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絢子(アヤコ)

私のことを彼はいつまで覚えていてくれるかしら。

そんな心配は無用だった。私が死んですぐに私の家族宛の手紙を読んで、指輪と手紙がバッグに入っていなかったことを知り、彼は公園を探していた。


私は癌だった。まだ26歳だった。そろそろ彼と結婚して子どもを産むと思っていた。けれど癌だとわかってからは彼と一緒にいることが辛かった。きっともうすぐ死ぬ彼女なんて20代後半の一番大切な時期にただのお荷物だと思っていた。それでも彼は私にプロポーズをして指輪をくれた。


今となっては私が死ぬ日、外出許可が出た。たぶん、もうすぐ亡くなるから出してくれたのかもしれない。だからその前日にいつ死んでもいいように、家族宛の手紙を書いた。


『お父さん、お母さんへ

明日、外出許可が出たので公園に行こうと思います。彼がプロポーズしてくれた公園です。たぶん私はもうすぐ死んじゃうと思います。大切な指輪と彼への感謝の手紙はいつもお気に入りのバッグに入れて持ち歩くので死んだら彼に渡してください。


お父さん、いつもありがとう。小さい頃はたくさん遊んでくれて楽しかった。反抗期は反抗しちゃってごめんなさい。大人になってからは仕事の大変さを知りました。私が言うことじゃないけれどこれからも身体に気をつけて。

お母さん、いつもありがとう。美味しいご飯、いい香りのお洋服、ピカピカの床。一人暮らしをして家事の大変さ知りました。たくさん相談に乗ってもらいました。これからも身体に気をつけて。

先行く不幸をお許しください。

天国から見守ってるよ。大好きです。』


私が公園に持って行ったお気に入りのバッグに指輪と手紙が入っていなくて両親も彼も驚いたと思う。入れ忘れたのではなく、公園で倒れたあの日、バッグの中身が散乱したから。でも彼はたくさんのアヤちゃん達の協力で見つけてくれたね。私が好きなたんぽぽまでありがとう。だからどうか、手紙に込めた思いがちゃんと彼に伝わりますように。いつまでも天国からあなたの幸せを願っている。

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