さよならは夏空のしたで
初投稿です。
生温かい目で読んでいただけたら幸いです。
人間が生きる上で、自分の生まれた意味や、自分の価値を探す時間は少なくないと思います。
そんな、人間の生きる意味や価値を、私なりの表現で書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
プロローグ~さよならは夏空のしたで~
あれは夏の日の、そう、うだるような八月の暑い日のことだった。
慣れないことはするもんじゃねえと心底思った。
俺は神谷 裕。とある私大に籍を置く、有象無象の中の一人だった。
たまに早く起きた日にはってんで、何週間も欠席していた授業に出席してみようと家を出た。朝の八時半だってのに気温は既に34度。半袖ってのが嫌いな俺は、その日も黒のジャケットを着て出た。
学校までは歩いて三十分ほど。道中変わったこともなく、俺と同じように厚さに顔を歪ませて歩く人々と列をなして歩いた。
何かを期待していなかったわけではない。しかしながら、何も起こらないという確信めいたものを持っていたことも事実だった。
途中、ほかの学生たちの列に合流し、今度はさらに長い列ができた。
お気に入りのタバコを吸い、スマホで音楽を聴きながら下を向いて歩いた。
学校まであとは次の信号を越えれば一直線。そう。その信号のしたで、事件は起こった。
いや、あれは事故だ。
俺は下を向いていたから、信号が赤なのに気づかなかった。
響くクラクション。顔を上げた俺の目に映ったのは、何かを叫ぶ若い男の顔と、直後眼前を埋め尽くした、黒い鉄の塊だけだった。
俺の体が弾き飛ばされるまでの刹那の間、俺の頭を巡ったのは、若い頃の彼女との思い出や、友達と過ごした輝かしい日々、部活に費やし、ともに栄光を味わった仲間たちの笑顔。などではなかった。
繰り返した後悔の場面。傷つけた人々の辛そうな顔、泣かせてきた人達の涙。そんな暗い、つまらないものばかりに、俺の世界は埋め尽くされた。
もしも最後になにか言えるなら、これだけは伝えたい。
慣れないことはするもんじゃねえぞ。と。
これにて、くだらない、世界にとって何の利益も生み出せない、一般男子の物語は、終焉を迎えたのだった。
いかがでしたでしょうか。
初めての作品になりますので、誤字脱字、間違った表現もあるかと思います。
もしなにかありましたら、遠慮なく、ご意見いただければと思います。
ありがとうございました。