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世界最強は元落ちこぼれ  作者: かたは
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運命

ルトが判定の儀を受けて15分がたった。現在ルトは父ザートスと共に自宅に帰る為、馬車で移動中だ。その間もルトは、さっきの父ザートスと司教様の驚いた顔を忘れられない。

あの時の2人の顔は、信じられなという顔とかなりのショックだ...と言う顔の混じった顔のようにルトには見えていた。


「お父様、先ほどの判定の儀で、僕は何かおかしなことをしましたか?」


ルトはどうしても気になったのかザートスに先ほどのステータスプレートを見た際の反応についてきいた。しかし、ザートスは答えてはくれなかった。自分が、無視されたという現実がルトに不安感を与える。


ーー明らかに、お父様は、イラだっている。僕、そんなに言われた通りに動いただけなんだけどなぁ~


ルトにとっては、何故父がイラだっているのか、そして何故自分を無視されたのかわからない。そんな、不安なルトの心を表すように空が雲で覆われ、天候が怪しくなってきた。


そして、雨が降る前になんとか自宅にたどり着き、夕食までの間を部屋で過ごすルト。すると...


トントンとノックをしてルトが返事をする前に入ってきたのは...ラティア.....だけではなく、カイとベイもいた。


ルトの部屋に入ると同時にカイがルトに聞いた。


「おい、お前のステータスどうなんだ」


カイの声は少し震えていた。当然だ、今までもルトの凄さはカイは知っている。悔しいが自分より才能は上だということも分かっていた。しかし、今まで、ルトにステータスプレートがなかった為、明確な差が分からなかった。しかし、今日からは違うのだ。明確な差が分かってしまう。ステータスのの結果次第ではローウェル家の次期当主が決定してしまうかもしれない。

そのことが、カイはとても怖いのだ。



「僕のステータス?見るなら、そこの机の上に置いてあるから、勝手に見ていいよ」


ルトはそう言いながら机を指さす。そこには、1枚のプレートが置いてあり、カイ、ベイ、ラティアの3人は机の方に歩き出し。机の前まで来て、ステータスプレートを手にとる。


「「なぁっ!!」」


驚きの声と共にカイとベイはプレートを凝視する。ラティアはプレートが見たことがないので、あまり驚いていない。むしろ、カイとベイの驚いた声に驚いていた。


しかし、数秒もするとカイとベイがニヤけだし、やげて笑い始めた。なにが、可笑しいのか理解できないルトとラティア。


その様子に気づいたカイがルトに説明を始めた。


「おいルト、俺とベイが何故笑っているか、理解できないだろう」


正直に言ってカイとベイのルトのプレートを見た途端、笑い出した失礼さに腹立たしさを感じたが..


ーーもしかして、お父様がイラだって理由と2人が笑う理由..一緒かもしれない。


そう思い、カイとベイの失礼な態度に我慢しながらルトは2人に笑っている理由を聞いた。


「兄さん達は、なんで僕のステータスを見て笑ったの?」


ルトがそう言うとカイは黙ってルトに自分のステータスプレートを見せた。



カイ=ローウェル

性別:男性  年齢:11歳  状態:興奮状態

称号:なし

スキル:【嫉妬の反撃】(自身が嫉妬している相手に対して攻撃力上げる。最大2倍)

魔法:【火球】(無詠唱) 【そよ風】(無詠唱)


神の恩恵(ゼクス):なし


「えっ?!」

カイのステータスプレートをルトは驚いた。魔法がステータスプレートに表示されている。つまり、プレートに表示される程の一定の魔法を使用できることを表している。


ステータスの魔法欄に魔法が表示されなくとも、魔法は使用でいる。しかし、戦闘や研究等の高火力や高難度の魔法を必要とした場合、どうしてもステータスでの表示が必要となってくる。何故なら、ステータスで表示されていな魔法はステータスで表示されている魔法と比べ、威力が4割ほど落ちる事が判明しているからである。


そして何より重要なことは、10歳までの間にスキル又は魔法を一つも覚えていない者は何故かスキルや魔法を覚えにく傾向がある。つまり、スキルと魔法を一つも覚えていないルトは今後も、スキルや魔法を覚えにくいのだ。


ルトがカイのステータスに驚いていると、その様子を嬉しそうに見るカイ。


「どうだ、これが俺のステータスだ。お前のステータスとは、比べ物にならないだろ」


カイが嬉しそうに話している事に腹立たしさを感じるルト...しかしそれ以上にルトは不安だった。理由は簡単だ。父ザートスの苛立ってた原因が判明したからだ。そうルトのステータスの悪さだ。



この世界(イシュタント)はステータスで全てが決まると言っても過言ではない世界。騎士や魔法師等の誰もが憧れる職業は必ず良いステータスを持っている。逆に言えば、悪いステータスだと農民等の職にしかつけない。


これからの事に不安を感じていると、ベイがラティアの方を見て言った。

「ラティア、そいつは落ちこぼれだ。つまりローウェル家の恥さらしだ。分かったらこっちのほうへ来い」


ベイが喋ることは珍しい。いつも、カイが喋る為あまり喋らないベイ...そのことにルトは驚いていた。


「嫌だ」

ラティアは、もの凄く不快そうな顔をしてベイに言った。


カイとベイは驚いていた。自分達の予想ではラティアはルトを見限り、自分達の方へ来ると思っていたからだ。しかし、ラティアの反応は違ったのだ。


「まぁ、いい。今日は気分がいいからな。そろそろ、夕食の時間だ。行くぞベイ」


ラティアの返事にカイは特にショックを受けることもなく、ベイを連れてルトの部屋から出て行った。


「お兄様、私たちも夕食に行きましょう」


そう言って、落ち込んでいたルトの手を引っ張って夕食に向かった2人。


夕食途中も少し苛立っている父ザートス。

一方で嬉しそうに食事しているカイとベイ。

また、心配そうな顔をして食事しているラティア。


それぞれが、違う表情をしている中で自分の顔はどんな表情をしているのだろう。少なくとも良い表情ではないはずだ。


静かな夕食をしているとザートスがルトに話しかけてきた。

「ルト。わかっているな夕食後、私の書斎にきなさい」


「...はい」


既に元気を失っているルト。何を言われるか分からないが、いい話ではないことは予想ができる。


そして、その様子を見て嬉しそうな表情をするカイとベイに怒りを覚える。


ーーなんで、兄さんたちは嬉しそうなんだよ。僕がこんなにも困っているのに...


もう、カイとベイとは仲良くできる気がしない。そんな事を思いながら食事を済ませたルト。

ザートスはルトよりも早く食事を済ませており先に書斎に行っていた。

そして、ルトも書斎に向かった。ラティアも食事を済ませ自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いている時、後ろからベイに呼び止められた。


「おい、ラティア.....おい」


ベイに呼び止められたが、一度目を無視したラティア。しかし、少し声を荒げ強く呼び止められたので後ろ振り向きベイの方を見る。


「何か用ですか?ベイ兄さん」

ラティアの声は冷たく表情は少し苛立っているものだった。


「お前、いつまでルトと一緒にいるつもりだ。あいつはもう神童じゃないんだぞ。落ちこぼれだ」


「はぁ~そんな事、兄さんには関係ないでしょ」


「俺はお前の事を心配して言ってるんだぞ。あいつの将来を考えると最悪の場合は追放なんだぞ」


「...えっ」

ーー追放?それって、お兄様が家にいれなくなるってこと...


ラティアの顔色がどんどん悪くなっている。その様子を見てベイはさらに話を進める。


「まだ決まった話じゃない。でも、俺の予想だとほぼ100%そうなる。だってそうだろ、ここはローウェル家だ、普通の家なら兎も角魔法の名家がスキルと魔法...その両方がステータスに表示されていない奴を家にいるなんて世間に知れたらお父様は赤っ恥だ。しかも、ルトは神童とよばれ世間から注目されている噂はさらに広がる。そんな事はお父様は絶対に許さないはずだ」


言われて初めて気づいた。確かにベイの言ってる通りだ。ザートスがルトをローウェル家置いておくにはリスクが高い、しかし....


「今は、スキルや魔法を習得していなくても、それは将来も習得できない理由にはならない。お兄様程の才能があればすぐに何らかのスキル又は魔法を習得なさるはずです」


「確かに、ルト程の才能があれば不可能じゃないだろう。だけどな、ラティア...お前は判定の儀を受けてなく知らないかもしれないが、10歳までの間にスキル又は魔法をステータスに表示されていない者は今後も習得されにくいとされているんだ。つまり、ルトも習得する事はかなり大変なはずだ。お父様は当然そのことを知っている。言いたいこと分かるだろ」


現実をラティアに突きつけるようにベイはラティアに言った。


「そんな...」

ラティアはかなりショックを受けている。泣きそうな顔だ。


「兎に角、ルトとは関わるな」

そう言ってベイは自分の部屋に向かった。




*  *  *  *

ルトは現在ザートスの書斎の部屋の前にいる。食事を済ませてやってきたのだ。


トントン部屋の扉を二回ノックする。

「入れ」

部屋の中からザートスの声が聞こえた。入れと言われたので書斎に入るルト。


「ルト...お前には期待していた。だが、なんだ今日の判定の儀の結果は」

部屋に入るとザートスが怒鳴りながら言ってきた。


「すみませんお父様。ですが、これからも努力しますので、今回はお許しください」

今のルトには謝ることしかできな。カイのステータスを見て自分のステータスが悪いことは分かっていた。今まで神童と言われてきた自分がザートスにここまで怒られるのは初めてだ。



心が締め付けられるように痛い...


何も考えられない...


こんな気持ち早く過ぎ去って欲しい...


なんで自分がこんな目に...


ザートスに怒鳴られ数秒しか経っていないがルトにとっては数時間に感じられた。

ザートスの顔を見ることができないルト...今のルトにできることは、ただザートスに謝るだけだ。


「もういい...残念だが今日をもってお前を追放する」


......唐突すぎることだった。


「待って下さい、お父様」


「黙れ。私を父と呼ぶな...それに元からお前は私の子ではない」


衝撃的な一言だった。

「えっ...どう言うことですか?」

ルトはつい聞き返してしまった。


「あぁ、まぁ教えてやってもいいだろう。簡単な話だ、お前は私の繋がった息子ではなく養子なのだ。家の前にお前が捨ててあり、それを私が育ててやったのだ。優秀なだった為に家に置いてやったのだ。だが、今日の判定の儀でお前を追放する事にした..この家では結果が全てだ。分かったら早く荷物をまとめて出て行け」


そう言われ、もう何を言ってもザートスは考えを変えないことに察しがついたルトは荷物をまとめるため部屋に戻ろうとした。


「あぁ...それとコレをお前にやる」

そう言ってザートスは黒い箱をルトに投げた。


「それは、お前と一緒に捨ててあったものだ。何かの金属でできている。売ろうとしたが材質が分からなかった為、高値売れず、ずっと持っていたものだ。ただの箱などいらん。お前にやる」


黒い金属の箱を渡され部屋に戻ったルト...


泣きたい..しかし泣いたところで解決はしない。もうこの家に自分の居場所はないのだと確信し荷物をまとめる。


真夜中に荷物を持って部屋を後にする。月明りを頼りに家を出ようとしたのだ。


ーーラティア...部屋暗いな。もう寝たのかな...最後まで優しかったなぁ~元気でね


ルトは家の庭からラティアの部屋の明かりが消えており、そのことから寝ていると推測した。


家の門の前まで歩きルトは一つの人影を見つける。


「お兄様...行かれるのですね」

その人影の正体はラティアだった。


「どうして、僕が家を出ることが分かったんだい」


「ベイ兄さんが言ってました。お兄様が最悪の場合追放になると...お兄様の性格からして追放になった場合、真夜中に家をこっそり出ると思いまして待っていました」


「そうかい、じゃあ元気でね。僕はもう行くよ」

長く話すと別れが辛くなる。なるべく早く去ろうとしたルト。






「.......私も行きます」


「えっ!何いってるの?」


「言葉のままです。お兄様がいないのならこの家にいる理由はありません」



ラティアの今まで見たこともない真剣な表情でルトに言った。



「いいのかい?人生をダメにするかもしれない選択だ。後戻りもできない。一生後悔するかもしれない。これからの人生で安定した幸せを送りたいのなら、この家にいる方がずっといいよ」


「お兄様のように頭の良くない私には、今1番いいと思う選択をその場その場でするだけです。そして今回はお兄様と共に歩む道を選びました」


一瞬も迷わずに言ってくれたラティアを見て泣きそうな顔になるルト


「それじゃあ行こうか」



「...はい」


こうしてルトとラティアはローウェル家を後にした...





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