ブランエール[7]
第214天空都市グランディネ歓楽街
総首長官邸を後にしたカリンとリオスは道すがらグランディネの歓楽街を案内しながら、宿舎へと向かって歩き出す
「単身留学なんて思い切ったことをさせるものだね。親父と同じで理解に苦しむお爺さんなんだな、ランベルト殿は」
「祖父の旧友と聞いていたのでもっとお歳を召して要らしている方と思ったのですが、オースティン総首長はお若いのですね。祖父とはまるで違います・・・」
「あんなんでも今年で80になるじいさんだよ」
「えぇっ」
「こんなに若い息子がいて驚いてるって顔だね」
「は、はい」
「オースティン家は5人兄弟で上は58、下は18と。俺は末っ子でさ、親父が62の時に出来た子供なんだよ」
オースティン家の兄弟は四男までが前妻との間に出来た子供で、前妻の死後、父親が再婚し後妻との間に出来た子供が末っ子であるリオスであった。
長男と次男坊はグランディネ=ブランエールの技術部部長と整備課長に、三男は総首長補佐役、四男は第2首都ベイリンにて技術派遣者として出向している。
一人だけ異母兄弟が混ざり、兄たちとは関係良好とまではいかないが、長男と次男とは職場でも顔を付き合わせるため、家族というよりは上司と部下という関係のが強い。
「まぁ親父があんなんだから揉めるとかそういう小競り合いはないけど、普通の家庭には少し憧れあるかな・・・」
「何だか、すいません・・・」
「あぁ、いいよ。気にしないで」
商業貨物船アーバレスト号に乗っていた船員たちであろう男たちが肩を組んで歓楽街の中央に位置されている宿酒場へと向かって入っていくのが見えた、勿論その輪の中には件のアドモス船長も加わっていた。
「やぁ、ヒューイ。半年ぶりかな?」
「お?リオスか、なんだ女連れか?紹介しろよ」
「紹介しなくても見覚えあると思うけど?」
リオスの背後から身を乗り出すとヒューイと呼ばれた青年に対し一礼するカリン、その姿を見てヒューイに続いて船員たちが興味津々といった感じでカリンに注視する。
「あぁ、ベイリンで乗せたお嬢さんか」
「モーマンが一目惚れだ云々いってた子やな」
「ランベルト爺さんの孫娘だ、手出ししたらこえぇぞ」
様子を見ていたアドモス船長がマッシュポテトを食いながらランベルト・クレセインの名を出した途端、船員一同は背筋をピンと伸ばして口を結んだ。
「正式な着任はまだだけど、グランディネ=ブランエール預かりで見習い設計士として働いてもらうカリン・エーデルハイトさんだよ。で、俺はそのサポート」
「カリン・エーデルハイトです。先程はお世話になりました、アドモス船長さん。ありがとうございました」