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文乃(アヤノ)
娘のあやめとはこの公園にはよく遊びに来ている。あやめがブランコに乗るというので、私はベンチに座ってその様子を眺めることにした。私の座るベンチの足元にはたんぽぽが咲いていた。
「こんにちは」
挨拶されて顔をあげると男の人が立っていた。
「こんにちは」
私も同じように挨拶する。
「急にすみません。たんぽぽが咲いているのが見えて、一輪欲しいなと思い……」
男の人がたんぽぽが欲しいなんて珍しいと思いつつも、私は足元のたんぽぽを見て
「あぁ、どうぞ」
と立ち上がった。
「ありがとうこざいます」
男の人はたんぽぽを一輪摘み取った。
「お子さんと来てるんですね」
「どうして、わかるんですか」
「あっちで女の子が手を振ってますよ」
ブランコの方を見るとあやめが手を振っていた。片手には白い何かを持って。
「あら?何か拾ったのかしら」
私は独り言を呟き
「こっちへおいで」
とあやめを手招きした。あやめが走ってくるのが見えた。たんぽぽを持った男の人は私の隣で微笑んでいた。