第6部
自分が無能で落伍者だと判断を下された気がするからだ。
経営が苦しいなら、そう言ってくれればいいと、働いている者は思う。
しかし経営者はそんなことはしない。
ある日リストラや倒産がいきなり起きるのだ。
まだ事情があるならいい。
幹部や役員はのうのうと高額なボーナスを手にし、下っ端だけが切られていく。
「もう、何もかもいやになって、、俺の人生何だったのか?と思うよ」
「分かるよ、この年では雇ってくれるとこも限られてる」
「だからまだ東京なら仕事があるかもしれないって、女房と相談して行くことにした」
藤代はまだ仕事が決まってもないと苦笑した。
「お互い大変だな」
ここには相哀れむ中年の惨めな男がいた。
藤代は私に本音を聞いてほしかったのだろう。
家族には弱音ははけない。
「例の大手に自動車会社の派遣切り見たか?」
「ああ」
「俺の会社と同じで、上の奴らは破格のボーナスを貰ったらしい。
会社や他の社員なんかどうでもいい、自分が社長や役員の期間に
とにかく金を多めに取りたいだけだからな」
「自分達は何の責任も取らずにな」
経営の失敗や政策の失敗をしても、上の者は責任を底辺の者へと振り返る。
世間は長い冬を越しても、さらに絶望がクレバスのように深い亀裂を広げている。
政治家や公務員と言った守られた生活の者は、破滅する人々を自己責任と言う言葉で葬り去る。
彼らには関係のない実感の湧かない話だからだ。
彼らは自分達の世界での利害に血眼で足下が崩壊するまで気がつくことはない。
「俺が荒れてるから真弓がさ、実家のある東京に行かないかって言うんだよ。実家は酒屋やってるんだ」
真弓と言うのは藤代の妻で、実家が未だに酒屋をやっているのには驚いた。
「まあ、昔からのよしみが何件もあってそこそこやれてるみたいだけど、そのうち半分コンビニにしょうかとか
言ってるみたいだけどな」
「そうか」
「今の世の中酒屋も奇跡なら、コンビニも乱立して危ういんだ、真弓にそこはまかせて仕事を捜すよ、こっちよりはあるだろうからな」
「そうだな」
「俺も公務員にでもなっときゃよかった」
藤代はかみしめるように言った。
彼は学年でも優秀だったので、公務員も難しくなかっただろう。
だが、自分のやりがいのある仕事を選んだのがこの結果だ。
運のいいものと能力のあるものが生き残れる社会。
良く年功序列は嫌だと言っていた者がいたが彼らはどうしただろう。
人間いつまでも若くはない、仕事だって若い時のようにはできないだろう。
なのにマスコミに乗せられ
どれほど能力のあるものがいたのか分からないが、乗せられ成功したのは一部だろう。




