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第4話 滅亡の果て

「僕も、リーダーも女性なのに、ゴードンはどうしてゴードンなの」

「さあ……? なんか似合わないからとか呟いていたよ?」

「俺は面白いからとか言ってたぞ、あの【声】ふざけているのか!」


「僕も全然言う事、聞いてくれなかったよ……。というか……」


 聞きたい事は、山程ある。

 どうしてここに二人がいるのか、どうして――


 ユウは言葉なく、じっとリーダーをみつめ続ける。

 この癖は変わらない……男であろうとも、女であろうとも、ユウである事に変わりはない。


「答えてやる。この街にいれば、いずれ近い内にお前から姿を現すと思っていた」

「”魔女”って僕の事だって知っていたんだよね? どうして会いに来ないの?」

「俺らに探査能力はない」


 確かに、湖近くの森に住んでいる事だけは噂になっていたが、村人や街の人が訪れた試しはない。

 小さなコテージだったが、常時、防御結界を張り巡らせているので、通常の人の目には触れにくい。


 挙句、結界性を高めてあるので――

 ユウのコテージは異空間の如くとなっており、余程の感知能力者でなければ、みつける事すら出来なかった。


 そんな危機対策をしてある事も忘れて、質問をしてしまった。


 むしろリーダーとゴードンには、元々探査能力は備わっていない。

 ユウがいる事が判っても、探し出すことは困難だったのだろう。


「もうひとつ……聞いていい……?」

「そっちはお前が思っている通りだ。死んで、ここにいる」


 やっぱり……。

 でも、そうなると気になるのは……。


「俺が死んでいる事が、お前には不可解だろう。当然だ、戦闘で死んだ訳じゃない」

「……違うの?」

「星が滅亡した」


 思い掛けない言葉が返って来る。


 と、いう事は――

 あの世界の全員が死んだって事じゃないのか……!?


「お前が死んだ後……、観測し始めた。どうにもならなかった」

「他のみんなも……こっちに?」

「知らん」


 リーダーでは、これ以上は判らない。


 唯一”転生”前と同じ姿を保っているゴードンへ、ユウは目を配らせた。

 事によったら、何かを知っているのでは……。


「判らない……いっぱいいたし、一人一人、丁寧に対応しているって訳でもなかったみたいだし……」


 あの自称”神様”だ、かなりいい加減に対応していても、おかしくはなかった。


 それでも――


 ユウは、とても嬉しそうに微笑む……。

 この優しい微笑みも、以前と変わらないユウの微笑み方だ。


 確かに、ここは理想郷だ……。

 だけど下手に前身の記憶まで有していて、生前の年齢からスタートでは、馴染める訳がない。


 挙句、ユウはいつの間にか”魔女”……だ。

 人との交流も、絶望的だった。

 そこに気心知れた二人が現れたのだ……嬉しいに決まっている。


 眩しいまでの愛らしい笑顔を見せる少女のユウに、ゴードンは鼓動を早める。


 頬も熱い……。

 こんなに可愛いユウを、放っておける訳がない。

 しかも今は、男と、女だ。


「何か目的があって街へ来たんじゃないのか。あんな男に襲われやがって……油断し過ぎだ」

「うん……布地が欲しくて……。でも、良いよ。繊維から作ってみる」


 それも面白いだろう――

 そんな気長なユウに対して、リーダーは冷ややかな瞳をして言った。


「これで足りるか」


 どこから手に入れて来たのだろう。

 ……いや、もう何も言うまい。


 リーダーの能力が、そのまま受け継がれているのなら――

 この瞬時に現れたリーダーの後ろにある大量の布地は、瞬間移動の要領で見える範囲、もしくはリーダーが直接見た範囲から掻き集められてきたと判断するのが妥当だろう。


 この能力はリーダーが元から有しているものだ。疑いようがない。


 既に一人殺しているし、すぐにこの噂は広まるだろう。

 せめてこの世界では、慎ましく平和に生きていこうと思っていたのだが……。


「ここは食いでがある。気に入った」


 不意に呟いたリーダーの台詞を聞いて、ユウは疑わしい目を向ける。


 もしや……。

 先程”魔女”ユウのせいにされていた、あの噂は……。


「俺が食った」


 ユウの思考をみ取り、リーダーは一人で勝手に答える。


 一晩で家畜が全滅しただの、畑も全滅、近くの川の魚も全滅……。

 どれだけ食い散らかしたのか、もう判らなかった。

 この美女の姿で……!?


「とりあえず、お前の拠点へ行こうじゃないか。俺らに家はない」


 すっかりユウのコテージへ厄介になる気、満々のリーダーがいた。


 生前の能力を有しているのなら、リーダーにだって簡単に拠点は作れるだろうに……。


 今迄、何をしていたのだろうか。

 食い散らかしていただけだろうか……。


 少女のユウの背に手を当て、もう片方の手でユウの手を握って、大事そうに支えるゴードンへ目を配らせる。


「いつ、来たの……?」

「何日か前かな……一週間はしてないよ。それよりも大丈夫?」


 まだ立てる程の力は回復していなかったが、コテージへ戻るだけなら瞬間移動で問題ない。

 優しい言葉をかけるゴードンに、ユウは微笑みで返す。



 少女のユウの笑顔に――

 ゴードンは、どきっとした。


 ……やっぱり可愛い……胸がときめく……。

 長い髪が、女の子らしさを引き立たせる。


 どうにも止まらない気持ちが、ゴードンの中に溢れて来る……。


 ――涙が出る程、会いたかったユウに……また、会えた――

 二度と会えないと思っていた、ユウに…………。







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