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ある男  作者: トリカブト
5/10

第5部

苦々しげに吐き出した。

そこで続く話は気晴らしも兼ねてと、居酒屋で待ち合わせを約束した。

「母さん。出掛けてくるよ」

「どこへ?」

「藤代のやつが東京へ行くって」

「藤代くんが、、そう、、お餞別がいるわね」

餞別。

これは失念していた。

財布をあけると心細くなるような小銭しかない。

貯金の通帳もわびしいばかりだ。

本来なら、私が働いてたならもっと餞別を出せるのだが、

サラリーローンに手を出すわけにもいかない。

心苦しいがスズメの涙ほどの金を封筒に包み胸のポケットに入れた。

こんな時にはもっとするべきなのだろうが、できない

自分が悲しい。

苦労の連続だった母にまた無心するのも辛い。

日々心は膿み腐れていく、、

大銀行は失業者や老人から搾取した金で自分達の尻拭いをさせ、

トップは驚くほどの退職金をせしめて天下りする。

これが格差社会で、当然なのだろうか?

そして中小企業を支援すると言うお題目の金は、中小企業に渡らない。

次々と潰れて行く。

この世はいつも正直な庶民が割を喰う。

サラリーローンの社員が脅し文句で言う言葉は正しい。

法律は冷血で頭の良い者の味方なのだ。

善も悪も情もそこにはないのだと。

待ち合わせの居酒屋は安い酒と食べ物が評判の店で、一品が三百円程度なので、

安給料の私達はここで良く飲んだ。

「いつかはましなとこで呑みたいと思っていたけど、やっぱり最後までここか」

藤代が笑う。

頑固で理屈屋だった私も話を聞いてくれたいつもと変わらない笑顔で

人当たりが良く、人気のある奴だったのに、私のどこが気に入ったのか、

今も定期的に会っていた。

「本当はもう三ヶ月前にリストラされてさ、それ以来、頭がボーッとなって何も考えられなかったよ。

会社につくしてきたのに、この扱いは何だと腹がたって悔しくて毎日酒飲んでさ」

その言葉は良くわかる。

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