新陳代謝
秋の夕方、涼しい風が吹くなかおふろをたてた。
伸ばしている最中の髪をブラシで念入りにとかして、頭皮のマッサージ兼汚れ浮かしをする。大事な黒髪。少しくせっ毛。
髪を洗ってから、石鹸をヘチマで泡立てて身体を念入りに洗う。たっぷりのお湯で流す。
そして、ドボン。
肩まで温かな湯船に浸かる。
爪も髪もツヤツヤ。少し伸びすぎの爪は、お風呂からあがったら爪切りで短くしよう。
毎日毎時間、身体は新陳代謝を繰り返す。怪我はいつしか治り、新しい細胞が私を造る。
あのね、マニュキアは塗らないの。化粧もよほどの時じゃなきゃやらない。ハイヒールも履かない。ピアスの穴なんてもっての他。
親からもらった大事な身体をそんな目に合わせたくなくて。
普通はね、ってみんな思うかもしれないけど、これが私にとっての普通なんだ。
お風呂で温まったらバスタオルで身体を拭いて、髪ごと頭を包んだ。
体重計に乗って、ちょっと首をかしげる。ま、いいか。
応接間に行き、爪の手入れ。
髪は自然乾燥。
ヘチマ水を顔と手足にぱしゃぱしゃ。
ちょっと考えて、台所の大黒柱に背中を当てて、頭上に物差し当てて、さっと避けて見る。また背が伸びた。
この先何年生きるのだろう?
その間、絶え間なく新陳代謝が繰り返される。
数日で自分は別の自分に入れ換わってしまう。
「私」の実体は何者なんだろう?
今している恋は時間と共に変化して行く。
それでも、それが「生きているということ」だと思う。
すごいな、って呟いて、クスッと笑った。