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初練習3〜山岳〜

稲葉山を登り始める、平坦区間が終わった直後はフラフラだった2人も山に着く頃にはすっかり元気になっていて、さっきようやく平坦のレースの後半戦の内容を教えてもらえた、僕が脱落したあとは、ひとまず龍樹はアタックをやめたらしい、ラスト2キロで謙二君がアタックをかけたのを先輩と龍樹はしっかりと対応して、残り1キロをきったところで龍樹は渾身のスパートをかけて逃げ切ろうとし、そこから後は僕も見ていたように最後の方で逆転されて龍樹は3位だったってことだそうだ。

そして今は僕が集団の先頭を引いている、他の3人は平坦で使い切っているし僕も少し消耗していないとアンフェアだって兄ちゃんにさっき移動中に説明されたからだ。でも、もう1キロぐらい引き続けているしそろそろ誰か少しでよいから引いてくれないかな…

「そろそろ、しんどいかな?私も引いてあげるよ。」

清水先輩!凄くありがたい、と思ったのも束の間急激にペースが上がる

「着いてこれるかな?」

鬼か!

「こっこれくらいなんともないですよ。」

龍樹は声震えているし

「…俺スプリンターだし」

大和君が離れていってしまう

「速いです。」

正直このペースのままだと絶対僕は保たない…

「あ〜、しんどかった。セレクションはこれぐらいでいっか。」

突然先輩がペースを落とす。これがずっと続くのじゃなくて良かった

「影山君、君もう回復しているでしょう?君も引きなよ。」

「チッ、バレたか。わかりました。」

龍樹…前半小声で言っているけど聞こえているよ…つか先輩に舌打ちすんなよな。

そのまま交代して引きつつそろそろ中間点が迫っていた。先輩は平坦レースを見た限りではあまり自分から仕掛けるタイプじゃないから良いとして、龍樹の動きがないのは不気味だ、平坦で負けて思うところでもあったのかな…?

「次、先輩ですよ。お願いします。」

後ろに下がろうとしたその時、僕の隣を駆け上がっていったのは先輩ではなくて…

「龍樹⁉︎」

このタイミングで仕掛けるのか!先輩は流石で、龍樹についたけど、僕は反応が遅れて5メートルほど遅れた。先輩がチラッと僕の方を見るとダンシングを始める!このまま一気に僕を引き離して龍樹との一騎打ちに持ち込むつもりだ。距離がさらに10メートル広がる。

中間点を通過した時点で、1位清水先輩、2位が微差で龍樹、3位が30m差ぐらいで僕だ。どうも大和君は回収されたみたいだ。僕のペースは先輩がペースを上げる前から変わってはいない、差はほとんど仕掛けられたタイミングで離れた分だけだ、前がペースが上がってこなかったら、6キロ地点あたりで追いつくかな?

結局前はペースを上げなかったので僕は6キロ地点を過ぎたところで合流した。

「ふーん、あそこで心が折れなかったか、初心者としてはなかなかじゃない。よく頑張ったわね。」

褒められているんだか、貶されているんだか…

「長距離していたら、これぐらいじゃ心折れませんよ、この程度なら逆転されたこともしたこともありましたし。」

「そっか、じゃあ素人だって思うのはやめよう、今からは本気を出してあげるよ…!」

ここから本気の勝負が始まる…!



と思ったけど、呆気なく僕も龍樹も先輩に引き離されて勝負することは全くできなかった。ここからは龍樹との2位争いだ。今まで龍樹に勉強以外で勝ったことはないけど(別に僕の成績が良いのではなくて龍樹の成績が悪いだけ)、ここは勝たないと…。

お互いに牽制しながら、7キロ地点を通過、長距離で慣れているから駆け引きには僕に一日の長があると思うけど、龍樹の瞬発力には勝てないからどこかで仕掛けないと僕に勝ちはない、どこで仕掛けるか…、

「ああ、じれったい!」

我慢しきれずに龍樹が動いた!残り2.5キロ、まだ僕には余裕があるからしっかりと付く。またペースが落ち着く、龍樹の息は荒い、でも僕も結構キツくなってきた、次の仕掛けが正念場だ。僕はラスト1キロ地点で仕掛けよう。龍樹がどう動くか…

残り2キロ地点を通過、先輩との差はもう1分近い、先輩にはもう勝てなさそうだ。あと1.5キロ、もうすぐ僕がアタックする場所だ…龍樹がペースを上げる、僕の余裕を無くさせて、ラストのスプリント勝負に持ち込む気か!

そのままラスト1キロ地点に差し掛かる、僕が仕掛ける、必死に足を回す、最後まで保つかどうかは賭けだ、龍樹も必死についてくる、きっと龍樹ももうスプリントする脚は残していないからあとは体力、気力の勝負だ!残り500、龍樹が前に出る、残り400今度は僕が前に、残り300また龍樹が前に、残り100で並ぶ、死力を尽くして必死にもがく、少し龍樹が後ろに下がる、残り10m、もう龍樹は追いつけない、僕は手を天へ突き上げ僕は勝利の雄叫びを上げた…


「おい、しっかりしろ和人」

遠くでにいちゃんの声がする。頰に冷たい感触がした、と思ったら顔に水をバシャッと浴びせられた

「冷たっ」

目が覚めた。

「お疲れ様、よく頑張ったよ。よく最後で龍樹を突き放した。2位おめでとう。」

「あっ、えっと斎藤君おめでとう。」

えーっとこの子は…如月さんか、マネージャー志望の子だ。

「ありがとう。」

口を動かすのもしんどい。

「今日はもう休んどけ。如月さん、先生呼んできて、こいつ学校まで運んでもらって…」

にいちゃんの声を遠くに聞きながら僕は再び意識を手放した。

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