神の恩恵
「え!!神の恩恵」
何か変なところがあるとは思わないアトラ。自分のステータスプレートをよく見ながら考え込む...がやはり分からない。
「はぁ、じゃあ俺のステータスプレートを見てみろ。本来は簡単に他人に見せないんだが、アトラのステータスプレートを見せてもらったしな。俺だけ見せないのはフェアじゃない」
そう言ってレイトさんは自分のステータスプレートをアトラに渡した。
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レイト=ウォンバット
性別:男性 年齢:32 状態:異常なし
称号:剛剣
スキル:【生死の力】(ダメージ量に比例して攻撃力と防御力を上げる。最大8倍)
魔法:【風撃】(拳や武器に風を纏わせ一時的に攻撃の範囲を拡張する。無詠唱)
【竜巻 】(地面に風を叩きつける事で発動する。名前の通り竜巻を起こす。無詠唱)
神の恩恵:なし
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レイトさんのステータスプレートを見てやはり凄いと思う。アトラは自身のステータスと比較しながら思っていた。しかし、よくよく見るとおかしな点に気づく。
「神の恩恵がなし?...僕のは『 』でした」
「そう、そこだ。やっと気づいたか」
レイトはホッとしていた。
「何故、僕のステータスでは『 』」なんですか?」
「それはな、アトラ...お前が恩恵者だからだ」
「恩恵者?」
「神の恩恵を持つ者をそう呼ぶんだ」
「で、でも僕のステータスには神の恩恵が表示されていません」
「覚醒していないだけだ。神の恩恵は一般的なスキルや魔法とは異なるからな」
「異なる?」
「あぁ、普通のスキルや魔法は素質、つまり努力や才能次第で自動的に取得される。しかし、神の恩恵は違う」
「努力や才能は必要ないんですか?」
「いや、勿論、努力や才能も必要だ。しかし、それ以上にきっかけが必要だなんだ」
「きっかけ?」
「そうだ。だが、簡単じゃないぞ。きっかけと言っても、天災級の偉業を成し遂げて始めてゼクスは覚醒する。歴史に名を残した、
《3万の魔物を無傷で倒した...剣聖ガイン》
《闇ギルド【シャングリラ】のマスター...死門の番人グライ》
《ラーティア帝国最強の戦士...帝王ザングス》
《星天魔法の使い手...神の子シンシア》
《始祖エルフの血を持つ女...月の女王マーリン》
《龍人族とドラゴンの頂点..龍王ガルムガル》
他にもいるが。こいつらは、死んでもおかしくない死闘を経てゼクスを覚醒させた」
アトラは驚いていた。レイトさんの言っていた人物は全員知っており、一人一人が【生きる天災】と言われている人物だ。特に月の女王マーリンは【アトランティス】2代目マスターだ。その人達と同じ才能が自分にある?...信じれられなくて当然だ。
「その人達と同じゼクスが僕にも...」
「あぁ、そうだ。だが、それは絶望を経験した先にある力だ。できば覚醒して欲しくないと思っている。だが、それでも欲しい力なら応援する。頑張れ」
スキルや魔法が無かった為に追放されたローウェル家。当然のように怒りや憎しみがあった。でも...でもそれ以上に悲しかった。才能がないだけで追い出した父に。それを喜ぶ兄に。追放を止めてくれなかった執事やメイド達に。そして、何も出来なかった自分に。
...そんな自分が、強くなれる。出来るか分からない。
ーー強く...強くなりたい。
「レイトさん、これからもご指導よろしくお願いします」
「そうか、どうやら始めから答えは決まってたようだな」
「はい」
「わかった。フィガルナ王国に着くまで、ビシバシ鍛え上げてやるぞ。......そのかわり1つ俺からも頼みたい事があるんだが...」
レイトさんからのお願い。それは珍しいことだ。
「ん?頼みたい事ですか?」
「あぁ、エレナの事だ」
そう言ってポケットからもう一枚のステータスプレートを取り出してアトラに渡した。
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エレナ=ウォンバット
性別:女性 年齢:11 状態:異常なし
称号:先天性特異能力者
スキル:縮地(相手の距離を一瞬で詰める)
魔法:なし
神の恩恵ゼクス:なし
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「先天性特異能力者?」
聞いたことのない称号が書いてあった。
「エレナのステータスプレートに書いてある先天性特異能力者が気になるのだろ」
「は、はい」
「恩恵者は少ない。だが他にも少ない存在がいる。それが先天性特異能力者でエレナもその1人だ」
それから、レイトさんが先天性特異能力者について説明してくれた。
「魔法を使う際には魔力を必要とし、スキルを使用する際には気力を必要とするだろ、これは世界の絶対法則だ。しかし、例外がある。それは、魔力と気力を同時に使い混ぜ合わせることだ。それを出来る人間を先天性特異能力者と呼ぶ。もし、恩恵者を持たない人間で対抗出来る存在がいるのなら先天性特異能力者と言われている」
「凄いじゃないですか!!」
「あぁ、これは努力すれば取得出来るものではない。だから、先天性なんだ。だが、最近のエレナは何故か強くなる事に焦っている気がするんだ。俺にはそれが危ない気がする。だから、様子がおかしかったら教えて欲しいんだ」
ーー確かに村での休息中も1人で特訓してたなぁ
「わかりました」
アトラは快よく承諾した。
「んじゃ、そろそろ俺達も寝るか、明日からアトラを本格的に鍛えなきゃやらねぇしな」
そう言って2人は寝たのでした。