04死闘『破滅』
僕は、イカれてなどいない。
僕の精神は、正常だ。
この僕が本来の姿なのだ。
「それにしてもここは・・・?」
「あ、マサキ、気づいたの?しっかしやばいよね~実際。
あの後、ケンケラ達は、屈強な男に人里まで運ばれたんだけどさ・・・だけどさ」
「だけど?なに?」
僕は、この馬小屋に不安を覚えている。なんかすごく焦げ臭い。ヤバイ気がする。
「何か、旧魔王直属四天王のアイギスって奴が
ケルベロスっていう火を吐く化け物使役して暴れまわってるんだけどこりゃ、終わったっしょ。
死ぬね、ケンケラもマサキも、ちっぽけ、一瞬で終わるよ~。」
「はは、ちげえね。」
でも・・・ふざけるな。ふざけるんじゃねえ。ちっとも始まってねえ。
「なあなあケンケラを使う気かい?もう毒が抜けているようだけど・・・無理じゃないかな?」
このままなーんにも出来ないのか、ホント僕はついてない。
「はあ、逃げることができればなあ、いいんだけどさ」
「逃げる?マサキ、お前は、英雄に成りたかったんじゃないのか?あ、所詮民だったし現実見てんのか。」
僕は、ふと思い当たる。そう『アレ』がある。
けど、やっぱり毒が足りない。テンションが上がらない。
「そう『アレ』ね。マサキは、シュバルツ・パラノイアをそうやって使うのか。」
まーた意味のわからないことを抜かす。
「なんだよシュバなんとかって。やめろって言ってんだろ。意味わかんねんだよ。」
「マサキ、お前の力のことだよ。」
ああ、『漫才化』のことか。シュバババとかキモい名前つけんじゃねえよったく。
「マサキ、シュバルツ・パラノイアは、大量に蓄積された毒を開放して発動する、ほんの少しのパンドラだ。
それをこんな使い方するなんて、マサキは、ケンケラの無駄遣いだなぁ~。」
「僕は、『アレ』じゃないとダメな気がするんだ。わかってくれよ。」
「大体、このケンケラがボールペンの形をするとか、ありえねえって、マジで」
ケンケラ、確かなんちゃら剣だったか。別にボールペンでもいいじゃねえか。
「そろそろ人生が終わりそうだな。」
外では、火の海の中ブーメランでケロベロスと戦う男と結界を張り、村人を守る少女が目立っている。
まあ、それでも一番目立ってるのは、空中に浮いている、大きな盾なんだけどさあ、
あれってもしかして、ケンケラと同じ存在な気が・・・
「うーんとねケンケラは、アイギスとは友達じゃないんだよねー」
ん?
「お前アイギスって奴と話したことあるのか?ってお前、もしかして悪いやつなのか?」
「いやあ、ケンケラは、魔王軍の下っ端中の下っ端だったのさー。
なんというか、単純で工業的な作業でヘマしてクビになったんだよね・・・
だから森のなかをさまよってたんだけどさ・・・・」
「へえ、お前も大変なんだなあ、頑張れって、しらねえけど。
はあ、しっかし、あの盾、どうにもならないよね。
このままだと、全滅だよ。かあああ、僕にも毒があればな。」
「・・・まあぶっちゃけ毒がなくても出来るよ。ただ、精度がさがるかなー。
ケンケラは、辞めたほうがいいと思うけどなー。ヘタしたら死ぬけどなー」
どうせこのままだと死ぬんだよなー。
「死ぬ条件は?それさえわかればいいよ。」
「・・・ケンケラは、毒とか言っちゃってるけど
本当は、『欠落』の理屈が働いているんだよね。
『自らの存在A』と『自らの存在B』がある状態で、
どちらかが燃えるように消費されると、お前のやりたいことができるんだけどね。」
あの異常な『俺』のことか。
「正直、今のマサキは、燃え尽きて死ぬと思うよ。」
ん?
「まてよ・・・?」
「マサキ、何考えてるんだい、そんなことして死んでもケンケラは知らないよ、・・・全く。」
このままこもってても死ぬのだ。ちょっと毒が回ってきたから僕は、元気よくこういった。
「あたぼうよ、元気よくいこうぜ。」
勢い良く起立する。さあ行こうか、もちろん生きるために。
ーーーー
「ボウズ!!!逃げろ!!!くっ!!」
「なにをしているデス!!」
外の空気は、重苦しい。
「はあ、マサキ死んだらどうすんのさ。」
シカトシカト。僕は、歩いて盾とケルベロスに近づいていく。
「ギギギ!!!!」「ギガガガガガ!!!!」
・・・さあ。行くぞ。頼むぜダチ公。
「僕が僕であるために、お前が『俺』の糧となれ。
判定は、『俺が死ぬか』『お前達が死ぬか』、さあそれを決めるのは『俺』だ。」
頭上のボールペンからインクが垂れて俺の顔を覆う。
「今こそ、見せようこのコントを。」
俺は、力場を構築していく。
一定の力がこの村に存在するもの全てに配られていく。
「ギギギギ!!!!」「ギガガガガガガ!!!!!」
あふれだす力がアイギスとケルベロスを刺激する。興奮状態に陥り、暴走しようとしている。
「なんつうかそういうのじゃないんだけどな・・・まあそのまま崩すよ、崩壊!!」
構築した分の力がバラバラに砕けてこの場、この村の存在に極度の悲壮感を与える。
「ギ・・・ギギギ・・・」「ギガ・・・ギガガ・・・」
「ボ、ボウズ・・・」「デ、ス・・・」
「うっ・・・おいおい、全滅かー?ケンケラ達、衰弱死かー?」
「こ、こんと・・・」
思ったとおりにならなかった、実際、ヤバイ。
結果、誰も死なないで、全員の存在の力を生贄にしてしまったようだ。
「マサキあのさあ、ケンケラ、きついって・・・はあ・・・」
そのうち全員、その場に倒れて、動かなくなってしまったようだった。