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No.07「ヨミノクニ」





「おう余宮(よみや)、こりゃどういうことだ? 」



 国広(くにひろ)は両手を大きく上げながら隣にいる余宮にぶっきらぼうな口調で呼びかける。



「オレにもさっぱりわからん。テレビ番組のドッキリかもしれんけど……? 」



 余宮も国広と同じく、両手を大きく天に伸ばしつつ、震え声で軽口をたたく。



「アホ! 俺らぁ、まだそんなオイシイ扱いもらえるほど売れてねえんぞ! 漫才でごはん食うどころか

毎月の家賃も払えん状況だぞに! 」



「そんなこと言われたってよ……それじゃ目の前にいる中世ヨーロッパ的な方々は何だってよ? 」



 両手を上げて全面降伏の意をアピールしている余宮と国広の周囲には、厚く丈夫そうな鉄の鎧を着込んだ屈強な男たちが、鋭利な槍を彼らに突きつけている。


「○△□!! &%$$? □#!! 」



 さらに鎧の男たちは、英語ともフランス語とも、はたまた中国や韓国といった国の言葉とも違う、全く聞き覚えのない言語で彼らをまくし立てていた。



「おう……コイツら何を言ってるん? 」



「わからん……ただ、オレらを歓迎してないってコトだけは雰囲気で分かる」



 余宮と国広は、自分たちのおかれた状況を飲み込めず、ただただこちらから危害を加えるつもりは毛頭無いことを伝えるべく、悲壮感を漂わせる表情を必死に作り上げた。



「なァ余宮。俺らぁ、確か一緒に横断歩道渡ってたんだよな? 」



「ああ、二人でバイトに行く途中だった……そしたらオレ達に向かってでっかいトラックが突っ込んで来た……」



「それにぶつかったってコトだよな……そんじゃやっぱ死んだのか? 俺らぁよ? 」



「そうかもな……ここはあの世かもしれん。やっぱりコンビ名がいけなかったんだよ……余宮と国広で『ヨミノクニ』なんて。さすがに縁起悪かったんだよ」



「うるせえ! おめぇだってその名前決めた時はセンスいいじゃん! とか言ってただろうに! 」



「○△□!! &%$$? □#!! 」



 自分達をないがしろにして口喧嘩し始めた『ヨミノクニ』の二人を再び威嚇する鎧の男達。その槍が彼らの肉体に風穴を開けるのも時間の問題だった。



「やばいよ! どうしよう国広!! 」



「焦るな! 俺らぁはなんだ? 漫才師だろ? 」



「うん……」



「なら答えは簡単だ! 相手を笑わせればいい! 」


 国広の提案に「そんなアホな」と弱音を漏らす余宮だったが、確かに興奮しきっている男達をとにかく笑わせてリラックスしてもらうことは、自分達の命を繋ぐ為には最適なプランとも感じていた。



「それにしてもどうする? 相手は言葉が通じないんだろ? 」



 余宮の疑問はもっともだ。言葉が通じない以上、話で相手を笑わすコトができない。



「そんなの簡単だろーに! 万国共通! 老若男女に通ずるギャグがあっだろおめえ! 」



 国広のその言葉に「あ……アレをやるのか……」と何かしらの心当たりを感じ取った余宮は、覚悟を決めて『とあるネタ』の準備に取りかかった。



 国広はおもむろに地面に仰向けになり、余宮はその傍らにひざまずいた。そして大きく声を張り……



「『サイボーグ・クニちゃん』やります! 」と高らかにタイトルコールをした。





『お! Amyazonで買ったサイボーグ届いてるじゃん! おーっし! さっそく起動してみるぞー! 』


 余宮は倒れた国広のへその部分に「ポチッ」と自前の効果音付きで、指を押し込んだ。



『ふぁ~、よく寝た……』



 国広は舞台の役者のような艶めかしい所作で、大きく背伸びをしてクチャクチャと咀嚼音を発した。



『おわ!? サイボーグなのにヤケに能動的な動きだな!? まるで一昔前のディズミーアニメだわ』



「…………」



 鎧の男達は無言で彼らに険しい表情を向ける。



『おはよ…………オハヨウゴザイマス……ゴシュジンサマ』



『おま!? 今確実に言い直したよな? 饒舌だったのをカタコトに直したよな? 』



 気を取りなしつつコントを続けるも、周囲は沈黙を続ける。



『ホントにお前サイボーグか? 怪しいなあ? 』



『ワタシ……サイボーグ……ソノショウコ……ミセル! 』



 サイボーグを演じる国広は、いかにもロボットですよと言わんばかりの固くスタッカートの利いた所作でゆっくり立ち上がり、自分の両目を指さし……



『ココ……オシテ……』



 と余宮に両目を指で押すように促した。



『いいのか? そんなとこ押して? ま、お前が押せ言うんならしょうがないな。それじゃポチっと』



『痛っテェーな!このボケ! なにさらすんじゃ!!? 』



 と、目玉を突いてきた余宮の指を掴み取ってへし折ろうとするサイボーグ国広。しかし誰も笑っていない。



『お、お前が押せって言ったんじゃない!? 怖いよお前! もう返品するわ! 』



『マッテ! サイゴニココミテ! 』



 サイボーグ国広は余宮に自分のお尻を見るように促す。余宮は「な……なんだよ? 」と言いつつ、指さされた先にある国広の肛門近くに顔を近づける。



『今度はどうなるんだ? ええっ!? 』



『ヨークミテテ。ソレジャイクヨ! 』



 そう言ってサイボーグ国広は、余宮の顔面めがけて強烈な放屁を「ブビビビビッ!! 」と噴出させた! 



 顔面に醜悪なガス攻撃を浴びる余宮。それを見た観客はコトの滑稽さいに爆笑でわき上がる!! ……………………



 …………ハズだった…………



「ぬわぁぁぁぁッ! 」



 事態は二人が想像だにしなかった展開を迎える。



 なんと、思いっきり全身全霊を込めた国広の放屁は、そのまま悪臭のガスと化すだけでなく、ジェットのような推進力を生み、そのまま栓を開いた風船のように宙に飛び上がってしまったのだ! 



「国広ォォォォ!! 」



 おならが制御不能になった国広はそのまま数秒不規則に飛び続け、その燃料が無くなったとたんに地面に引っ張られて墜落してしまう……



「大丈夫か!? 国広!! 」



「痛てて……大丈夫だ………ちょっと尻の穴が野球ボールくらいになりそうなこと以外は……」



 彼らが迷い込んだ世界は、元の世界よりも重力が軽かった……それ故にどうということのない放屁でさえ、人間ロケットを実現させるほどのパワーを発揮させることができたのだ。



 そしてそのパワーは、単に推進力ということに留まらなかった。



「お……おい? 」



 そう、おならの力で飛び回った国広のあまりにもコメディな絵面に、鬼の形相の兵士達が一同笑い転げてしまっていたのだ。



「お……おい! 」



「やった……やったよ国広!! 」



 彼らの決死の思いで繰り広げられたコントはこの時、異世界の兵士達を抱腹絶倒の大爆笑の渦に巻き込んでいた。








 こうしてこの世界の住人と打ち解けた彼らは、その後この世界を独裁する魔王をも笑い転げさせて英雄となった。



 これは伝説になった勇者の二人組「ヨミノクニ」の神話である。





THE END

(お題)

1「ごはん」

2「漫才」

3「黄泉の国」


 執筆時間【1時間15分】


 ネタの部分に苦戦(笑)

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