第4部
度胸もなく日々不安に苛まれているだけなのだ。
母の気持ちも分かるが、たとえ私が無事どこかに就職したとしても、
こんな中年太りでさえない男にどんな女性がついてくる。
親子で食べて行ければと言うくらいがせいぜいの給金で、
そんな男は私が女でも願い下げだ。
今の女性は結婚願望が強いらしい。
就職率が低く食べて行く道としての選択のようだ。
誰もが稼ぎのいい男を選ぶのは当たり前だ。
私は母の願いをかなえてやることはできない。
もっと早くにこのことに気がつき、可能性がある若いころに、熱心に
見合いしていれば、良かったのだろうか?
怪しげなネットでの見合いサイトで出会い結婚した同僚を馬鹿にしていたが、
あのころの自分こそ勇気のない馬鹿だった。
笑われるべきは自分なのだ。
今の私があの頃に戻れたら、もっと違った人生を歩めただろうか?
全ては後の祭りであり、時はもう取り戻せずにただ老いていくのだ。
楽しくもなくただ生きて、何も出来ずに侘しい人生のまま終わるのだ。
今は母のシワだらけの手が必死に働いて残した貯金と、年金で食いなぐ日々。
悲しみが心を蝕み、動きを鈍くする。
水揚げされた深海の魚のように、突然水圧から解放され、慣れない環境に適応できず
すぐに死んで行く。
新しい明日を生み出す力などない
人は怠惰で努力のない人間の落ち先だとばかにするだろう。
しかし疲れていたのだ、、希望もない明日に何をすればいいのか。
久しぶりに高校時代からの友人の藤代から電話が掛かって来た。
「俺、今度東京に行くことになってさ、当分帰ってこないから一度会いたいと思って」
「栄転か、おめでとう」
からかうように言った。
気まずいような沈黙が続く、私はその途端まずいことを言ったのだと知った。
「栄転だったら良かったんだが、、リストラだ」
「えっ?あんな大会社が?」
彼の働く会社は誰もが知っている大手企業で、業績悪化のニュースは無かったはずだ。
「関係ないさ、不況対策だと言って俺のいる部門はなくなることになって、、他に行けると思ってたら、肩たたきだ」
「なんだよそれ」
「俺たち下っ端は切られたが、上の奴らは何故か栄転していったよ」




