4人での食事
現在4人はご飯を食べながら話をしていた。
「俺は、レイト=ウォンバットってんだ。で、こいつがエレナ=ウォンバットって言って俺の娘だ。ところで、坊主達の家はこの近くなのか」
レイトはルトとラティアの服装を見て言ったのだろう。ルトとラティアの服装は市民街の住民にしては品質の良い生地を使っていることから疑問を持ったのだ。
「えっと、あまり言いたくない話なので....すみません」
「そうか、いやこっちの方こそすまない。...ん?その黒い箱はなんだ」
レイトはルトの食器の横に置いてある黒い箱を指さし言った。
「これですか?よくわからないのですが、僕の物らしいです」
「もしかして、【禁断の箱】じゃないか」
「「【禁断の箱】」」
ルトだけでなくラティアも聞き返した。
「あぁそうだ。まぁこれは本物ではなく、それに似た下位互換の偽物だがな。これは所有者にしか開けられない仕組みの箱だ。血で開いたりするぞ」
レイトさんの簡単な説明を聞いたルトは昨日針で刺した傷口を少し噛み傷口を開き血を一滴垂らした。
箱に血が垂れると箱がガタンと揺れて箱が崩れた。崩れた箱の中から出てきたのはリングと手紙だ。
リングには紐が通してあり首でかけれる様になっていた。
「お兄様、それって手紙ですか?」
「そうみたいだね」
ルトとラティアが手紙を読もうと手紙を覗くと、それを見たエレナも多少は興味を持ったのかルト達と一緒に手紙を覗こうとした。しかし.....
「エレナ、お前は読むなよ」
レイトさんがエレナを呼び止めた。
「どうしてですか?。私も禁断の箱に入っていた手紙に興味があります」
「いいかエレナ。禁断の箱に入れている物ってのは、普通は秘密などのが入っていてだな、誰でも見れないようにする為、特定の人物にしか開かない仕組みになっているんだ。だから、見るな」
レイトさんが説得しエレナは渋々引き下がった。
一方で手紙を読んでいたルトとラティア。
手紙には女性が書いたであろう綺麗な字でこう書かれていた。
『我が息子、アトラ=エンフィールドをギルド【アトランティス】まで連れて行って下さい』
と書かれていた。この手紙を読んで深い息をはく2人...
その様子を見ていたレイトさんは2人に話しかける。
「それじゃあ俺達はそろそろ行くな。明日には隣のフィガルナ王国に向かうんでな準備しなくちゃいけない」
「フィガルナ王国って隣の国のですか?」
「あぁそうだな。そこに住んでるから帰るんだ」
「そ、それって...僕とラティアを連れて行くことも可能ですか?」
ルト......改めてアトラが聞いた。何故アトラがそんな事を聞いたかと言うと、手紙に書いてあったアトランティスの本部が隣の国のフィガルナ王国にあるからだ。アトラは自分の出生に少なからず興味がある。しかし、フィガルナまでは遠い為、折角レイトさんが行くならば一緒に行きたい。因みにこの国の名前はカルスナ王国である。
「いいぞ。旅は人数が多い程楽しいからな。それに、エレナと坊主の妹が意気投合しているみたいだしな」
そう言ってレイトさんはラティアとエレナを見た。
その後、エレナとラティアに事情を説明した。
「お父さん、私も賛成です。ラティアちゃんともっとお話しがしたいです」
「へぇ~嬢ちゃんはラティアって名前なのか。.......そう言えば坊主の名前を聞いていなかったな。坊主名前は?」
レイトさんは途中までラティアの方を見て、名前を聞く際にアトラの方を見た。
「ル...、いえ、アトラ=エンフィールドです」
「そうか、それじゃあアトラ、明日の6時に西門前に集合しよう」
そう言うと、レイトさんはアトラとラティアの分のお金も払ってかっこよく去って行った。
レイトさんとラティアの背中が見えなくなると、アトラとラティアの方を見て口を開いた。
「お兄様の本当のお名前は、アトラ=エンフィールドというのですね」
「そうみたいだね。でも今は、それよりも【アトランティス】に注目するべきだ」
ギルド【アトランティス】言えば誰でも分かる超有名ギルドだ。5大ギルドの一角とまで言われ【アトランティス】と同格のギルドは世界に4つしかない。(闇ギルドは除く)
毎年何千人の人がギルドに入ろうするのだが、良くて一桁後半...悪ければ0人なんて年もある....それほど凄いギルドなのだ。
「そうですね。レイトさん達がいれば安全にフィガルナにまで行けますし、何より【アトランティス】に入れなくてもフィガルナならカルスナよりも冒険者組合が盛んだとお父様が言ってました」
「そうなの?なら、フィガルナに行く選択は間違ってなかったね」
アトラがフィガルナに行くことのメリット
1【アトランティス】に入れるかもしれない。
2ダメでもフィガルナ王国の方が冒険者組合が盛んである。
3シルギは個人的にもうローウェル家と関わりたくないと思っているので、できるだけローウェル家から遠い場所を拠点にしたいと思っている。
そう、カルスナよりもフィガルナで暮らす方がアトラ的にはいい。しかし、国から国に移動する際は大変時間がかかり、魔物や盗賊に襲われる可能性もあるので諦めていた選択だった。しかし、大人のレイトさんと行けるなら安心できるのだ。
ーーあのエレナのお父さんだし凄いに決まってる
シルギは安全にフィガルナまで行けると確信していた。
* * * *
一方でレイトさんとエレナ...
「お父さんどうかしたの?さっきら難しそうな顔してるよ」
レイトさんはアトラとラティアと別れてか何か考え事をしている...
ーーあの2人服装も高価な物そうだったし食事の際も子供っぽくはあったが礼儀よく食べていた。貴族の家の子供どろう。でも..なら..なんで、子供だけでフィガルナに行こうとしているんだ?しかも、禁断の箱のレプリカまで持っていたし...
どうやらアトラとラティアのことが気になるらしい。レイトさんはシルギ達には言わなかったが禁断の箱とは古代の遺産。その中でも強力かつ数が少ない13神器の1つなのだ。オリジナルではないとはいえ、13神器のレプリカだ。価値は普通の古代の遺産に匹敵する。それ程希少な為、ザートスは禁断の箱をただの鉄くずだと思ったのだろう...
「お父さん!!」
エレナが少し力の入った声でレイトさんを呼んだ。
「...ん?どうしたエレナ急に叫んだりして」
「それは、何回呼んでも返事しないからでしょ」
「そうだったのか?悪い悪い...でなんだ」
「あそこのお店のアイス、おいしそうだから食べたい」
「ん?どれだ...げっ高いじゃねーか、却下だ」
すると、エレナは涙ををだし始めた。
「...無視したくせに」
小声でレイトさんが微かに聞こえる声でいった。
エレナの声は震えていた。
「よ...よし、あの店だな。何が食べたいんだ?全部か?店ごと買うか?お父さん破産しちゃうけど気にしなくてもいいぞ」
「いや、全部は食べれないよ...バニラのを一つでいいよ」
エレナの言葉を聞かずに走り出した親バカ。
「ハァ~...お父さんチョロすぎ」
気づくとエレナからもう涙がでていな。
レイトさんは、エレナに甘いのだ。