同格者『白髪の英雄』
はて僕は、一体誰なのか?全く思い出せない。
「ケンケラは、マサキを知ってるよ?でもおしえなーい、ケンケラからの罰だよ。
何で生きてるかとか不思議でならないもん。」
マサキ?名前のようだが、・・・だめだ検討もつかない。
そもそも、ここは、どこだ。一見広い街の広場ようだが。
「ケンケラは知ってるよ。ここは、グリーンって街さ。まあまあ広い街だね。」
「僕は、どうしてここにいるわけ?」
「自分で歩いてきたんじゃないか、忘れたのかい?ケンケラは呆れて物が言えないよ。」
どうやら、少し前まで記憶があったようだ。
「・・・ん?」
そんな時だった。
「おい、そこのお前、感じるぞ、すごく怪しいぞ、我は、非常に、驚いているぞ」
広場で汚いボールを持った原住民が僕に話しかけてきた、が
「あぁ?誰だてめぇ?うるせえぞ、その汚いマリでも蹴ってどこか遠くへいきやがれ。」
うぜえ、マジでうざいから、『俺』は、何故かキレた。イライラする、ずっと抑えてきた気がする。
何日も何日も、もはや限界を超えて、『何か』を尋常じゃないくらい貯蔵しているような気がする。
「我は、怒ったぞ、覚悟は出来ているな?我は、エス・サービス、という。」
「知るっかボケクソ、お前の名前とか要らんわ。すっとこどっこいは、帰って相撲でも見とけや。」
カチカチ頭上のボールペンが警告音を鳴らす、うるせえ。
「うーんケンケラは、辞めたほうがいいと思うけど・・・、だってそのエスって人、『英雄』なんだもん。
次こそ、死んじゃうよ。逃げようよ。民らしくさぁ。」
英雄?聞いたことねえなあ、食い物か?
「ケンケラは、呆れて物が言えないよ・・・かなしみー」
ある程度距離を保ち広場中心噴水前で、対峙する、二人の少年、つってよお、クソが。
「我は、マリ蹴りで勝負がしたいぞ、スポーツマンシップだぞ。」
「おい、白髪、マリ蹴りで俺に勝てると思ってるのか?この俺『様』によお?」
白髪、黒目、俺様と同じ低位身長。
今、白髪と俺様のリフティング勝負が始まろうとしていた。
「なあなあ、俺様見本を見せてやろうか?」
「我は勉強も好きだぞ。はやくやってくれ」
俺様は、ノリノリになっていくのを感じた。
頭上のボールペンに手をかける。
「マジ?何持ててるのマサキ、え?なにすんの?」
「マサキ?誰だよまあいい、こうするのさ、こいよ、『俺様』!!!!見せてみろ!!」
俺様は、ボールペンを勢い良くへし折った。
すると『自立支配格』が展開し機械的で規則的、ありえない挙動にも対応できるようになり
次に『アヴェンジャー・コント』が発動する、つまり『完全』なる力場が形成され安定した力でマリを蹴ることができる。
更に『完全なる可能性の停止』が尋常じゃない精度のリフティング補正を展開する。
成長していく確率、天啓『底なしの根性』、欲望、知覚。全てが最大限に引き出される。
その姿は、まるで伝説のマリ蹴り者『アストラル・フィーゲル・キング』そのものだった。
100回、1000回、10000回、広場には、尋常じゃない人が集まり、しまいには賭け事が始まり、暴れ飲み、騒ぐ、お祭りと化していた。
そして長い時間が経ち、ついにフィナーレを迎えようとしていた。
「ああ、我は、感動で前が見えないぞ・・・」
そんな俺様には、分かる。この白髪は英雄だ。
「おい白髪、お前俺様についてきてみな?」
「我にそんなリフティングはできやしない」
「いいぞー」「かっとばせー」「いけいけー」
「まだわからないのか?白髪、いや、英雄。お前は、俺様についてこられるはずだ。」
「英・・・雄?我が?」
「そうだ、お前は、英雄だ。だから着いてきてみせろ!!行くぞ!!!」
「無理だ・・・もう我の負けでいい・・・やめてくれ・・・」
「しょうがねえな」「がんばれ小僧」「やってみせろ」
応援が大きくなる、大きくなるにつれて、俺様の魂のフィナーレが始まる。
「勝負だ、英雄、この俺様のリフティングを超えてみせろ!!!!!!!」
「我は、・・・英雄・・・」
静かに立ち上がり、晴れた表情で一気に俺様と同格まで上り詰める。
・・・これはグリーンの街の英雄が誕生した瞬間でもあった。
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馬車に揺られ、次の街「コロシアムパーク」に行く途中。
「ちょっとケンケラの使い方を間違えすぎじゃないかなあ・・・かなしいね~」
「僕は、これでよかったと思うよ。」
あれが、英雄化、英雄固有能力『同格』。
「でも、あんなもの、僕は、絶対に認めない。」
決して振り返らないで進んでいく、そんな僕の名前はマサキというらしい。
全く『しっくりこない』なと思う。