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第6話 告白

「あのさ……再会したばかりで、こんな事を言うのも、なんだけど……」


 手を握ったまま、ゴードンは少女のユウを見る。


 まつげが長い……大きな瞳は吸い込まれそうだ。

 ユウは長い髪をさらりと肩に落として、少し首を傾げてゴードンを見る。


「俺はユウが好きだ。ユウは……俺をどう思ってる?」

「親友だよ?」


「好き? ……嫌い?」

「嫌いな訳ないよ、親友だもん。好きだよ」


 ……どうも論点がズレている気がしてならない。


「……今、ユウは女の子だよね。女の子のユウは、男の俺を、……好き?」


 真剣な表情で、まっすぐにみつめるゴードン……ユウもみつめ返す。

 瞬きだけがふたりを遮る……それさえも、もどかしい程に愛おしい……。


 両手で温められたユウの手に、ユウは視線を落とす。

 ゴードンの手から想いが伝わってくるようだ。

 ……接触テレパシー……

 判りやすいゴードンの表面意識は以前と変わらない。

 能力なんて使わなくても判る。


 少女のユウは穏やかに微笑んで、ゴードンの瞳を見て、答える。



「うん」



 本当に判っているんだろうか……心配になり、ゴードンは言葉を続ける。


「俺と……結婚してくれる?」

「……今?」


「……え? う、うん……」


 即答で返ってきた。

 つい、確実な答えが欲しくて言ってしまった。


 ”転生”前――

 男の子だったユウは、想い人のレイカと”結婚式ごっこ”をしている。

 同じ八歳だ、それと似たような事で良い。


 いや、むしろそんな形式は要らない。

 今ここでユウの気持ちさえ、はっきりと判ればそれで良い。


 ”女の子”としての自覚が、ユウにあるのか、ないのか……。

 その”女の子”として……ゴードンを受け止める気持ちが、あるのか、ないのか……。


 ユウは少し考えるように、空をみつめる。

 そしてゴードンをまた軽く覗き込むように、首を傾げて聞く。


「どうすれば良い……?」


 さらさら……と、長い髪がベッドの上の布に柔らかな曲線を描く。

 もう、それだけでゴードンは心臓が爆発しそうな勢いで早鐘を打った。


 抱き締めたい……ぎゅうっと抱きしめたい……!

 もうどこにも行かない位に、自分だけのポケットに大事に大事にしまっておきたい……!!


 でも、今大事なのは、ユウの気持ちなんだ。

 ほんの少し前まで、男の子として生きていたんだ……。


 それが急に女の子として、男のゴードンを好きかと言われても戸惑うのは当たり前だ。

 しかもプロポーズまでしている。

 それを受けるという事は、つまり、その先にあるのは……。


「今、ここで子作りするの? 流石に無理だよ? 八歳だよ……?」


 ゴードンのみやすい表面意識は、ばっちり少女のユウにバレていた。

 ちょっとエロティックな想像をしてしまった……告白から飛び過ぎだ。


「ご……ご……ごめん……」

「…………」


 無言で、みつめ続けるユウ……。


 うう、こうなると責められているように感じる。

 ……気のせいかもしれないが……。


 この無言の圧力は、心にやましいことがあると自爆必至だ。

 心がピュアなら、どんなに長い時間みつめ続けても、言葉が無くても、心地良いだけなのに……。


「ゴードンは不安なの……? どうしたら良い……?」


 ユウの言葉に、ハッとなる。


 ……ユウは理解している。

 ゴードンの伝えたい言葉に……ゴードンの求めているものに。

 理解して尚、受け入れて……そして、そのゴードンを安心させようとしている。


 嬉しくて、堪らない。

 ……これ以上、何を求めるというのだろう……。

 エロティックな想像までしてしまったというのに。

 ……それも受け入れてくれるつもりなのか。


「……ぎゅっとして、良い……?」

「いいよ」


 即答で返って来る。もう疑う余地なんかない。

 ゴードンは思いの丈を込めて、少女のユウを抱き締めた。


 男の子のユウは、一度だけ生きている時に抱き締めた事がある――……。

 あの時は、辛く悲しい思いでいっぱいだった。

 何を言ったらいいか判らなくて、ただ、抱き締めた。


 今は……違う。

 言いたい事がいっぱいある。伝えたい気持ちがいっぱいある。

 溢れるほどの気持ちで少女のユウを抱き締める。


 温かく柔らかい……。

 生きている温もりと、少女の柔らかさがゴードンの想いに応える。


「もう絶対に離さない……二度とあんな思いはごめんだ。ユウは俺が守る」



 ”異世界転生”……謎の言葉を、ユウは思い出す。

 もしかするとゴードンはここへ来るときに、今迄なかった何か凄い特典を貰って来たのかもしれない。


 ユウも要らないと言ったのに、今迄の三倍の能力値だ。

 この平和な世界で、一体何に使えと言うのだろう。

 全開にしたら、この美しい世界を破滅させてしまいそうだ。







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