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01世界から取り除かれる異物『マサキ』

僕は、マサキ・スターター。母さんと一緒に暮らしている10歳の小学生だ。

黒い髪、『金色』の目の日本人だ。


「うーんゲームでもしようかな、今日は・・・これだ!!」


あの母さんは、今日も出かけている。本当に最後に会話したのはいつだったか。

全く思い出せない。そんな僕は、過去を振り返らないから、きっとすごい人になれるんだろう。

例えば、英雄とか。そんな人に僕は、成りたい。


「ってあれ、またコーラこぼれてるよ、ちゃんとしなきゃ」


僕は、ゲーム機とコーラしか無い、真っ白な部屋に住んでいる。


「・・・」


この白い床がどす黒く侵食されるのを見て僕は、ふと思い出す。


「僕が必要としているものは、全ての人間が必要としているわけではない・・・そうだね、母さん

僕は、今でも守っているよ、『会場と名のつくものに触れてはならない』という約束をね。」


本当に僕は、度胸が足りなかったようだ。10歳になった今ならそう確信できる。

一瞬、英雄の誓い、母さんとの約束なんて正直、どうでもいいと思ってしまったからだ。

こんなんじゃあ、英雄になんてなれやしない。


「なんか気分が乗らないな、ちょっと、電話でもするかな。」


唐突に豆腐屋の女の子の家に電話をかけることにした。

僕が通っている学校のマドンナの家だ。ドキドキする。


「・・・はいもしもしだっぺ、俺は、豆腐屋だっぺ、あんた誰っぺか?」


「僕は、学校のマドンナの子を口説きに来たんですよ。変わってもらっていいですか?」


僕は、直球勝負が好きだ。したがって直接的にアタックをする。


「お前、ふざけてるっぺか?まさか、あのお祭りに誘うきっぺね!!許さないっぺよ?」


「ん?お祭り?まあ僕には関係ないか」


もう電話をきろうと思ったが、豆腐屋は、話続ける。


「若いのにだらしないっぺよ、伝説のお神輿がやってくるらしいっぺのに。」


「伝説の・・・お神輿?」


「そうだっぺ、確か『禁』って名前だっぺ。知らないっぺか?あ、やっべ客だっぺ、きるっぺよ、またねー」


きん・・・?一体どんな字なんだ?電話越しだからよくわからなかった。

だけど、良いことを聞いた気がした。

でも僕は、英雄にならなければならない。行ったら英雄になれない気がする。

だからなのか、次の日、家から電話がなくなっていた。そんなことも忘れていくのだろう。



ーーーー


ある日夢を見ていた。血まみれの銀髪で古い体操服を着た女の子が倒れているようだ。

僕は、嬉しい気持ちでそれを眺めていたみたいだった。

そしてそのままその『会場』を立ち去っていく、その後姿は、まさに英雄の栄光だった。

何かが壊れ、何かが刻まれるみたいな。それが再構築されてもなお、異物が漂流しようとしているような。

そんなこと、忘れてたはずなのに、つい思いだしてしまった。


「クスクス、僕がこれをどうするかなんてもう決まっているじゃないか。

例え、全部戻っても、僕は、大工でキット、そしてマサキなのさ、クスクス。」


僕は、この時、本当に全部戻った気がした。


「よう、キット、会いたかったぜ。」「なあ、キット、流石にそろそろじゃない?」


二人の勇者が、手を差し伸べる。

懐かしい、これは、もう始まっている。


「クスクス」


一人の勇者は、銃を構えて天を狙っている。

一人の勇者は、エロ本を構えて何かを見ている。


「クスクス、懐かしいよ。まるで同窓会だね。僕はうれしいよ。」


流れで僕にジャッジメントを下す、あと一人の存在が居た。

そうもう一人ここに居るのだ、勇者たちと違う、その『金』がブレて見える。


「今日、この場所は、同窓会だ。4人は、懐かしく、動じないで、会うことが出来た。

それってつまり、過去を水に流したということだ。

だが考えてみて欲しい、そんなことがこの煮えたぎる精神をどうにか出来るであろうか。

否、私達には、到底出来ない。何故なら私は、断罪者だからだ。

この記憶に記憶に刻まれた、音、視線がお前たち英雄を消しに掛かるだろう。

それは、直接的かつ傲慢にのしかかってくる、まるで鋭い剣のように。

判定は、『死ぬ』と『死ぬ』だ、受け入れろ、そしてどうにかしろ。・・・そうじゃろキット?」


「今の僕は、停止していないからね、どちらを選んでも死ぬだろうな。クスクス。

クスクス、だが僕は、マサキは、英雄になるべきだと思うよ。

だから、僕、即ちキット・スターターと大工が死ぬことにするよ?クスクス。」


勇者達は、誇らしげだった。『金』は、納得をしているようだった。


「キット、やっと答えを見つけたのじゃな、これで、やっと・・・」


僕の目の前に石塊が落ちてくる。やっとぶつかれる、そんな気がした。


「マサキ、俺達はずっと待ってるぜ。」「英雄か・・・」


ーーーー


そこは、異空間、とある『会場』だった。


「うっ、マスター」


銀髪で新しい体操服を着た女の子が不安定な場所にいる。

ゼッケンに「せかんど」と書いてあるようだ。


「異物?久しぶりね。まあいいわ、そのへんにっポイっよ、ポイ。」


オカマは、非常に丁寧な女ことばを放った。


「ハイ、前回の異物取り除きの際、面倒だったので簡単にできるようにしておきました。」


「今回は、何週間掛かるの?」


「ハイ、なんと30分です。楽でいいですね。」


迫り来る、日は、目前だった。


ーーーー


「ゼーハアゼーハア・・・、ここが、お祭り会場か。まだ誰も居ないのかな?

ってそりゃ3週間前じゃあ、僕が一番のりに決まってるか、ハハハ」


僕は、お祭り会場に来てしまっていた。

母親との約束を破り、ここに来てしまっていた。


「けど、もういいや」


気づいたら、僕は、『どこかもわからない』前を向き歩き始めていた。

見据えているのは、前、栄光と英雄の道を辿るために。

だが、その志に反して、グチャグチャになるこの世界。


「・・・歩かなきゃ。」


僕から、抜け落ちた、何かがそこにある気がしたのだ。

本当に英雄に成りたい。その突き抜けた先にあるのは、何故か本で見たことのある森林だった。

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