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宇宙をかけた戦士の戦い  作者: イシハラブルー
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第一話 舞い降りた者達



 その夜、数多あまたの流星が宇宙を駆けていった。その光は地球にも届いており、それに気づく者は少なくなかった。だが、それがこれから巻き起こる戦いの予兆と気づく者は誰一人いなかった。





 その翌日、町には喧騒けんそうが流れ、皆が皆、それぞれの当たり前な日常を過ごしていた。

 透き通るような黒髪を持つ女性、広川(ひろかわ)星奈(せいな)もその内の一人である。

 彼女は大学進学を機に上京し、この町で一人暮らしを始めていた。最近はバイトに熱を注ぎ、この日もバイト先へ向かうため駅までの通りを歩いていた。その通りはちょっとした商店街であり、同じく駅へ向かっているであろう多くの人で溢れていた。

 

 だが、そんな変哲のない人混みの中に不穏な影が一つ潜んでいた。誰にも気付かれることなく、影は通りを外れて行くとビルの屋上へと上って行った。そこは町を一望できる絶好の場所だった。

 

「さぁ....始まりだ!!」

 

 影は宣戦布告する、そして青黒い球体を取り出すと微笑を浮かべてそれを放り投げる。投げられた球体は目を刺すような光を放った。


 ーーズガシャャァァァァーー


 それとほぼ同時に轟音が響いた。その場にいた誰もが音の出た方向を向き、そして()()に気づき目を疑った。そこにいたのは怪獣映画に出てくるような化物であった。その姿は海老や蟹に近いものがあったが、大きさは軽トラ程はあり、そのハサミもその体に見合った堅牢で巨大なものであった。着地の衝撃で()()のいる周囲のアスファルトには亀裂が走っていた。万が一車でも停まっていたら間違いなくペシャンコにされていただろう。


「行けっ、鋼殻魔獣こうかくまじゅうクラスター この星の人間を根絶やしにするんだ!!」


 影の命令を受け、魔獣は行動を開始する‼︎ 口からは火炎弾〈クラブブラスター〉を放ち、さらに自慢の巨大なハサミで周囲のあらゆる物体を叩き潰し、切断する!! 車も電柱もその鋼のハサミによって全てがスクラップと化し、通りは逃げる人で大パニックに陥った。


「なんなのッ アレっ!!」


 星奈もまた必死に逃げていた。もはやバイトどころではない、当たり前だった日常はもうそこにはなく、生きるか死ぬかの瀬戸際であった。息を切らして走った。しかし、そんな中で星奈は足を止めた。微かではあったが聞こえてしまったその声が星奈の足を止めてしまった。


 ----たすけて----


 後ろから誰かが助けを呼んでいる。振り向くとまず目に入ったのは恐ろしい魔獣だった。だが、星奈のいる場所からおよそ二十メートルの所に泣いている子供の姿があり、その側には倒れている母親がいた。動けない親子に魔獣が迫ろうとしている。瞬間、その親子の元へと星奈は駆け出していた。別に助けなければならない理由もないが反射的に走り出していた。


「大丈夫ですかっ!!」


「....」


 母親は答えない。完全に気を失っている。子供は泣きじゃくっていた。なんとか二人を連れて逃げ出そうにも一人ではどうしようもなかった。


「ブォォオオオ!!!!」


 魔獣は三人の眼前に迫っていた。そして、その巨大なハサミを振り上げ、三人に向かって振り下ろした。星奈はその子を抱きしめて目をつぶった。


 ーガキィィンンッッー


 金属音のような音が響いた。そしてハサミはいつまでたっても振り下ろされない。何が起こったのか、星奈は目を見開いた。


「大丈夫か?? 地球人」


 星奈を見ずにその人は尋ねた。

 その人の格好はまるでRPGの勇者のようだった。その髪は金色で蒼い目をしていた。そしてその手には光り輝く剣が握られ、その光り輝く剣で魔獣のハサミを受け止めていた。


「あ..あなたは..」


「悪いが.. 自己紹介は後だ!!」


 そう答えると謎の剣士に力を込め、ハサミを弾き飛ばす。


「ウォオラァァ!!!!」


人間とほとんど変わらない姿をしているが、その力は桁違いで魔獣を後退させるほどだった。


「逃げられるか??」


 その問いに星奈は首を横に振った。


「そうか..なら、どこかに隠れてろ!!」


 そう言うと剣を構え、魔獣に向かっていった!!


 ーーバチチチッッ  ドッドッドォンッッーー


 ーーガキンッ ガキンッ ガキッーー


 魔獣は火炎弾を連射した。だが、それを剣で的確に弾き返す。一気に距離を詰め目にも見えぬ速さで剣を振るう。


 ーーガッッーー


 鈍い音が響く。鋼のような外殻が剣を防いだ。


 ーービュオッッーー


 ーータッ ヒュルリッ ゴッーー


 ハサミで串刺しにしようとする魔獣の攻撃を身をひるがえしてかわし、その回転の勢いで蹴りを加える。だがやはり、その外殻に阻まれ大したダメージを与えられていない。一方で魔獣の方も素早い動きに翻弄ほんろうされ攻撃を当てることができない。攻防は激しさを増していくがお互い決定打となる一撃を与えることが出来ず拮抗きっこう状態が続く。そんな中で星奈が声をあげた。


「頑張れ!! 負けるな!!」


 それは純粋な声援であった。その声に一瞬だが魔獣の気が引かれた。そしてその一瞬が勝負を分けた!!


「デェリャァァ!!!!」


 ーーガギッ ガギンッ ズババシュッッーー


 剣を水平に振り、両腕のハサミを左、右へと弾き飛ばす。そして弾き飛ばされあらわとなったハサミと胴体をつなぐ関節部分を切断する!!


 ーーズドンッ ドスッーー


 ハサミはそのまま落ち、地面で音を立てる。


「これでトドメだっ!!」


 剣にエネルギーを集束させ、猛スピードで突っ込んで行く。剣は勢いよくハサミを失い守るすべのない腹に突き刺さった。


「スラストフォトロン!!」


 そして、集束させたエネルギーを一気に放出する!!


 ーービキビキッ ビキッ!! ーー


 ーーズドォォォォンーー


 放出されたエネルギーに耐えきれず魔獣は粉々に吹き飛び、辺りには爆発音が轟いた。戦いは終わった....

 歩み寄りながら剣士は言った。


「ありがとう お前のおかげで勝機をつかめた」


「こちらこそ 危ないところをありがとうございます..」


「なぁに 大したことない それよりそこの二人は大丈夫なのか⁇」


 そう言って気を失った親子に目線を移して問う。


「そうだ!! 早く病院に運ばなきゃ」


「ビョウイン⁇ よく分からん 案内してくれ」


 そうして二人は親子を連れて病院へと向かって行った。幸いにも命に別状は無かった。することを終えた二人は病院を後にした。


「そういえば自己紹介まだだよね⁇」


「そういやそうだったな」


 先ほど後にした話を再び持ち出した。


「私は広川星奈 あなたは??」


「オレの名はライト‼︎ 宇宙そら戦士せんしだ」


 こうして二人はファーストコンタクトを終えた。


 激動の一日が終わりを迎えようとしていた。だが、これはこれから続く戦いのほんの序章であった。

















 



 

  



 

 


 


 

 



 《その夜》


 戦いの場となった通りに一つの影があった。影は魔獣を召喚した時よりも深い笑みを浮かべ呟いた。


「ライトの奴生きていたか.. だがお前の思い通りにはならないぞ」


 影は闇夜へ姿を消した。



 


 


 

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