今は語り継がれぬ幼児泣かせの一寸法師のお話
ぼくの名前は工藤和初期のあだ名は名前の頭と最後を取って『クズ』だよ!
当初のぼくはなにも知らない健気な子だったから悪口だと気付かずに一時期の一人称は『クズ』だったんだ!
あはは!哀れなことこの上無しだね!
高校に入学してからのあだ名は『一寸法師』。ようやくまともなあだ名ができたなと思い発症元である幼なじみに由来を聞きました。
「ああ。一寸先の未来への道は真っ暗。一寸もの希望の光もないから一寸法師だよ?」
それを真顔で言われたときの絶望感は、後に沈む日本海よりも深く、小学校にあった登り棒よりも高かったです。
しかもそのあだ名の理由をぼくの母親の目の前で言うのだもの。
コイツのメンタルはまさにダイアモンド級ぅ!
まあそこで気まずい雰囲気になれば良かったんですけどね…
もううちの母親といったらもう!大爆笑ですよ?
タンバリン叩いてましたよ⁉我が息子をけなされてでも!
それ以来、親公認でのあだ名『一寸法師』は全校に広まった。
すれ違う度に「よう雑魚ぉ!」とか「元気で…頑張れよ!」とか
からかわれまくり煽られまくりですよ。
そして日は経ち決戦の日、期末テストの返却日がやってくる。
全教科三点!!煽られコースまっしぐらだぜ!
どうせ「さすが一寸法師!三点かよぉ⤴」とか煽られるんだろうなあ。
しかしその時間は誰もぼくを煽りませんでした。ぼくが不思議がって教卓を見ると、担任が号泣していたのです。何事かと誰もが思ったのでしょう。ある生徒が聞いてしまいました。
「せんせーい!なんで泣いてるんですか?故郷が恋しくなったんですか?」
「ああ。そうかもしれない…工藤…お前はどうしようもないやつだよ…お前は留年確定だ…」
恐らく先生はぼくがどうしようもない生徒だから、哀れんで泣いてくれたのでしょう。ぼくの心がポキリと折れかかってしまいます。
そのテストを帰って母親に見せると浅くため息をつかれ、鼻紙へと進化を成し遂げます。ぼくの三点のテストが初めて人の役に立ったのです。
そしてその夜、ついにこの時がやって来ます。
ぼくは石の入った袋に詰め込まれ、川にドンブラコされてしまいます。危機感を抱いたときにはもう遅い。時より息をすることができましたが遂に、日本海へと向かってしまったのです。
そして気づけば、今現在、大きなお椀に入れられ川を流れています。ぼくの隣には一本の長い針。これで鬼でも倒すのでしょうか。
ぼくはいよいよ、本物の一寸法師になるそうです。
しばらく流され、陸地についたのは夕方。
痛む腰を支えお椀を降ります。まあバランス崩して顔から池に再びダイビングしたんですけどね。
そんな光景を端から見ていたのでしょうか?ある少女がこちらをみて、クスクスと笑っています。彼女の右手には赤い滴がたらたらと落ちていきます。ぼくもあの刀の錆びになるのでしょうか。
「あら、健気な子ね。一寸法師ごっこでもやているのかしら?」
殺される…その狂気に満ちた目でこっち見ないでっ!
「殺さないで!なん↑でもするから殺さないでぇぇぇ!」
声がひっくり返ってしまいました。その光景に再び少女が笑いだしました。
「あら。何でもと言ったわね?じゃあ今から鬼を⚪しに行きましょう?」
「は、はいぃぃぃ!全力でお供させて頂きます!」
鬼には悪いが彼女の餌食になってもらおう。ほんっとうにごめん。
しばらくして、鬼の集落に到着したのですが、鬼さんたちは昼間から飲んでいるらしいです。
少女の目が狂気に満ちました。
「うらぁぁぁぁ!クソガキどもがぁぁぁ!私にも…私にも酒を貢げぇぇぇぇ!」※お酒は二十歳になってから
もはやどこからツッコメばいいのか分からずにその場で唖然としていると、彼女の様子がさらにおかしくなります。
「よっっしゃぁぁぁぁぁぁ!うめぇぇ!酒うめぇぇぇぇ!もっともっと貢がんかぁぁい!」※お酒は二十歳になってから
そんなやり取りを十分ほど見守った後、鬼の死体から何か光るものが出てきます。お話の通りに進むと、背が高くなるのですが、ぼくの場合は背が縮んだ訳ではないので、そこら辺のアレが気になります。ぼくは光る何かを手にすると、少女はこういいます。
「それは…希にしか出ない希少なドロップアイテム『菌の金づち』…本当にこの世に存在したとは…」
なんだか突っかかる点がいくつかあるようです。一つ目はドロップアイテムという単語です。なんでゲームみたいになってんだよ!
そして二つ目は『菌の金づち』というワードです。『金の金づち』なら良かったんですけどね?なんで菌なんですか?
なにやっちゃったんですか?
ぼくは頭の整理で忙しく、彼女の動向を見ていませんでした。
お話通りならこの少女と結ばれるのですが、怖いです。
「少年?」
耳元で囁かれました。ゾクッとする声色に身動きがとれません。
すると少女はこういいます。
「『菌の金づち』が手に入ったのはあなたのお陰です。なのであなたには、私と結ばれる権利を差し上げましょう。」
こんな恐怖を感じる告白を今までされたことはありません。
普通なら嬉しくて心臓がドキドキするものですが、今は恐怖で心臓がバックバクです。何かを返さないと殺されます。
「ほっ↑」
出たことばがこれです。何が「ほっ↑」だよ。
すると彼女はクスクスと笑い、ぼくの体に刻み込まれる一撃を加えます。
「なんでやねーん!」
その一言を残し菌の金づちをぼくの頭に命中させます。こっちが
「なんでやねーん」と言いたい気持ちを言えずに意識が飛んでしまいました。
後日、彼女と結婚を果たします。まあ脅されたんですけどね?
刀を突きつけられ「大好きよ」と囁かれてもなにも嬉しくありません。この人と結婚するか、刀の錆びになるか、菌の金づちの菌になるかの三択だったので消去法で結婚したのです。
めでたしめでたし。
いちど書いてみたかった。
結果次第でまたこんなの書くかもです