アトラの話
村でしばらく休息をとった4人はフィガルナ王国に向けて再度出発した。
フィガルナに向けて出発したので訓練も再開した。
「アトラは魔力の使い方は上手だが気力の使い方はハッキリ言って下手クソだな」
朝に訓練中に気づいた事をそのまま伝えたがアトラは首を傾げていた。
「気力?なんですか気力って。ラティアは知ってる?」
「いえ、私も聞いた事がありません」
「マジか!!気力を知らないのか」
「「はい」」
アトラとラティアが元気よく返事した。いや、そこで元気よく返事しなくても...とレイトさんは思っていた。
「ラティアちゃんは判定の儀を受けてないから知らなくても仕方ないが、アトラは判定の儀を受けてるだろその時に教えてもらわなかったのか」
「...はい」
「そうか...ならエレナが説明してやるぞ」
「わ..私?しょうがないわね。教えてあげるからよく聞きなさい」
ごくり...唾液を飲み込みエレナの話に耳を向ける。
「気力ってのは魔力の親戚よ」
「「??」」
思考が停止したかのように2人固まっていた。
「おいエレナ、2人が困惑してるだろ。はぁ~俺が補足するな。気力ってのはな......」
それからアトラとラティアはレイトさんの説明を聞いた。
魔力を必要とするものが魔法で、気力を必要とするものがスキルらしい。
主に身体能力を向上させたり自己治癒力を上げる等、人に元々備わっている基礎能力を高めたりもするとのこと。
因みにエレナの【縮地】は気力を使用したスキルらしい。
ーーなるほど、確かに木刀を魔力で纏わせたりと、魔力操作は向上しているけど、気力なんて知らなかったし上手なわけないか......そもそも、僕はスキルや魔法を覚えにくい体質だし
アトラがそんな事を考えているもの、エレナがラティアに話しかけていた。
「ねぇラティアちゃん、たまには模擬戦しない?」
「あ、はい、いいですよ」
エレナはラティアの腕を引っ張りアトラとレイトさんから、少し離れた場所まで連れて行った。
その様子を見ているとレイトさんが小声で話しかけてきた。
「なぁアトラ、少し話したいから後で時間もらってもいいか?」
「大丈夫ですよ」
ーーなんの話だろう?
アトラとラティアの模擬戦を見ながらレイトさんが何を話すか考えていた。
それから朝練を終えフィガルナに向けて出発し、夜に夕食を食べレイトさんと2人になった。エレナとラティアはもう寝たみたいだ。
焚き火の暖かな光が夜の寒い空気を暖めパキパキと薪の焼ける音が聞こえる。レイトさんの表情はいつものふざけた表情ではなく真剣なものだ。
「なぁ、アトラ...言いにくい事に聞いてもいいか?」
「いいですよ」
「アトラ...お前、もしかして先日、追放された貴族の子か?」
「!!」
「その表情はやっぱりか...実はカルスナに滞在中にどこかの貴族の子供が家を追い出されたと聞いてな、もしかすると......」
「はい僕だと思います。実は僕、元々ローウェル家の人間なんです」
元々レイトさんには話そうか迷っていまことだ。
フィガルナ王国に連れってってくれた。それだけでなく、指導までしてくれた。その人に秘密ごとなんてしたくない。これは気持ちの問題だ。捨て子のことは、ややこしくなるので言っていない。
「ローウェル家って、あの魔法の名家の?確か神童と言われたルト=ローウェルがいると聞いたことがあるな」
「はい、そのルト=ローウェルが僕です。でも判定の儀を行った日、僕のステータスが表示され全てが変わったんです」
「全てが変わった?」
レイトさんはアトラの話を真剣に聞いていた。
シルギは嫌な思い出を思い出し苦しそうだ。顔が歪み、息も少し荒れている。額には汗がある。
「はい、知っての通り僕にはスキルと魔法がありません。判定の儀が何故10歳で行われるか、それはその歳である程度の才能が分かるからです。10の時点でスキルまたは魔法を取得していない者はその後も習得し難いとされています。つまり、僕は......」
「もうそれ以上は言わなくていいぞ。なるほど全てが分かった。道理で最初に会った時、貴族の着るような服をを着ているのに何故市民街にいるのだろう?と思っていた。だから、アトラが追放になった貴族である可能性をある程度予想していた。しかし、ラティアちゃんは違うだろ?まだ9歳だ。判定の儀は来年のはずだ」
「ラティアは追放になった僕についてきてくれたんです。だから、2人でフィガルナで生活していこうと」
「いい子だな、ラティアちゃんは」
「はい、僕がこうして前を向いて生きていけるのはラティアのお陰です」
全てを聞いたレイトさんは...
「ありがとうアトラ、話してくれて」
「いえ、僕も口にする事で少しスッキリしました」
「そうか...なぁアトラ、ステータスプレートを見せてもらってもいいか?」
「あ、はい」
シルギは軽く返事をするとポケットに入れてあったステータスプレートをレイトさんに渡した。
アトラ=エンフィールド
性別:男性 年齢:10 状態:異常なし
称号:『 』
スキル:なし
魔法:なし
神の恩恵:『 』
レイトさんはシルギのステータスプレートに目を通すと小声で「っ!!...」と言ってステータスプレートをシルギに返した。
それからシルギの方がを見てレイトさんが質問した。
「なぁアトラ、アトラは自分以外のステータスを見たことがあるか?」
「まぁ、元兄のなら」
シルギはもうカイやベイの事を兄さんなんて呼びたくない。
「だったらアトラこのステータスプレート何か変だとは思わないか?」
「いえ、特には...」
レイトさんが何を言いたいのかよくわからないアトラは首を傾げていた。だが、よく見ると違和感に気づく。
「あっ!!分かりました。名前変わっています」
「違うわ!!」
キレのいいツッコミが入った。
「えっ!違うんですか?」
「名前は自分の思い込みで勝ってにステータスが変更される。俺が言いたいのは神の恩恵だ」
「...えっ?神の恩恵?」