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【BL】彼氏なんてありえない  作者: ありま氷炎
クリスマスの夜
4/10

「灘。お前明日休むの?」


 翌日、帰り支度をしていると同僚のモテ男がニヤニヤしながら近づいてきた。


 モテ男こと、町多まちだたかしはそれはそれはいい男だ。しかも自分の魅力を自覚しているから、モテ方を知っている。だから、合コンには呼びたくない野郎。俺達普通のシングルズは影で合コンの疫病神と奴を呼んでいる。

 そんな疫病神、誘いたくない。だけど女子から要望があれば、誘うしかないので、誘ってみると全員もって行かれるというお粗末な結末を迎えていた。


 そういや、合コン開かなくなって結構経つな。

 だから、こいつは俺が振られたことを知らないはずだ。俺は振られると合コンを企画して、彼女を見つけようとする。だから、俺が合コン企画すると奴が「また振られたの?灘」と軽口を打ってくる。


「ああ、彼女が俺と過ごしたいって言うからね」


 俺はモテ男に意地をはり、そう答えた。すると町田はふうんとそのたれ目を細めて笑った。

 うわ、ばれてる?

 いや、そんなことないはずだ。

 でも男だけのクリスマスパーティーなのに休みを取ったってばれると、もっと恥ずかしいから、これ以上余計なことは話さないぞ。


「じゃ、俺は先に帰るな。明日急ぎの用があったらメールでくれ。電話はしないようにな」


 男だけで騒いでるときに電話があったら最悪だ。

 俺は町田に釘を刺すと逃げるように事務所を出た。


 

 アパートの部屋の前にきて、ドアを開ける。中は真っ暗。俺は急いで中に入ると電気をつける。その明るさにほっとしたが、しんと静まりかえった空間で胸がきゅっと苦しくなった。

 俺は慌ててテレビをつける。

 音が聞こえてきて、ほっとして着替えるためにベッドルームに入った。


 音が聞こえるようにドアを完全には閉めないようにして、コートを脱ぐ。ひやりと寒さを感じて、俺はエアコンを入れた。そして部屋全体が少し暖かくなってから、着替えた。

 

 電気の無駄使い。実田勇によく言われたっけ。俺は電気とかいろんなものをつけっぱなっしにする。便利がいいのはもちろんだけど、一番は孤独を感じないようにするためだ。


 俺は一人になるのが嫌いだ

 その理由はわかってる。小さいときに両親が事故で死んで、俺は父方のばあちゃんの家に預けられた。ばあちゃんは資産家で嫌な性格をしてたが、血のつながった俺を追い出すことはしなかった。

 俺は小さいときから、たくさんの物に囲まれ他人と暮らしていた。ばあちゃんとは食事のときに顔を会わせたけど、遊んでもらった記憶はない。

 面倒を見てくれて遊び相手にもなってくれたのは、ばあちゃんが雇った家政婦のえみこさんだ。

 えみこさんは俺にいろんなことを教えてくれた。でも俺が中学生のときに結婚するとかでいなくなったけど……。

 適当な大学に入って、一人暮らしをし始めたら、ばあちゃんが死んだ。遺産は俺のもので、俺はあの家を相続するのが嫌だったから、近くに住む親戚に譲ってやった。そのほか土地とか、とりあえず相続したけど、面倒だから弁護士にやってもらった。

 その土地管理とかも、みんな人任せ。

 月々の手数料とかサービス料を土地やアパートの賃貸料から引いてもらい、その差額を俺の口座にいれてもらってる。今住んでるこのアパートもその一つだ。

 ばあちゃんが信頼してた弁護士、俺は他に知らなかったから同じ弁護士に頼んでいる。人は悪くなさそうな奴だ。でもあのばあちゃんの弁護士だ。だから、俺は自分で稼ぐようにしてる。弁護士がちょろまかしても生きていけるように。


 そんなわけで、俺の金銭感覚は人とちょっと違うらしい。もちろん、あほみたいに浪費はしないが、勇にはよく無駄使いと嫌味を言われる。


 そういや、忠史はそんな嫌味いったことないな。あ、それは後輩だからか。同い年だったら言われてるかもな。


 ふいに彼の顔が脳裏に浮かんで、心がふわっと暖かくなった。

 そういや、あいつ3時に来るっていってたな。それまでには家の掃除とか、下ごしらえとか終わらせとこう。


 明日のことを思い、さびしいと気持ちがかなりなくなっていた。テレビを見るとまたくだらない芸能人が意味もなく笑うシーンがアップになっていた。それに加えてカラフルな文字が画面で踊っている。


 わかりやすい笑いか。

 でも老人とかついていけないよな。

 あと外人とかにも受けなさそう。


 そんなことを思っていると、コマーシャルに入る。にぎやかなクリスマスソングが流れてきて、サンタクロースが現れた。

 そういや、今日イブだもんな。映画でもあるかな。


 今日の新聞を探し出し、番組欄を見ると9時から始まるクリスマス映画があることをわかった。俺は温かいホットココアをつくるとソファにひざを立てすわりチャンネルを変えた。

 ライオンががおーと吼え、映画が始まる。

 何度も見たことがあるクリスマス映画だ。

 でも何度見てもいい映画だった。


その夜、俺は一人だった。でも明日のことを考えてどうにか寝ることができた。



ジリリリーン。


けたたましいベルの音がして、俺はベッドから這い上がる。そして目覚まし時計を止めた。


目を擦りながら時間を確認し、短い針が10時を指していて、俺の心臓が飛び上がる。


遅刻だ!


急いで部屋を出ようとしてから俺はほっと胸をなでおろす。


今日は休み取ってたんだ。だから10時に目覚まし時計をセットしてたんだ。

俺は苦笑すると洗面所に向かう。


レースのカーテンから日差しが入り、部屋の中は明るい。

外から車の音や、洗濯機の回る音、人の声が聞こえてくる。

防音があまり聞いてないこのアパートは人によっては嫌われるタイプだ。でも俺は音があるこの場所を気に入ってる。


シャカシャカと歯磨きをしながら、頭の中で何から始めようか計画をねる。

まずは飯かな、それから掃除。そして下ごしらえだ!


シンプルな計画を練り、洗面所を飛び出す。

今日は楽しくなりそうだと、心はうきうきだった。



すべてが計画通り進み、下ごしらえを終わらせたのは2時だった。


あいつ来るの3時だっけ、

あと1時間、どうしようか。

あげるとかいためるとかは、終わりのほうでしたかった。

どうせ後で料理は冷めるけど、少しでも温かいままパーティーを始めたい。


うーん。

どうしようか。


することが浮かばす俺はソファに座り込む。

そしてリモコンでチャンネルを変えていると、ピンポーンとインターフォンがなる音がして、俺は玄関まで走った。


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