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宇宙をかけた戦士の戦い  作者: イシハラブルー
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第二話 不可避の刃



 魔獣の事件から一週間が経ったが世間の話題は未だにそのことで持ちきりだった。突如として現れた謎の生命体が人々に与えた衝撃は大きかった。しかし、人間はたくましいもので、魔獣による被害を受けた地域の復旧へ向けた動きはすでに始まっていた。とはいえ、こんなにも早く動きが始まったのは被害を抑えるため戦った戦士がいたからである....





「う〜〜ん!! しあわせ〜」


 その頃、魔獣事件の当事者である広川(ひろかわ)星奈(せいな)は郊外にある町〈黒部町〉を訪れていた。理由はというとその町にある喫茶店〈GO〉の看板メニューであるパンケーキを食べるためというイマドキの女子らしい理由である。甘過ぎないパンケーキとコーヒーがよく合うと(ちまた)で評判になっており、黒部町の名物となっている。そして、実際に評判と違わずとても美味であった。

 そして目的を終え上機嫌で喫茶店を後にすると、素朴な郊外の町を散策した。都心とは違い少し寂れた風景は進学のために上京して来た星奈にとってどこか懐かしさを感じさせる風景だった。しかし、その風景にそぐわない人物がそこに居た。まるでRPGから飛び出してきたような格好をしたその人は先の魔獣との戦いで星奈を救ったライトであった。


「お久しぶり.. こんなとこでどうしたの??」


 星奈が問いかけるとライトは顔を上げた。


「おぉお前か どうしたんだこんなところで??」


「私?? 私はパンケーキ食べに来たんだよ」


 質問に質問で返されるも星奈はこの町に来た目的を告げた。実際この町に来る人の目的はほとんどがそれである。


「まさか!! ライトもパンケーキを??」


 まさかと思いつつ星奈は問いかけるもやはり違ったらしくライトはただただ困惑の表情を浮かべる。もちろんライトはパンケーキなんて知らないし、なんなら食事をしなくても生きていける。姿は人間に似ているがそれ以外は別物なのである。となると理由は一つしかない。


「じゃあ、またこの間の..??」


「ああそうだ」


 星奈の問いに神妙(しんみょう)な顔でライトは答えた。しかし、星奈には疑問があった。


「結構前から来てるけどあんな奴はいなかったよ??」


 星奈が町に来てから二時間は経っていたがその間何もおかしなものは見ていなかった。


「おそらくまだ召喚されていない。 それに召喚されるのはこの間のとは違う魔獣だろう」


 ライトは星奈の疑問に簡潔に答えた。しかし、また新たな疑問が生まれる。


「と言うことはその魔獣ってのは誰かが送り込んでるんだね?? でもなんで??」


「それは.. ッ!!!!」


 質問に答えようとした瞬間ライトの表情が一変した。そしてそれに気づいた星奈の顔にも緊張が走る。


 ーーブゥゥゥゥゥンーー


 不気味な羽音と共に()()は姿を現した。太陽を背に羽音を響かせるその魔獣の姿はまるでトンボのようであった。しかし、トンボとは色々違う。トンボの尻尾のように思われた部位は二本の伸ばした足で、さらに両腕は鎌となっている。そして昆虫ならば手足は六本あるはずだが手足はこの四本しかない。しかし驚くべきはその体長、なんとサーフボードに匹敵する程だった。虫嫌いにはだいぶキツイ姿だ。事実、星奈はその姿を目にした時腰を抜かした。


「アイツは確か.. 鋭刃魔獣(えいじんまじゅう)エッディス!!」


 敵の正体を確認しライトは(ふところ)から一つのクリスタルを取り出しそれを手で砕く。するとその手には光り輝く剣が握られていた。


「光剣フォトロン!! ブレードショットッ!!」


 剣にエネルギーを貯め、振るうと光の刃がエッディスめがけて飛んでいくッ!!


 ーーヒュオッ ヒラリッーー


 しかしエッディスはそれを軽々と避け、超速でライトめがけて飛行する!!


 ーーズバッーー


 想像を超える速さに避けきれず、ライトは脇腹を切りつけられる。しかし、通り過ぎていったエッディスに対してカウンターを狙い背面から再びブレードショットを放つ。


 ーービュオッ ヒラッーー


 なんと背面からの攻撃にもかかわらずエッディスは見事にかわしてみせる。さすがのライトもこれには驚きを隠せない。その後も幾度(いくど)となく反撃を繰り返すもエッディスは自慢のスピードでライトの攻撃を簡単にかわしてしまう。


 ーーズバッ ズバッッーー


 そして両腕の鎌〈マンディクロー〉で容赦なくライトを切りつける。姿は捉えているのだが、回避もガードも反応が間に合わない。かろうじて致命傷は避けているもののこのままではライトの敗北は時間の問題である。


「ハァ.. ハァ.. くっ!!」


 ライトは膝をついた。幾度となく切りつけられ、顔は苦痛に歪み、服は血で黒く染まった。このままではまずい、何か打開策を見つけなければとライトは思考を巡らせる。そんな時ライトはあることに気づく。


「あれ?? そういやアイツ無事か??」


 アイツとは星奈のことである。戦闘が始まってから完全に忘れて放置していたのでその安否が心配になったのだった。辺りを見渡すとまだ近くにいたのでライトは慌てて命令した。


「おい!! 危ねぇぞとっとと逃げろ!!」


 ライトの命令に星奈は申し訳なさそうに首を振った。


「腰が抜けて.. 動けません....」


 そう、星奈はエッディスが現れた時に腰を抜かしていた。戦闘が始まってからもただひたすらじっとして、目立たないようにしていた。そのおかげか星奈に傷はない。

 

 しかし、ライトには一つの疑問が生まれた。なぜ星奈は無事なのか?? エッディスの視界は三六〇度見えているはずである。空から見れば星奈を見落とすはずはない。しかし、仮に見えているのならば星奈を見逃すはずがない。となるとやはり、エッディスに星奈は見えていない。


 ーーギシャァァァァ スパッッーー


 そんなことを考えていたライトにエッディスが迫っていた。考え込んでいたライトの回避は大幅に遅れたものの幸運にも鎌が頰を掠めるだけで済んだ。そしてこれが逆転への足がかりとなる!!


 再び迫り来るエッディスを前にライトは立ち上がると動きを止めた。すると不思議なことにエッディスは攻撃を外した。その隙をつきライトは零距離でブレードショットを放つ!!


 ーーズバァッッーー


 ついにライトの攻撃がエッディスを捉えた。羽を斬り落とされ、エッディスは地面に落下した。


「よっしゃっ 思った通りだ!!」


 そうエッディスは動かないものを見るのが苦手だったのだ。星奈が無事に済んでいたのもこの性質が原因だった。そしてこの戦闘が始まって初めて、ライトが優位に立った。


「これで決める!!!!」


 一気に勝負をつけるべくライトはエネルギーを剣に収束させると残されていたもう一方の羽を狙い剣を振り下ろす。そのまま流れるように剣を水平に振るうと振った勢いを生かし一回転しながらもう一度水平に剣を振るう、今度は体をひねり逆回転させ剣を振る。さらに頭部を蹴り上げるとエッディスは宙を舞う。それを追いライトも跳び上がると空中で身動きの取れない相手を何度も何度も斬り刻む!! 


「光 剣 連 斬ッ!!!!」


 哀れエッディスは反撃することを許されずそのまま生き絶えた。


「やったぁぁ」


 ()しくも前回と同じく勝因となった星奈も声を上げてライトの勝利を喜ぶ。


 ーーグギッーー


「ああぁぁぁぁ....」


 喜びの声は悶絶(もんぜつ)に変わった。相変わらず星奈の腰は抜けたままである。このままでは帰れない。


「あーあ何やってんだ.. ったく」


 そう言うとライトはもう一つクリスタルを取り出しそれが砕けると翼になった。そして星奈を抱える。


「しっかりつかまれ。 あと案内は頼んだ!!」


「え?? いやちょっ..待っ.. きゃあああぁぁぁ....」


 二人は飛び立った。お互い傷つきながらも何とかまた生き延びたのだった。ちなみに余談ではあるがその後二人は紆余曲折を経ながらも無事(?)に帰宅した。






 

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