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デビュー戦!(の予定)

「斎藤君、クラブ一緒に行こう。」

如月さんがそんなに朝のことを気にしてなくてよかった〜普段通りみたいだ。

「うん、一緒に行こう。」

「斎藤君って、今日何の本を読んでいたの?昼休みとかずっと読んでいたけど。」

「あー、あれはね自転車競技の話なんだ。日本の自転車チームの選手がツールドフランス出場を夢見て頑張る話。良い話だったから如月さんも読んでみたら良いと思うよ。あの本はね、選手の心中描写もさることながら、試合の展開もイキイキと書かれていてね、まるで自分もその試合に出ているような気持ちになれて…。」

ヤバい、如月さんがめっちゃキョトンとした顔している、つい興奮してしゃべりすぎちゃった

「ごめん、僕、本のことになるとつい興奮してしまうんだ。」

「あ、いや大丈夫だよ。そうじゃなくてこんなイキイキした斎藤君は初めて見たなって思っていただけだから。」

そうこうしているうちに部室に着いた。中ではもうみんな揃っていて…

「よう、和人元気そうじゃないか。」

「よかった〜和人君元気そうで。」

最初のが龍樹で後のが清水先輩だ、他のメンバーもホッとした表情だ、やっぱりみんなに心配かけてたんだなあ申し訳ない…

「だから大丈夫やって言うたやん。」

だから兄ちゃんは空気をぶち壊さないで欲しい。

「やっぱり本人の姿見ないと心配よ〜、ね、宗介。」

「ああ、そうだな。」

あの福井先輩まで心配かけてたのか僕…

「何はともあれ、全員揃ったし和人の無事も確認できたしミーティング始めよっか。」

「「はーい。」」

なんでこういう時は綺麗に息があうのかな?

「まずは今年出る予定の試合一覧がこれだ。」

兄ちゃんがみんなにプリントを配る書かれていたのは…


4月24日 金剛山ヒルクライム

富士クライマーズT.T

5月8日 吉野クリテリウム

5月29日 インターハイ県予選

6月17〜19日 インターハイ近畿予選

7月25日〜8月1日全国インターハイ

8月20日〜26日合宿

10月10日国体

橿原クリテリウム

11月21日U18


「みんな一通り目を通したか?説明していくぞ。まず、今年の俺たちのメインターゲットはもちろん全国インターハイだ。今年は去年の雪辱を晴らして上位入賞を狙う。むろん、エースは福井だ。」

「去年はどういう結果だったんですか?」

龍樹が聞いている、僕もその結果は気になるなあ

「去年はエース福井で総合28位だ。第3ステージで落車に巻き込まれてな…全く勝負できなかったから…。」

福井先輩がすごく気まずそうだ。

「とりあえず、次の話に進もう。予定表を見ればわかると思うけど今シーズン初戦は金剛山ヒルクライムと富士クライマーズT.Tだ。といっても富士クライマーズT.Tはうちから出るのは福井だけだから、あんまり関係ないな。金剛山ヒルクライムの方だけどメンバーは俺、加藤と和人だ。」

は?僕?

「今うちは、上級生で登れるのが俺、福井、加藤しかいないからな。一年生レースの山岳区間優勝者をもともと、エントリーする予定だったんだ。」

「あのー、すみません。」

この声は加藤先輩?

「今、僕軽い肉離れを起こしていまして、この試合出れません。」

えっ

「おい、お前エースにする予定だったんだけど?」

「僕一週間ぐらい前から言ってたんですが…。」

「聞いてねえよ⁉︎」

「俺は聞いている。」

福井さん今更すぎる

「心配するな。もうエントリー変更はされている。メンバーは斎藤兄弟と影山だ。」

なんだ、ちゃんと仕事しているんだ。

「エースどうすんだよ!」

「お前だが?」

「マジかよ。他校のメンバーは誰?」

「城内ヶ崎が倉田、梶、新道だ。あと吉野商業の三木が出ているぞ。」

「…龍樹、和人こっち来い、作戦会議だ。加藤も来てくれ。」

兄ちゃんがなんかゲンナリした顔している。そんなに相手が嫌な奴だったのかな?


部室の隅に3人が集まる。

「何で僕まで呼ばれているんですか?」

「去年4位の話は聞いておいた方が良いだろ?」

加藤先輩、去年4位だったんだ。

「まあ、良いですけど。」

先輩が僕らの方に体を向ける

「えーと、コースから説明していくね。この大会は全長10キロのコースを走る。ロードの大会にしては短く感じるかも知れないけれど、それは違うひたすら登りだからだ。」

初練習で走った葛城山も確か10キロだったな。

「葛城山と同じように思うかも知れないけれど、実は全然違う、平均斜度は葛城山6.3%に対して金剛山7.9%だ。さらに、葛城山はダラダラとした登りがひたすら続くコースだったけど、金剛山は強烈な登りが混じっている、6.5キロ地点に斜度21%の激坂とラスト200メートル地点の斜度15%の坂だ。」

むちゃくちゃきついのはわかるけど、どんなもんかイマイチピンと来ないなあ。

「まあ、ラスト200の坂は正直エース以外はダラダラ走るだけだし、あまり関係ないかな。」

そっか、それは良かった、ところで

「斜度21%の坂ってどんな坂ですか?想像つかないんですけど。」

まあ、小説の描写では読んでいるけどさ

「端的に言えば、壁。壁が立ちはだかっているようにしか見えないね。登れるのか?って、まず思うような坂だよ。まあ、見たらわかるさ。」

よくわかんないけど、まあ、いっか

「最初の5キロは比較的緩い坂が続いて、そこから1.5キロは結構キツい坂があって、さっき言った激坂がその後500mぐらい続く。しばらくまた、傾斜は緩くなって、て言っても最初よりはきついけど、ラスト1キロからまたきつくなってきて、ラスト200は斜度が15%に達する。」

ふーん、口で言ってもよく分からないや

「口頭で伝えられるのは限りがあるから、詳しくはプログラムに付いているコースプロフィールでも見ておいて。あとは、参加選手かな?まず、城内ヶ崎高校は県大会12連覇の強豪校だ、全国大会も何回か優勝していたな。でも、この大会にはそれほど焦点は当てていないからそこまで強い人は出してこないで、強い人は富士クライマーズT.Tに出てるんだけど…今年は強いのもいるね。まあ、去年のインハイに出ていたメンバーとかではさすがにないけど。まずは1人目、倉田翔平。二年生のオールラウンダーだ、去年一年間はケガのせいで試合に出ていないけど、中学の時に県大会で1位を取っている、ケガ明けだからこっちに出されたんだろうな。次は梶泰造、二年生のクライマーだ。実績は…なんかあったかな?よく覚えてないや、でも実績はなくても、城内ヶ崎が出してきたんだからそれなりの実力者だと思う。最後に新道京平、1年生のクライマーだ。去年の中学の県チャンピオンだな。双子の兄の涼太は名の知られたスプリンターで江陵学園中の新道兄弟って言えば有名だっからな。この辺りは大和弟辺りに聞いた方が詳しく知っているだろうけど。」

何かとんでもない人らばっかりやなあ

「次は吉野商業高校。ここは注目すべきは1人だけ。ディフェンディングチャンピオンの三木周人や。学校自体は弱小校やからアシストには恵まれてへんねんけど、本人の実力はピカイチや。それこそ、全国で山岳賞を取るような奴と比べても遜色ない実力を持っている。去年はどこからもマークされていなかったから勝てたっていうのもあるだろうけれど、今年も優勝候補筆頭だな。」

こんなん勝てんのか?

「今年の目標は一応優勝や。」

突然兄ちゃんが話し始めたけど、一応って…

「斎藤先輩、何が一応ですか。ちゃんと今年は戦えるだけの戦力が揃っているのに。去年なんか1年生の僕がエースをしてたんですよ。もう本当にふざけているんですか。」

「悪い悪い。えーと、作戦だけど、6.5キロ地点の激坂までは、龍樹が俺を引っ張ってくれ、そこから後は和人、お前が引いてくれ、欲を言うならラスト200まで、無理そうならラスト1キロまでで良い。頼んだぞ。」

「「分かったよ(りました)」」

金剛山ヒルクライムは今週末だ、頑張ろう

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