第13話 超能力VS魔法
突然、ユウが振り向いた。
そして光のエネルギー弾を瞬時に作り出し、迎撃する。
何が起きたのか判らない程に、ゴードンの背後で爆発音が聞こえた。
「ッハ! 流石、湖面の魔女……不意打ちでは殺されてくれないか!」
ゴードンが振り向くと、鎧を纏った赤髪の大人の男が立っていた。
男の周囲には手のひら大の炎が、いくつも浮かんでいる。
ユウへ振り向く。
少女のユウは、戦闘モードのように……無情の顔を見せ、冷たい瞳をしていた。
――殺戮者の目だ――
既に”防御結界”は張ってある。
ユウのコテージを出る前に、ユウとゴードン二人分を、ユウは担っていた。
外出時は、必ず”防御結界”を張る。
”転生”前から続いている、自己防衛術だ。
ユウの防御結界は、強力だ。
己の最大出力攻撃すら通さない。
この男の実力がどれ程のものか判らないが、ユウの防御結界を破り、攻撃を通す事は、至難の業だ。
「……なにか、用?」
「幼気な少女の姿で惑わす悪魔よ……我が炎に焼かれて、朽ちるが良い!」
鎧を着た赤髪の男は自信に満ちた表情で、男の周囲に浮かべた炎の球を、高速でユウへと向かわせた。
すかさず光のエネルギー弾が撃ち落とす。
威力を相殺するかのように、空中で小さな爆発音を起こして、消滅した。
「やはり、こんなものではダメか……ならば!」
男は、何かの詠唱を始めた。
目を閉じ、手を仰ぐように空へ向けて、聞いた事がない言葉を……流れる言霊へ変えていく。
「ゴードン、殴って良いよ」
「……え」
「思いっきり、あの人を」
男は詠唱に夢中で、こちらで会話をしていても、目を閉じたまま手を空へ仰いで動かない。
ゴードンは駆け寄って行って、思い切り顎を下から殴りつけた。
子供のゴードンに殴られたのに、有り得ないほど男は空中へ飛んで行った。
そして、落ちていく。
見兼ねたユウが、念動力で地面への直撃を避けて受け止める。
――男は、気絶していた……。
「ゴードン、今の……」
「念動力を拳に乗せてみた」
道理で、威力抜群だ。
相手は防御結界もない、生身の人間。
不思議な術を使うとはいえ、発動までに時間が掛かり、隙だらけだ。
「油断したな……湖面の魔女! 上だ!!」
いつの間にか赤髪の男が、もう一人いた。
いや、最初から二人いたのだ……一人は、隠れて。
上空を見ると、ユウの真上に大きな炎の球が出来ていた。
二人掛かりで作り出す、強化版のようだ。
「知っている」
ユウは強化版の炎の球を、防御結界で包み、縮小していく。
結界の中で燃え盛る炎――
どんどんと幅を狭めていき、結界内で大爆発を起こした。
しかし結界はビクともせず、縮小を早め、小さな炎の残りカスを見せて消えていった。
「ば……馬鹿な!!」
「バカはどっちだ」
光のエネルギー弾が、男を襲う。
しかし、威力は極端に弱いのか……
打撃のように数発、頭をヒットして、男は仰け反りそのまま、ぱたっと倒れ気絶してしまった。
「あんなの、こんな町中で落としたら大惨事じゃないか……もっと考えてよ……」
ユウは襲われた事ではなく、攻撃方法について不満を漏らしていた。
徹底的に平和主義だ……。
危機対応も早く、意識のあるユウを倒すことは、なかなか難しい。
人が集まってくる。
衛兵のような者達もやって来た。
鎧を着た者、ローブを着た者……どうやら攻撃手が集まって来てしまったようだ。
――囲まれた。
槍を突き立て、剣を構え……
ローブを着た者達は、詠唱を始めた。
ゴードンはユウの前に立ち、守るように手を広げる。
「帰ろっか」
周囲の緊張などお構いなく、ユウはゴードンの後ろから笑顔を見せて、ゴードンの手を取る。
直後に、ふたりの姿はその場から掻き消された。
「き……消えた……!」
「なんて恐ろしい……湖面の魔女……!」
湖面というか、森の中に住んでいるのだが。
結界性が高い防御結界のせいで、ユウのコテージを見つける事は殆ど不可能だ。
この者達がユウを殺そうと、湖や森に入って来ても、みつけられない内に逆にユウに発見され、瞬間移動で戻されるのが関の山だ。
「リーダー置いて来ちゃったけど、良いの!?」
「さっきテレパシーで連絡しておいたから、勝手に帰ってくるよ」
リーダーも瞬間移動が使える。
特に問題がない。
夕飯時になったら、帰って来た。
残りの野菜や果物を売っただけでは手に入らないような、大量の食糧を抱えて。
「男共が貢いで来た」
態度悪く、ただ座っているだけなのに。
美女とは、そういうものだと言わんばかりに、町の男の崇拝を受けていた。
リーダーが居れば、ユウは襲われなかったかもしれないとさえ、思った……。




