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ブランエール[5]




 黒の月、10日


 商業貨物船アーバレスト号は第214天空都市グランディネの発着場にて羽を休めていた、一月に渡る長旅を終えて補給と船内整備を行いつつ資財などの運搬を行っていた。


 新人のフィリップやトビーは先輩たちに遅れることのないよう懸命に職務に徹しているが、やはり粗が目立つようで二人の指導係であるモーマンの怒鳴り声がドック中に響く。


「んなちんたら運んでたら次の搬入時間ずれ込むぞ!」


「ふぁーいっ!」


「腰を入れて持て、フィリップ!!」


「・・・猿山の大将かっての」


 モーマンの聞こえないところで静かに悪態をつきながらも作業の手を止めないフィリップ、隣で脂汗を掻きながら苦笑するトビーの顔色は未だに蒼白で、今にもぶっ倒れそうだ


「モーマン!後輩いびりも大概にしろよ」


「だぁってろ!ヒューイ!」


 アーバレストの船体がモーマンの怒号によってか知らず大きく軋みながら不吉な破砕音を轟かせると、次の瞬間、船体の前半分と後ろ半分に別れるようにして思い切り裂けたのだ


「船員のにーちゃん!クレーンで固定するまで其処から一歩も動くんじゃなーぞ!聞こえっかー!?」


「か、かしこまりー!!」


 商業貨物船アーバレスト号はその長い船旅の終点にグランディネ=ブランエールを選び、粛々とその灯火を弱めていく、甲板上で震えるモーマンを他所に技術者一堂とアーバレスト号たち船員たちは長い旅路を終えた船に黙祷を捧げた。




「クレーン固定完了しやしたー!」


「そーっとだぞ、手が空いてる奴ぁ、運搬手伝ってやりゃー!次にいつ崩落するかわがんねえどー!」


「班長、浮遊石の回収完了っすー!」


「あいよー。あんれまぁ、見事に真っ二つでねえか」


「そりゃぁ建造されたの100年も前っすからね、今の飛行船に浮遊石なんて未知のエネルギーなんて使ってないですし」


「運航してる初期型アーバレストはあと2隻か」


 浮遊石というのは謂わばブラックボックス的な物で、どうして浮力を有しているのか、何故飛行船なんてものを浮かすだけの馬力があるのか、それは100年経っても解明されてはいない、それが積まれているのはピエトロ・オースティンが世に残した商業貨物船アーバレスト号型のみとされている。


 長距離輸送船ローラルにはアインスとピエトロの両者による100年前では新型の浮力エンジンと蒸気機関が積まれ、それを更に改良した物が高速旅客船フェリスや小型飛空挺ドラグーンに搭載されている。


 尚、セルゲイ・オースティンが独自開発し今もお蔵入りしている超長距離飛空挺オルディーネに搭載されているエンジンは熱エネルギーと磁力による新世代の特殊エンジンが積まれているのだが、これは未だ詳細が明らかとなっていない。



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