金剛山ヒルクライム1
今日はいよいよ初試合。今僕たちは金剛山の麓に集合している。
「全員揃ったかー?ミーティング始めるぞ〜。」
今日の引率の高田先生がミーティングを始めようとしている。本当は三浦さんに来てもらいたかったんだけど、店もあるからこれなかったんだよな…。
「今日のレースは12時40分からの女子の部に清水、14時45分からの男子の部に斎藤兄弟と影山が出場だ。」
清水先輩出るの⁉︎
「9時から9時半の間にエントリーだから出し忘れんなよ〜、解散!」
ちなみに今の時刻は7時である、早すぎやしないだろうか
〜2時間後〜
「山門高校です。エントリーよろしくお願いします。」
僕は清水先輩とエントリーを提出していた。各チームの代表が受付に行かなくちゃいけなくて、本当は男子チームの代表は兄ちゃんだったはずなんだけど、面倒くさいからって僕が行かされている、
「あっ、お姉ちゃんだ。おーい。」
女の子がこっちに向かって走ってくる、誰?というかお姉ちゃん?
「あはは。私の妹だわ。」
清水先輩の妹か〜
「お姉ちゃんもこの試合出るんだよね?香奈もこの試合出るから勝負だね!」
何年生なんだろう?
「あんたはアシストでしょうに、勝負しちゃダメでしょうが。」
香奈さんの後ろから別の女の子が走ってくる
「すいませんうちの清水がご迷惑をお掛けしまして…って何だ香乃子か、じゃあ問題なしやね。」
僕らの存在は放置なんだろうか
「何だとはお言葉ねえ桜。そもそもあんた何でここにいるの?この試合はエントリーされてなかったような気がしてるんだけど?」
桜って、初練習で山登った後に清水先輩が言っていた人だよな、何者なんだろう?約束がどうこう言っていたけど
「私は今年は国体に賭けているからね、今はまだ疲労が溜まっているんだよ。インハイにはちゃんと調子は合わせるけど県大会とかは私抜きでもうちの学校は勝てるからね、ギリギリまでトレニーングを積んでいるのさ。これで香乃子が国体出てくれなかったらどうしてくれようか?」
約束ってこのことなのかな?
「まあ、私は国体の選考の候補に挙げてもらえるためにこの試合出てるからね。任せときなさい、圧勝してくるよ。」
どういう基準で選考するんだろう
「うちのメンバー結構強いはずなのに、圧勝ねえ、まあ頑張って、ゴールで待っているよ。」
そう言って桜さんは去っていった、清水先輩の妹さんは残したままだけど、何しに来たんだろうあの人
「私影薄い…」
妹さんが落ち込んでいる、何か言わないと
「えーと、何年生なんですか。」
これだけでパアッと表情が明るくなる、チョロい気がする
「私は清水香奈、城内ヶ崎高校の一年生です。」
「僕は斎藤和人。山門高校の一年生です。同い年ですね。よろしくお願いします。」
「同級生か〜、じゃあタメ口で良いね。」
結構軽い性格みたいだ、
「おーい、和人〜、省吾兄が試走行くから早く帰って来いって言っているぞ。」
じゃあ自分で受付すれば良かったのに
「ごめんなさい。チームメートが呼んでいるので行かなくてはいけないので、ではまた。」
「タメ口でって言ったのに…」
去り際に見えた香奈さんの顔は膨れっ面だった。
「女子の部スタート3分前です。選手の方はスタートラインについて下さい。」
スタートラインにズラリと選手が並んでいる。清水先輩は5列目に並んでいる。全部で7列しかないからかなり後ろの方だ。最前列は城内ヶ崎高校が並んでいる、さっきメンバーを確認したら、城内ヶ崎高校から出場しているのはまず、ディフェンディングチャンピオンの中村京子さん2年生、ゼッケンナンバーは1番。小柄な選手だ。小学生ぐらいにしか見えないけど、あんな体格で速いのか…。次に倉田翔子さん2年生。兄ちゃんいわく、去年の城内ヶ崎のインハイメンバーらしい。男子の部で出ている。倉田翔太さんの双子の妹だそうだ。美人だなあ…。最後にさっき会った、清水先輩の妹の清水香奈さん1年生。実は去年の全中チャンピオン。清水先輩、さっき圧勝してくるとか言っていたけどこんな面子相手に無茶じゃないのか…
「スタートまであと10秒…3秒、2秒、1秒スタート!」
ついに金剛山ヒルクライムがスタートした、と言っても僕たちのスタートはまだ2時間ぐらい先の話だけれど
「ただいま、先頭は集団で1キロ地点を通過しました。現在集団の先頭を走りますのはゼッケンナンバー2番城内ヶ崎高校2年の倉田選手です。」
この大会は放送でレースの様子が中継してくれるらしい。
「まだ、集団から遅れた選手はいません。」
清水先輩はしっかりと走れているみたい。
「兄ちゃん、清水先輩勝てると思う?」
「五分五分かな、まだ完全復調したわけではないだろうし。」
完全復調してなくて、1対3でそれでも五分五分ってすごいな先輩
「現在先頭集団は3キロ地点を通過、アタックを掛けて抜け出そうという動きもありましたが、悉く倉田選手が潰しました。集団は完全に城内ヶ崎高校のコントロール下にあります。また、倉田選手のハイペースの引きで集団はすでにスタート時の3分の2ほどにへっています。」
清水先輩はどうなんだろう。
「本格的にレースが動くのは5キロを過ぎて坂がキツくなってきてからだろうな。おそらく香乃子が1回目の仕掛けをそこですると思うぞ。」
そもそも清水先輩が動くまでレースは動かないのかよ。
「他の人は?」
「アタックしても無視出来る程度か、即座に倉田さんに潰されるかだろうな。女子の有力選手は軒並み城内ヶ崎か県外に出ちゃうからなあ。」
…もしかしてうちの県のレベルって低いのだろうか…
「現在先頭集団は5キロを通過、既に集団には選手は6にんしか残っていません。残っているのは城内ヶ崎高校の中村選手、倉田選手、清水選手、鴻池高校の柏木選手、灰原選手、山門高校の清水選手です。」
スタート時の人数が40人だから大分減ったんだなあ
「ここで、ゼッケンナンバー131番山門高校の清水選手アタックしました!付いて行けたのはゼッケンナンバー1番の中村選手、ゼッケンナンバー3番の清水選手だけです。」
清水先輩と香奈さんの区別がつけずらい放送だなあ
「ずっとアシストを受けている中村選手は脚を溜めているはずだから次の激坂が勝負どころや、城内ヶ崎は清水さんにアタックさせて様子を見るか、一気に中村さんで決めに掛かるか…まだ距離もあるし清水さんで様子見かな…」
兄ちゃんが説明をしてくれるけど、途中から独り言みたいになっているし、
「激坂区間に入りました!まず仕掛けたのは城内ヶ崎高校清水選手!しかし、山門高校の清水選手もしっかりと付いて行きます。」
やっぱり区別つけ辛いな、なんとかならないんやろうか
「ここで山門高校清水選手被せてアタックを打ちました!ディフェンディングチャンピオンの中村選手はさすがの登坂力で付きますが、城内ヶ崎高校は清水選手も離れてしまったので、もうアシストが残っていません!」
うちは元々アシストいないけどね…
「激坂はもう終わるから、勝負は残り1キロまではお預けかな。」
「激坂が終わって、坂が緩くなったところで、山門高校清水選手がまたしかけました!この動きに中村選手は付いていけない!ドンドン引き離されていきます!」
「兄ちゃん…」
「…」
「2位の中村選手に城内ヶ崎高校の清水選手が合流しました。中村選手を引いています。」
これは体力が持てば清水先輩が勝つんだろうな…
結局ラスト1キロ地点までに清水先輩は45秒のリードを築いて最後の坂に飛び込んで行った
「ラスト1キロの坂で2位グループから中村選手が飛び出しました!果たして1位に届くのか⁉︎」
「ラスト200、1位と2位の差は25秒です。最後の激坂、最後の戦いです!」
「先頭がゴール!1位はゼッケンナンバー131番山門高校清水選手です。」
清水先輩勝った!
「兄ちゃん、龍樹、清水先輩勝ったよ!」
「…勝ったな」
「すごい、清水先輩…、次は俺たちの番だな!」
「2位でゴールに入ってきますのはゼッケンナンバー1番中村選手…
金剛山ヒルクライム女子の部リザルト
1位清水香乃子 山門高校3年
2位中村京子 城内ヶ崎高校2年 +41秒
3位清水香奈 城内ヶ崎高校1年 +1分34秒
4位柏木聡子 鴻池高校3年 +2分7秒
5位倉田翔子 城内ヶ崎高校2年 +2分42秒