家路
昼だと言うのにカーテンを閉め、薄暗いどん
よりとした空気の中で、私はぼんやりとしていた。
テレビの前に座っているだけの、老人のような
毎日は、私の人生のようだと思う。
スポットライトを浴びるのは常に他人であり、
ふとしたスキに彼らは画面の向こうで、スポット
ライトを浴び、恋愛や仕事で自分の人生の主人公を
演じているのに、私は傍観しているだけで、時の流
れに風化していくだけなのだ。
いつかは自分にもチャンスがと行動もしたが、そ
んな努力など何の成果ももたらさず。
時間と金を浪費するだけで屈辱と虚しさを得ただ
けだ。
淡い期待に時は過ぎ去り残酷な終焉の鎌が、私の
未来を刈るのを待っていただけだった。
長年勤めてきた会社からリストラされたのだ。
私のような独身は切りやすいのだろう。
会社の業績は悪化してなかったはずだが、いとも
簡単に私の人生は破壊された。
スズメの涙のような退職金でありがたいと思えと
言われた。
このさき四十五歳の男にどんな仕事があるんだ。
真面目にこつこつと生きてきたが、そんなことは
何の評価にもならない。
大した能力もないが、上司の気に入りの男は残った。
仕事もいいかげんで、手を抜いていたが、上司の
機嫌を取るのは上手かった。
上司の機嫌をとるのも仕事だと言うなら、私の認識
が間違っていたのだ。
リストラされてもまだ仕事はあると思っていた私の
思惑はまったく外れた。
職業安定所はどこも一杯の人であふれ、誰もが職を
求めていた。