上がる。


「なあ、この国に法律はあるのか?」

「法律? それなりにはあるけど」

「法で裁けたりしねぇの?」

「俺そう言った法律関係くそめんどくさくて嫌いなんだよね。

マフィアに法律もクソもないでしょ」


 少しはあるんじゃねぇの? とヒイラギが困惑するがロワはいいのいいのと疲れたようにため息を吐く。


「…あ、そうだ。

 ヒイラギなら丸め込めたりする?」

「は?」

「ちょっと。ヒイラギの事変に使おうとしないでくれない?」


 思考が180度回転したのか、ロワがぱっとヒイラギを見る。

 ぽかんとするヒイラギと舌打ちをするヴァニタス。


「俺もう疲れちゃってさ。異次元の連中と会話ってすごい疲れるじゃん?

だからさ、元々王様なヒイラギの経験を生かしてちょいちょいと解決してくれない?」

「いやいやいやいや、オレは一般市民だからさ。こう言った国の問題に一般市民風情が首を突っ込むのは場違いって言うか間違いって言うかお門違いって言うか」

「お門違いが一番正しいと思うよ。俺は」

「そうか。じゃあお門違いだから他を当たった方がいいぜ?」

「俺はもう殺すしか選択肢が無いんだよ」

「もっと頑張れよ」

「無理」


 あのロワが死んだ目をしている、とヒイラギが引きつり笑いを浮かべる。


「あのさ、今はキミが王なんでしょ? 好きでなった王なわけでしょ? なら自己責任で自分で解決したらどう?」


 そこで話しに横槍を入れるヴァニタス。ロワはそんなヴァニタスを睨み、


「できないからこうやって経験者に頼んでいるんだけど?」

「本音は?」

「あんな低能共相手にする時間があるならレイナとデートしたいんだよ」

「それでヒイラギに丸投げしようと? 殺されたいの?」


 徐々に険悪になっていく二人をぽかんと眺めるヒイラギ。

 そこで部屋にシルバーのノヴァビスが入ってきた。


『おーさまー! そろそろ戻らないとですよー! お客様がイライラなさってますー!』


 場違いにもきゃぴきゃぴとした声が響き渡る。

 ロワはそれはそれは深いため息を吐き、わかったと答える。


「今行くよ。

じゃあ、ちょっとヒイラギ借りるから」

「はぁっ!?」

「ちょっと待ってくれよー。オレは一般市民なんだけどー」


 ヴァニタスの隙を見てヒイラギの手首を掴んで部屋を出て行くロワ。ヴァニタスはいい加減にしろと慌てて追いかける。


「一般市民と言えど勇者でしょ? 人助けしてくんない?」

「ロワの兄ちゃんも勇者じゃんか」

「まだ黙らないなら地位をあげるよ。

今から少しの間、ヒイラギはこの国の尚書官ね」

「!?」

「何を勝手に話を進めてるワケ? 殺すよ?」


 ぎゃんぎゃんと揉めている三人の後を不思議そうに追いかけるノヴァビス。

 この三人とすれ違ったメイドたちは後にこう語った。「何か面倒なことが起きる気がした」と。

メリークリスマスよいお年をあけましておめでとうございます七草粥はおいしいですね卵粥派(一息)


色々忙しくてめちゃくちゃ期間が空いてしまった…。

ロワさんは基本的に殺戮解決。ヒイラギさんは基本的に平和的解決。ヴァニタスさんは基本的にヒイラギが面倒事に巻き込まれる前に原因の息の根止めよう解決思考。

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