No.11「真昼のプラネタリウム」
俺には妻がいる。もう結婚して10年が経つ。
彼女とは小学生の頃からの幼なじみで、中学、高校とも同じ道を歩み、気が付いたら常に二人共一緒に過ごすようになっていた。
そして二十歳になった年のクリスマスの夜、自然と口からプロポーズの言葉が飛び出して、彼女もそれを喜んで受け入れてくれた。
駆け引きもなにもない、テンプレートのような恋路だけど、俺も彼女もお互いに満足して幸せな毎日を送ってる。
そして今日は10回目の結婚記念日。
俺が彼女に「どこか行こうか? 」と尋ねると「プラネタリウムがいい」と、お菓子を与えられた子供のような笑顔で答えてくれた。
プラネタリウムか……おやすいご用ではあるが、その時俺はちょっと心につっかえたモノを感じて「なぜ? 」と彼女に聞き返してしまった。
なぜなら、彼女はこれといって天体に興味を持っているワケでもなく、過去にデートコースとして選んだコトもない。最近プラネタリウムが流行っているという話も聞いたことがない。なぜ今、結婚記念日という大事な日にプラネタリウムなのか? それがきになってしょうがなかった。
「なぜ? って……あなたは覚えてないの? 」
「え? 覚えて……? 俺、君と一緒にプラネタリウムに行ったことなんてあったっけ? 」
「あ~……まあ、分からないのもしょうがないか。なんせ小学生の頃の話だもんね」
「そんな昔に……? 」
「そう。まぁとにかく一緒にプラネタリウム行こうよ! その後に教えてあげるから! 」
「あ……ああ」
妻は悪戯めいた表情を作り、お出かけの準備に取りかかる為に自室に閉じこもった。
それにしても、小学生の頃にプラネタリウムになんて行ったこともないし、話題に触れることもなかったハズだ。妻がこの日にプラネタリウムに行きたがる謎がますます深まってしまった。
フフ……あなたがわからないのも無理はないよね……
だってあの時プラネタリウムで星を見ていたのは私だけだったから……
今でもよーく覚えてる……秋に入りかけた頃の、真昼の出来事……
その時は日差しが強く、気温は真夏日と遜色なかった……そんな時に開催された小学校の校外マラソン大会……
運動が苦手な私は、走っている途中で日射病になってしまったようで……その場で倒れてしまって動けなくなってしまった……
人気も少なく、助けを呼ぼうにも喉が渇ききって声がでない。
正直「ああ、私はこのまま死ぬのかもしれないな……」そう思ったほどだった。
でも、そんな時に来てくれたじゃない……コースを間違えて遅れてやってきたあなたが、道ばたに倒れていた私を見つけてくれたじゃない。
おい! 大丈夫か!? 今先生呼んでくるからな!!
そう言ってあなたは、道ばたに捨てられていたボロボロの黒い傘を開いて、私の頭に日光が当たらないに置いてくれたよね……
その時、あなたが来てくれたことでホッとした私の目に飛び込んで来たのが、穴だらけの真っ黒な傘からこぼれる日の光が、あたかも夜空に輝く星々のように煌めいて見えた。
すてきだな……と思った。
死ぬかと思った絶望の淵で見せられたキラキラの星空。あなたは私を助けるだけじゃなく、特別な体験までもたらしてくれた。
この時思ったんだよ……
私は、あなたとずっとずっと一緒にいたい……って。
遠くの方から聞こえる車の騒音と、あなたが作ってくれた小さなプラネタリウムは、いつまでも記憶に色濃く残っていて、きっと死ぬ直前まで忘れることはないだろう……
THE END
(お題)
1「真昼」
2「プラネタリウム」
3「騒音」
執筆時間【48分】
久々に一時間以内で書き終えた(;´∀`)
文字量も理想。この調子でいこう。




