《『ライフワーカー』》
『電磁療法処置室』
『遺跡守り』が守っていた部屋には、そんなプレートが掛かっていた。
壁には隠し扉になっているようなヒビが入っていて、どうもこれが開くらしいのだが、ティルトは少し壁を弄ってから『力ずくでは無理そうだ』と肩を竦めた。
「多分だけど、電力式で電気が通じてないとロックするんじゃねぇかな」
「ロックは外せんのか?」
ティルトの回答に、ブラフマンが難色を示す。
「予想通りなら内側から『遺跡守り』の硬い装甲と同じ素材でロックが掛かってる。この状況で、オッサンならどうするよ?」
「仕組み自体に手を出せんのか……。電力を復旧させるしかないかの」
ブラフマンは周囲を見回した後、最初に『遺跡守り』が鎮座していた位置を確認する。
「儂の予想通りなら、ここに電源が有る筈なんじゃが……」
床のカーペットを捲って、『フム』と髭を擦る。
「電源?」
「でないと、『遺跡守り』も動けんはずじゃろ」
ティルトの言葉に答えながらブラフマンが次々とカーペットを剥がしていくと、直ぐに床下格納のような隠し扉が見つかった。
「こっちの鍵はどうじゃ?」
「……どれ」
ブラフマンに問われたティルトが、鍵穴を確認すると、直ぐに指先を擦って乾かしながら道具を取り出す。
それから数分間、ティルトと鍵の格闘を一同が黙って見ていると、やがて『カチリ』と音を立てて鍵が開いた。
「後はここの持ち上げ口をひっくり返して……開ける」
ティルトの溜息とともに、床下収納の扉が開く。
収納の下には幾つもの黒いケーブルが並んでいた。
「ご苦労じゃったの、ちびっこ。後は任せておけ。何とかしてみせるわい」
ブラフマンは床下に頭を突っ込むと、ケーブルを引っ張って確認する。
「これが生きてるケーブル……他は基本的に死んどると見て間違いなさそうじゃの……。と、なれば。この生きているケーブルを先ずは扉に繋ぎ直せばいいんじゃな……」
ブラフマンが呟くと、荷物を放置して穴の下に潜ってしまう。
「あ、オイ! 荷物!」
「死んでも守っておれ。この形で長さにも余裕があるようじゃから、それ程時間はかからんと思うが……」
リチャードの言葉に、ブラフマンが穴の下から答える。
暫くの間、床下からブラフマンの動く音が聞こえた。
やがて、周囲に先程一階で昇降機が動き始めた時と同じ様に、壁の奥で機械が稼働する音が鳴り始める。
「これで開かんか? 誰か開けてみい」
穴の下から聞こえるブラフマンの声に応じて、リチャードがアスパーンに視線を送ってくる。
アスパーンは頷くと、身構えながら扉の前に立った。
すると、壁の奥で『パチン』と金具を外した時のような音がして、目の前の扉が左右にスライドして行く。
扉の奥には、見た感じ動くような物は何も存在せず、何かの機械と、人が入れるくらいの大きさのカプセルが一基、設置されている。
「……あれかな?」
「直ぐに調べる!!」
アスパーンの問いに答えながら、イルミナが部屋に駆け込んで行った。