新しい朝
ルトとラティアが家を出て1時間後...
「お父様やっぱりいません」
カイが言った。
「やはり、ラティアはルトと一緒に行ったようだな。この置手紙通りというわけか」
そう言ったザートスの右手には手紙が握られていた。そこには『私もお兄様について行きます。お世話になりました』と短く書かれていた。
その手紙を読んでいたベイは「連れ戻しますか?」とザートスに聞いた。
「いや連れ戻す必要はない。あの落ちこぼれについて行ったのだ。ラティアのステータスも見込みはないだろう」
「そうですね。それに、お父様には俺とベイがいます。安心してください」
「あぁ、期待しているぞ」
こうしてローウェル家はその日の夜を過ごした。
* * * *
ルトとラティアは今市民街の宿にいる。因みにローウェル家は貴族街にある家だ。王城近くの貴族達が多く住んでいるところを貴族街と呼び、それよりも少し離れたところを市民街と呼ぶのだ。
宿でひと眠りしたラティアがルトに話しかけた。
「お兄様、これからどうされますか?」
「う~んそうだねぇ~...理想はギルドに所属したいけど..たぶん無理だから冒険者にでもなるしかないね」
この世界にはギルドと冒険者がいる。
ギルドとは様々な依頼を受けそれを仕事として生活しているものだ。また、ギルドと言っても沢山のギルドがる。例えば財宝等の情報をもとに財宝を探すギルドや、護衛を得意とするギルド、魔物等の盗伐を得意とするギルド...本当に沢山のギルドがある。
ギルドにはギルドマスターがおり基本的にギルドマスターの許可で入れるかどうか決まる。
冒険者とはギルドに所属せづ個人で依頼を受け仕事する人達の事だ。実力がなくてギルドに入れない人や自由を愛する人等が冒険者になっている。冒険者は冒険者組合で依頼を受けたり冒険者登録できたりし、ギルドに所属していても登録できるのだ。しかし、冒険者はF~SSまでのランクがありそのランク次第で受けれる依頼が変わってくるのだ。
「とりあえず、近くのギルドに行ってみてダメなら冒険者登録をしよう」
「はい、分かりました」
「よし、じゃあ行こう」
そう言ってルトとラティアは宿の階段を下りた。宿の階段を下りると宿の親父さんが「おい坊主、昨日はちゃんと眠れたか?」と優しく話しかけてくれた。
昨日ルトとラティアが真夜中を歩いていると、後ろから話しかけてきた。親父さんは夜に子供が出歩くのは危険だと言って一晩だけ無料で宿に泊めてくれたのだ。
「はい、昨日はありがとうございました」
「そうか、まっ何かあったら利用してくれよ」
宿の親父さんに挨拶をして、ルトとラティアは宿を後にした。
そして、2人は傭兵ギルドに来ていた。ギルドでの依頼は基本的に冒険者組合よりお金が高い。つまり、ギルドで稼ぐ方が儲かるのだ。その為、2人は冒険者組合に行く前にギルドに来ていたのだ。
しかし、ギルドに所属する事は出来なかった。当然だ、子供がいきなり働きたと言って雇うところ等あるわけがない。ましてや命の危険がある仕事...断られても仕方がない。
「お兄様、やはりダメでしたね」
「やっぱり冒険者組合に行こう。あそこなら年齢や経歴は問わないからね」
ギルドと違って冒険者組合は入ろうと思えば犯罪者以外なら誰でも入ることができる。しかし、怪我等の危険は自己責任だ。
2人が冒険者組合に向かおうとする。すると、後ろからルトとラティアを呼び止める声がした。
「おーい坊主、忘れものだぞ」
そう言って来たのは、朝宿を出るときに挨拶をした親父さんだ。走っていたせいか汗をかいており息も荒れている。
親父さんが手に持っていたものはルトがザートスにもらった謎の黒い金属の箱だ。
それを、ルトに渡すと「今度宿を出るときは忘れ物がないかチェックしてくれよ」と言って宿に帰って行った。
「お兄様その黒い箱は何ですか?」
ラティアが興味を示したのか、黒い箱を見ながらルトに質問した。
「これ....ん〜よく分からないんだけど、僕が捨ててあった所に一緒にあった物らしくて...」
ルトは自分のと一緒に捨ててあった事を説明している最中で、
「えっ!、ちょと待って下さいお兄様。お兄様と一緒に捨ててあった?意味がよく分からないんですが....」
「あっ、そう言えばラティアにはまだ言ってなかったね。まぁ、大した話でもないけど、簡単に言えば僕は捨て子だったんだ。要するに、ローウェル家の人間ではなかったんだ。最初からね」
ルトの発言に驚きを隠せない。ラティアは目を開き、口は開いていた。
「つまり.....私とお兄様は血の繋がった兄妹では、ないと言うことですか?」
「そうなるかな。それでね、その捨てられた僕と一緒に捨ててあった物がこの黒い金属の箱ってわけ」
ラティアは少なからず驚いていたが、すぐに切り替えルトの持っている黒い箱に注目する。
「で、お兄様。この箱は開けることはできないのですか?」
「ん~見たところ開けるところがないけど...何か入ってそうだね。まぁ、分からないことを考えても仕方ないし、それよりも冒険者組合に行こう」
ルトとラティアは黒い金属の箱の事を保留にし目的の冒険者組合に行こうとした。その時...
「嫌、放して」
「いいから来いよ。俺達が一緒に遊んでやるって言ってるんだぞ」
「ですから、頼んでません」
ルトとラティアの目線の先に子供たちが4人いた。どうやら子供のナンパのようだ。
男の子が3人いて1人の女の子をナンパしていた。
だが、確かに男の子達がナンパしたくなる気持ちもわかる。何故なら、ナンパされている女の子が美少女だからだ。茶髪でスタイル抜群のルトと同じくらいの女の子。将来はラティアと美貌対決できるレベルだ。
だが、これ以上しつこく誘うことはどうかと思う。男の子達はルトより少し年上そうに見える。(年齢的には13~15歳)
「おい、その子が困っているだ「しつこいです」.......えっ!?」
ルトが女の子を助けようと声をかけようとした瞬間...女の子の手刀で3人の男の子は一瞬で気絶させられていた。3人の男の子を気絶させると女の子はルトの方を見た。
「貴方も、そこの人達の仲間ですか?」
「ち..違います」
ーーヤバい...この子強すぎる
ルトはこれでも神童と呼ばれ多少実力には自信があった。将来はカイやベイに抜かれると思うが今はまだ自分の方が上だと思っている。そんなルトが一瞬で勝てないと思わせる程のことだった。驚くべき点は女の子はスキルでの手刀ではなく、洗礼された動きによる最低限度の動きで男の子達を無力化させたのだ。もし、自身の速度を上げるようなスキルを持っていたり、将来、獲得したりしたらと思うと恐ろしいばかりだ。
「お~~い、エレナここにいたのか?」
「あっ、お父さん...用事はもう終わったの?」
どうやら女の子の父親のようだ。
「あぁ、終わったぞ。それでエレナ...この伸びている子達は、またお前がやったのか?」
「まぁ、そうですけど...でも、私は悪くありません」
どうやら、日常的にこういった事があるらしい。すると、女の子の父親がルトとラティアを見ながらこう言った。
「で、まさにこの子達も気絶させようとしたわけか...」
「ち、違います。決めつけないで」
「じゃ、この人達は何?」
この人達とはルトとラティアの事だ。
ーーどう言えばいいのかなぁ~
ルトがそんな事を思っていると横にいたラティアが言った。
「お兄様は、貴方を助けようとしていました」
「そうなの?それは、ありがと」
素っ気ない女の子に対して、その女の子の父親は...
「おぉーー、そうなのか。娘を助けようとしてくれたのなら、どうだ一緒に昼食を食べないか?」
できるだけお金を節約したいルトとラティアは、迷わず...
「では、お言葉に甘えて」
こうして4人は昼食を一緒に食べることになったのだ。
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