村での1日
アトラとエレナの試合が終わった日の夜。
アトラは試合後気絶していた為今、目を覚ましたのだ。
ーー痛って〜...?ベッド?
アトラが、あたりをを見渡すと部屋にいた。馬車の中にいるはずの自分が部屋にいたのだ。窓から見る外の景色はもう、すっかり夜だ。
ーー寝ている間に村についたのかなぁ〜......
昨日の夜にレイトさんが、「明日か明後日に村によるから、その日は各自で休んでいいぞ」と言っていた事を思い出した。
トントン、ガチャ。扉の開く音と共に扉が開いた。
「あっ!起きた見たいね。気絶している間にカラム村の宿についたわ。それから明後日までカラム村に滞在するらしいから、しっかり休んでね」
アトラは、毎日の訓練と今朝の試合で身体が疲れきっていたのでエレナの言った通り今日は寝ることにした。
* * * *
翌日......綺麗な青空が広がる晴天の日だった。
「お兄様、起きてください」
「ん、おはようラティア」
「おはようございます。それでお兄様、一緒に村を見に行きませんか?」
ラティアは、というかアトラもだがカラスナ王国から出たことが無いので、村に興味があるのだ。
「あぁいいよ。でも、一応レイトさんに言ってから行こうね」
「レイトさんは朝一に出て行きましたよ。エレナお姉様もさっき出て行きましたし。宿にいるのは、私とお兄様だけです」
そう言ってアトラは支度をし宿をラティアと共に出た。
ラティアといろいろ周り楽しんでいると...
ーーはぐれた...
アトラはラティアとはぐれてしまったのだ。
ーーまっ、ラティアなら一人で宿に戻ってこれるし、心配ないか。
そんな事をアトラが考えていると、アトラの視界に大きな木が見えた。
村の外れにあるその、大きな木を近くで見たいと思ったアトラは一人でその木に向かって行った。
木の近くに行くとそこに一人の人影があった。よくよく見るとそれはエレナだっあ。
凛とした表情と、ここまで伝わってくる集中力からアトラはエレナが特訓していることに気づいた。
木刀を片手に素振りをしているエレナ。汗だくになりながらも、それでも集中力を切らさずに頑張り続けるエレナの姿にアトラは不覚にも美しいと思っていた。
ーー綺麗だ。どうやったら、あんな綺麗な剣筋になるんだ。
エレナの尋常でない努力が分かる。それ程までに美しい剣筋だ。
特訓がひと段落したのか、素振りが止まった。そしてアトラの視線に気づいたのかアトラの方を見た。
「あら、恥ずかしいとこ見られちゃたみたいね。お父さんには内緒にしてね、こっそり強くなってビックリさせるつもりだから」
1人黙々と特訓し確実に強くなっていくエレナを改めてカッコいいと思ったアトラ。
「ねぇアトラ、最後に試合したいんだけど付き合ってもらえる?」
「ん?試合、でも汗だくだよ。今日はやめた方が......」
「お願い、試合して確かめたいことがあるの」
「確かめたいこと?」
「なんでもないわ。兎に角、試合して...」
いつもとは違い真剣な表情だ。だが、エレナは既に疲れている今日はやめた方がいいと思う。しかし、それはエレナも知っていることだ。それでも試合したいと言っている。
「わかった、いいよやろう」
「ありがとう」
ふたりは構え睨み合う。
木刀はエレナが2本持っていた為、1本を受け取っていた。
先に動いたのはエレナだ。疲れを感じさせない攻撃だが日々成長しているアトラはエレナの攻撃を捌くことができる。
ガン ガン 木刀のぶつかり合う音が響く。
「っ!!やるわね」
「やっとやっとだよ、いつ攻撃を受けるかヒヤヒヤしてる」
「そんな風には見えないけど」
エレナは「フゥ~」と一息すると、その瞬間エレナの姿が消えた。今までの速いではない。明らかに速度が違う。そのことからアトラは一つの結論に至る。
ーーまさか....スキル
気づくとエレナは目の前にいた。
ーーやばい!!
紙一重で回避ことが出来た。
「やっぱり躱すのね...」
少し落ち込んだようにも聞こえるエレナの声。
スキルを使用したことは身体への負担が大きく疲れ切ったエレナには堪えるものだった。
「もうやめよう。これ以上はエレナの身体がもたない」
「大丈夫よ、あと3回位なら耐えれるから」
そう言うとエレナの姿がまた消えた。2回目だけあって目が慣れた。攻撃の瞬間だけエレナが見える、その一瞬で防御する...難しいがやるしかないのだ。
エレナは連続で3回をを使用した、2回は回避できたが3回目を躱すことが出来ず攻撃を受けてしまった。
結果はエレナの勝ちだ。しかし、アトラも確実に力をつけてきている。
「今日はここまでにして宿に戻りましょ」
「やっと終わったか」
ようやくエレナは特訓を終了した。
宿に帰る中エレナがアトラに話しかけた。
「ねぇアトラ、どうして貴方の成長速度は異常なの?」
エレナの質問にアトラは普通に答えた。
「努力かな、毎日の努力の成果が今の僕を実力のすべてかな」
「...そう」
アトラの答えを聞いたエレナは少し落ち込んでいるように見えた。それから沈黙が続きながら2人は村に戻ってきた。
「あっ!いました。どこに行っていたんですか?」
話しかけてきたのはラティアだ。ラティアは宿に戻らずにアトラを探してくれたみたいだ。宿に1人で戻っていると思っていたが探してくれていた事を知って少し悪い気がした。
「ん?ちょと村はずれの大きな木を見てきたんだ。そこでエレナにあったんで一緒に村まで戻ってきたんだよ」
「そうだったんですか。ん?、2人とも汗だくではありませんか。もしかして試合してたんですか?」
「ちょとアトラに特訓を手伝ってもらってたの。お父さんには内緒にしといてね」
エレナがそう言ったが...
「そうなんですか?ですが......でも、後ろにいますよ。レイトさん」
「「えっ?!」」
ラティアの発言にアトラとエレナが後ろに振り返る。
「ハァ、2人とも休息も必要なことだぞ。エレナは大方、俺にバレずにこっそり強くなろうとしたんだろ」
ーーバレてる
ーーバレてる
エレナの考えを一瞬で悟ったレイトさん。
「まっ、いいか。兎に角宿に戻ろう。腹減ったしな」
宿に帰る4人。ラティアとエレナが先頭を歩きその後ろにアトラとレイトさんが歩いていた。
「あの〜レイトさん。聞きたい事があるんですけど...」
「ん?なんだ」
「さっき、エレナと試合をしてだですけど途中でエレナの姿が追えなくなったんです。アレってどんなスキルなんですか?」
アトラはエレナが特訓したいな事がバレたので試合していた事も話した。
「あぁそれか。それは【縮地】って言うスキルだな」
「縮地?」
「あぁそうだ。簡単に言えば、相手との距離を一瞬で詰める技だ」
「なるほど、だから目で追えなかったですね。お陰でスッキリしました」
スキルの正体がわかりスッキリした表情であるシルギ。
4人はその後、夕食を食べ各自の部屋で休んだ。
* * * *《レイトside》
夕食を食べ各自の部屋で休んでいる夜。
レイトさんは宿帰る最中にアトラが言っていた事を思い出していた。
それはエレナと試合していた事だ。だが、それだけでは驚く事はなかった。
スキルを使用してアトラと戦っていた。その事に驚いていたのだ。
ーーエレナのやつスキルまで使って試合してたのかよ。あいつがスキルを使えば冒険者ランクBと同等のだぞ。
冒険者ランクBは中堅レベルだ。エレナは11歳にしてそこまでの実力をしている。親バカな考えをしなくても分かる。エレナは子供とは思えない程に強い。
ーーエレナにスキルを使用させるまでにアトラが強い?いや、ありえない。いくらなんでも成長速度が早すぎる。でも、【縮地】はエレナ自身にも負担がかかるスキルだ。本人も無駄撃ちはしないはずだ。それを使わせた事実。............あいつ、もしかして先天性特異能力者かもな、流石に恩恵者ではないと思うが...
レイトさんはアトラに興味を持ちながらその日は寝たのだ。