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宇宙をかけた戦士の戦い  作者: イシハラブルー
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第七話 星屑を束ねて一等星


 〈三日後、シャドウが宣言した日〉


 ーー午前八時ーー


「まだ何もないね..」


「....」


 この日、二人は日付が変わってから警戒を続けていた。テレビ、ラジオ、SNSとありとあらゆる情報網を駆使し異変を探知しているが今のところそれらしき情報は入ってこない。


「ほんとに今日なんかすんの?? アイツ」


 星奈はまだシャドウの言葉を信じていない。あんな得体の知れない奴の言葉を信じられないのも無理はない。


「間違いなく...アイツは何か仕掛けてくる」


 ライトはそう断言して、ただその時が来るのを腕を組み、壁にもたれかかりながらじっと待っている。


 ーー午前九時ーー


 その時は突然来た!! ガラスの割れる音が響いたかと思うと床には一本の矢が刺さった。そしてその矢には見知らぬ物体が付いていた。

 

「なにコレ...」


「ホログラム投影機?!」


 その物体にライトが手を触れるとホログラムを投影し始めた。差出人はもちろんシャドウである。


「待たせたなライト 今から信号弾を打ち上げる、答えはそこで見せてやる じゃあな」


 ホログラムが消えると同時に西の方で赤煙が打ち上げられた。どうやらあそこにシャドウはいるらしい。


「よし...行ってくる」


「いってらっしゃい、帰ってきてね!!」


 星奈の頼みに言葉こそ返さなかったが力強い目配せと微笑みを返した。そのままライトはドアを飛び出していった。



 ーー九時二十分ーー


「やっと来たか..ライトォ」


 シャドウは人気のない路地裏にいた。表情はいつも通りの微笑だ。だが、隻眼となっている右目には狂喜が宿っている。


「何をするつもりだシャドウ!!」


「フフフ..いいだろう、教えてやる!!」


 すると、シャドウの背後に六つの青黒い球が浮かび上がった。そして、右手にはドス黒い球が握られていた。


「この黒い球はな、コネクターだ 分かりやすく言うなら生ける接着剤さ」


 そのドス黒い球が割れると中から粘ついたスライムのような物体が地面に広がった。生ける接着剤という言葉が示すように意思を持つかのごとく動いていた。


「生ける接着剤?? ...まさかッ!!」


「やっと気づいたか」


 ようやくライトもシャドウの目論みに気づいた、そして自身が犯していた重大なミスにも。


「じゃあその球はッ!!」


「そうだ、お前がこの星で倒した魔獣達の残骸だ...元々アイツらがお前に勝てるとは思っていない... だが、その力を合わせれば...どうなるかな」


 不敵な笑みを浮かべるシャドウの背後で六つの球はドス黒いスライムに呑み込まれていく。すると徐々にスライムは形を変えていく。


「クラスター、エッディス、スピクタス、デーマンダー、バルフレア、そしてタイタン...今ここにッ 最強の魔獣が誕生するんだッ」


 ライトに倒された魔獣の力が今一つとなった!!


「行けえぇぇぇ 超合成魔獣、セイラーキマイラ!!!!」


「グギィシャアオオォォォォォ」


 おぞましい咆哮と共に魔獣がその姿を露わとする。タイタンの強靭な肉体を素体としそれをバルフレアの皮膚が覆い、クラスターのハサミ、エッディスの羽、デーマンダーの尻尾を持ち、体の各部からスピクタスの爆棘(ばくきょく)を生やしている。


「さぁ、お前の力で倒せるかな??」


「倒して見せるさ!!!!」


 ライトはクリスタルから自身が持つ剣、〈光剣フォトロン〉を取り出した。


「ここは狭いなぁ...もっと広い所に行け」


 命令を受け合成魔獣はその巨体で飛び上がった。ライトはそれを阻止すべく合成魔獣に接近しようとするが...


 ーーヒュオッ ヒュオッ ドドンッッーー


 爆棘(ばくきょく)に阻まれ逃走を許してしまい、合成魔獣はそのまま大通りの方へ進撃する。太陽を背にして飛ぶその姿はとてもこの世のものとは思えない光景だ。その光景に目にした人々によって怒号と悲鳴が響き渡り、大通りは逃げ惑う人々でパニック状態となった。そんな中をライトは一人、反対方向へ走って行く。


「グガガガッッ...」


 ーーギュオオォォォォン...ーー


 ーーズドオオオォォォォォォォォーー


 口から吐く爆熱線〈コロナストライク〉で町を薙ぎ払う合成魔獣、炎を扱う魔獣が四体も組み込まれているだけあってその威力は絶大だ。そして合成魔獣の攻撃によってあちこちで爆発が起き、地獄のような光景が繰り広げられていた。今までの魔獣とは桁違いの破壊力によって全ては壊され、奪われようとしている。


「やめろォォォォ!!」


 その声とともに放ったブレードショットが直撃し、合成魔獣は地に降り立った。着地の衝撃で地響きが起き、瓦礫(がれき)の山が飛び散った。交差点を挟んで両者は相対した。


「...行くぞ」


 合成魔獣に向けライトは走り出した。それを迎撃すべく合成魔獣は爆熱線を放った。


 ーーガッッ ズドォォン ドォンッ ドォォンーー


 ライトは爆熱線を剣でガードしようと試みたがその威力に吹っ飛ばされ、さらに着地地点に向け放たれた追撃の爆熱線が直撃した。


「グゥッッ...ッアグッッ....」


 苦悶(くもん)の声を上げるライトに合成魔獣がその巨体を揺らし、地響きを立てながら迫り来る。


「ッ!! ブレード..ショットォォ!!」


 光の刃を飛ばして迎撃するも合成魔獣は両腕のハサミで刃を切り落とし迫り来る。


「クッ...デェェリャァ」


 ーーガギィッ ガンッ ガッッーー


 剣を振り下ろすもハサミでガードされ弾かれ、ならばと脚を狙うもそれも素早くハサミで防がれ、弾かれた反動で勢いをつけた回転斬りもハサミで掴まれてしまった。そのままパワーでライトを引き寄せると生えている爆棘(ばくきょく)を直接ライトに突き刺した。


 ーーズボッッ..ドンッ  バヂィィィーー


 なんとか爆発する前に引き抜き投げ捨て、掴まれた剣もエネルギーを込めて無理やり引き抜くと、前宙で後ろに回り込んだ。


 ーーガキッ ガキッ ガギィィンーー


 だが後ろからの攻撃は尻尾の大剣がガードする。さらに爆棘(ばくきょく)も飛ばして激しく攻め立てる。遠距離は爆熱線、中距離は爆棘(ばくきょく)、近距離はハサミと尻尾と前後共に攻防に隙がなくライトは全くダメージを与えらない。


「クソッ まだだッ!!」


 ライトは諦めずに果敢にも立ち向かう。剣を水平に振りハサミを弾くことで胴体との関節部分を露わにさせようと試みるも逆にライトの方がパワー負けして剣を弾かれ、腹をハサミで殴られ吹っ飛んだ。


 ーーギュオォォォォ...ズドォォォンーー


「グァァァァッッ アガッ アッ..」


 ガードすら出来ず爆熱線の追撃を受け、ライトは(もだ)え苦しむ。手が震え、剣もうまく握れず、立つこともままならない。それでも容赦ない合成魔獣の攻撃をなんとかギリギリでかわす。


「こうなりゃ...一か八か...」


 ライトは剣にエネルギーを収束させると合成魔獣に突っ込む。大技“スラストフォトロン”に望みをかけたのだが....


 ーーバヂバヂバヂバヂィ バヂィィィィンッーー


 この大技ですらハサミを突き破ることはできず、放出したエネルギーでライト自身が吹き飛ばされた。一方、合成魔獣は全くの無傷で、反撃の爆熱線を構えていた。


 ーーギュオォォォォ...ドォォォンーー


 ライトは身を投げ出して辛うじて回避するが爆風は防ぐことができなかった。またその威力に着弾地点はドロドロに溶かされていた。


「な..なんて...い..威力なんだ......あれ?? 待てよ..」


 その爆熱線の威力を見て、懐に手を当てながらライトはあることを思った。


「た..確かアイツを構成してるのは....だとしたら」


 ライトは一つの可能性に気がついた、セイラーキマイラの致命的な弱点に。


「あくまで可能性だが...この方法なら.... ダメだった時は..もう.....やるしかねぇ......」


 懐から翼のクリスタルを取り出し、それを装着する。


「さぁ...反撃だ!!」


 一縷(いちる)の望みに賭け、ライトの反撃が今始まる!!!!


 ライトは空へ飛び立った、それを追って合成魔獣も飛び立つ。巨体にもかかわらず飛行速度はライトとほとんど変わらない上に攻撃手段も豊富と空中戦でもライトは依然不利のままだ。


 ーーヒュオッ ヒュオッ ヒュンッ.......ーー


「当たってたまるかッ!!」


 翼を折り畳み一発目の爆棘(ばくきょく)をかわす、そのまま急降下して二本目、三本目とかわし、先読みして放たれた棘を急上昇でかわす。襲い来る無数の棘を猛スピードで旋回しながら上昇して振り切ろうとするが振り切れない!!


「まだだッ!!」


 剣で棘を弾き返し、追尾の棘を巻き込んだ大爆発を発生させる。さらにお返しと言わんばかりに光の刃を飛ばして合成魔獣を牽制する。両者共に一歩も引かない。


「グギィィィジャァァァ」


 痺れを切らした合成魔獣は爆熱線を放つがそれを辛くも回避する。雲は爆熱線に切り裂かれ、太陽の光に両者は照らされる。そしてその時を待っていたライトは翼を畳み太陽を背に急接近し、合成魔獣に組み付き羽を斬り落とした!! 絡み合いながら両者は落下していく、そして....


 ーーザッッボォォォォンンッッーー


 両者共にとある公園の池に落下した。


「どうだ?!」


 ライトは池の中に落ちたセイラーキマイラを確認する、合成魔獣は無様に水の中でもがき続ける。その様子を確認してライトは勝利を確信した。それは予想通りの展開だった。熱線は炎を扱う魔獣の力が集まった結果強化されていた、それと同様に水を苦手とする魔獣、スピクタスとバルフレアの力が合わさった結果、水耐性が元となった魔獣達よりも弱体化していた。


「これで..トドメッ..」 


 ーースパッッ... ドボォォォムッッーー


 放たれた光の刃によって真っ二つに切断され、合成魔獣は爆発し、ついに倒された。


「プハァッッ ハァハァ やった..」


 なんとか辛うじてギリギリのところで勝利したライトは池から()い上がった。戦いは終わったしかし...


「お前...勝ったのか...」


 すでにシャドウが待ち構えていた。その表情はいつもの微笑ではなかった。


「残念だったな..オレが..勝って」


 ボロボロのライトはいつものお返しとばかりにシャドウを皮肉った、つもりだったがシャドウが不満な点は違った。


「別に負けるのは想定内なんだよ、ただ負け方が気にいらねぇんだよ..あの雑魚共!!!!」


 自分の思う通りに事を運べなかった魔獣に悪態をつくシャドウ、その顔は怒りと憎悪に歪んでいた。


「...ボクはしばらくこの星を離れる..だが、今度会う時は、お前の思い通りにさせはしない!!」


 それだけ吐き捨てるとシャドウは姿を消し、ライトは一人その場に残された。



 とあるアパートの一室のドアをノックする、するとそのドアは勢いよく開いた。


「ただいま..」


「おかえりぃぃ、ライト!!」


 無事に星奈との約束を果たしライトは帰ってきた、そしてこれからしばらくの間は魔獣の危機も去り、束の間の平和が流れる、と思っていたのだが...





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