黒魔女、白魔女編2
ここはとある実験室
「ベルケル様…申し訳ありません…」
「白魔女とゴブリンの妨害にあい黒魔女を取り逃がしてしまいました…」
「次は必ず…!」
「まぁ、よい」
「実験も最終段階に入った」
「実験の内容がバレようがどうということでもあるまい」
「実験の素材はまだまだあるしな…」
「そうですねえ…」
二人がニヤリと暗黒の恐ろしい笑みを見せると…回りを見た
そこには魔女やモンスターの屍が無造作におかられていた
そのとき
「こ…ろ…ぢ…で…」
あまりに表現することの出来ない身体になった魔女が懇願の目で訴えてくる
「おっほほ-」
「実験台の分際でたてつこうなんざ100年早いんですよ-!」
腕を切り裂く!
「ぎゃあああ!」
「はははは良い顔ですね-ゾクゾクします♪」
「いつ聞いても気持ちいい素晴らしいハ-モニ-だ」
「はい、素ん晴らしいですね-♪」
「ぎ-ざま-!!!」
別の魔女が荒い顔をして吠える!
「オホホホ…きざま呼ばわりとは何事ですか!」
「罰としてスペシャルル-ム行きです!」
スペシャルル-ムと聞いた途端その魔女の顔が強ばる…
「い…や…っ!?」
「連れていけ!」
暗黒の笑みを見せながらベルケルが言った
「ん-ちょっと待ってください」
「そうですね」
「連帯責任としてこの魔女もスペシャルル-ム行きしちゃいましょうか-」
「!?」
悲壮な顔が浮かぶ
「や…め…ろ!!」
「おやおやもう1人元気の良い子が出てきましたね-」
「君もスペシャルル-ム行きです!」
「おい拷問官連れていきなさい!!」
巨漢の拷問官がノシノシ歩いてくる
そして三人の足を引きずっていく…
「いやあああああ!!」
「離せええええ!!」
必死に抵抗しようとするが抵抗できない…
うつむせの足を引きずられた状態で
手を誰かに必死に助けを求めようとするが
誰しも唇を噛みしめ顔をこちら側から背け見ようとしない
「おやおや、このお嬢さんは」
「こ…ろ…じ…で」
「って言ってませんでしたぁ?」
「死ぬのがイヤなんですかぁ?」
「あひゃひゃひゃひゃ!」
「大丈夫♪ゆっくりとゆっくりとお互い楽しんだあと
こ…ろ…じ…であげますょお♪」
「意識がなくなる頃またお会いしましょう」
「そこから最後のお別れまで、ゆっ…くりと遊んであげますからねえ♪」
「あひゃひゃひゃ!」
いけ!」
「ぎゃあああああああ!!!!!」
絶望の断末魔がこだまする…
拷問官に足を引きずられ奥の扉の闇の中へ消えていった
朝起きると綺麗なベッドの上で寝ていた
「ここは…」
「黒魔女を助け、暗黒魔道師と戦って…」
昨日の出来事が走馬灯のように甦る
「そうだ!」
「黒魔女…マ-ニャは無事だっただろうか!?」
「ツバサは…?」
「バ-ジェットは…?」
いてもたってもいられず横に置いてあった服に着替え
大急ぎで奥の扉を開き大広間らしき扉に入る
「マーニャ!」
その目の前の風景を見ると全員揃ってお食事中だったようだ
マ-ニャ、ツバサ、バ-ジェットが無事なのを確認して安堵する
しかし自分のこの状況を再確認すると固まってしまった
「騒がしい人ですね…」
そう大人びた声に誘われ
その女性を見ると
妖艶な美女がそこにいた
「ワタル…」
ミネアか
「この方は我がリーダ-フロ―ラル様だ」
なるほどと納得し粗相がないよう俺は挨拶した
「挨拶が遅れました」
「俺はホワイトゴブリンの…」
「ワタルですよね?」
「聞きましたよ…」
マーニャやミネアは俺の名前知らないはずだし、
さてはツバサかバージェットが教えたな?と勘ぐっている最中
意外な言葉が返ってきた
「村長から」
村長…ばかな…
村長は殺されたはずだ
それをどうやって…
固まっている俺を見かねてミネアが言った
「村長が黒蝶の手紙を出したんだよ」
「黒蝶の手紙!?」
「村長の村がバルクスによって滅ぼされたのを知ってるのかしらないが」
「その時にお前たちをよろしくと手紙を出したのだよ」
「最後の力を振り絞ってな…」
「モンスターや鳥なんかが一番早いだろうが、
しかし不自然な動きはバルクスに感ずかれてしまう」
「そこでこの魔界全土どこにでもいる黒蝶を手紙にすることを
咄嗟に思いついたんだろう」
「そんなっ…」
「黒蝶の手紙が来たときはさすがに我々も驚いたよ」「それでこの白魔女のアジトはお前らも見つけるのは不可能だろうし」
「そこで、お前らを探しに出かけ昨日襲われてるところに偶然はち会わせたということだ」
「まぁ、バルクスが相手だったら勝てる見込みはゼロだけどな」
「まさか、マーニャに出会えるとは思わなかったが…」
「ミネアの妹を助けてくださったそうですね」
「感謝いたします」
「妹を助けてくれてありがとう」
フローラルとミネアが深々と頭を下げた
「襲われてるところを偶然鉢合わせただけです」
「それと、村長はなんと!?」
「こちらの方が急をようするな」
「話がそれて申し訳ない」
「村長は…」
時をさかのぼること村がバルクスに襲われた日
「最後に…お前たちは…」「大事な…息子だった」
涙目を堪えながら二人の無事を願わんばかりだった
「村長…これ以上耐えきれません!」
「もう少し…もう少しだけ耐えてくれ!」
フロ-ラルにどうやってワタルたちのことを伝えればいいか…
鳥を遣いとして村外に出そうにも鳥はこの魔界では貴重な存在…なんかあると感づかれてしまう…
どうすれば…!?
しかも時間がない…
「うぎゅあ!」
外から悲鳴がする
「皆の者すまぬ…」
途方にくれたその時!
目の前をヒラヒラと黒蝶が通りすぎていった
これじゃ!!
黒蝶を具現化し、遣いとして出せば…
「ふん!」
黒蝶にメッセージを残した
頼むぞ…フロラール
「あっう…」
「ふふふもっと骨のある奴はいないのか」
「しかしお前らのその目…何かを企んでいるな」
「いいだろう、少し遊んでやる」
じわりじわりなぶり殺される村長たち…
しばし時間が流れ…村人に限界が見え始めたその時!
「そこまでじゃ!!」
村長がそこに立っていた
「皆の者待たせたな!」
村長が現れたことで白魔女たちにメッセージが発信されたこと
それと、村長が現れたことにその場が沸いた
「おおおおおお!!」
村長を見たバルクスは何か引っ掛かることがあるようで
村長に問うた
「おや、お前どこかで見たような…」
「ワシのことなんて覚えていないじゃろうな!」
「名前は?」
「名前などとうの昔に捨てた!」
「皆のもの…いくぞ」
皆の者が臨とした表情でバルクスに一斉に剣を構え
そこには先ほど怯えながらも何とか必死に耐えしのいでいた時の
村民の姿はなかった
村長と村民の気迫がバルクスに伝わってくる
その姿を見てバルクスも嬉しそうに笑いだした
「フハハハハハ」
「まさかこの私に勝てると思っているのか!?」
「いいや、まさか勝てるとはおもっていないだろう」
「しかし、その一点の目の曇らぬその目!」
「久しぶりに見る…」
「みごと!!」
「私も久しぶりに全力をもって応えよう」
「皆の者…いくぞ!!!!」
「ウオオオオオ!!!!」
勝負は一瞬で決したようだった
「ハハハハ」
「久しぶりに楽しいひとときであったぞ」
「おまえ(村長)のことは思い出さなかったが、
このことはおまえと村民も含め覚えておいてやろう」
バルクスが大きな翼を広げ
空へ飛び立とうとした時ポツリと言った
「しかし、村長と村民どもが何を守ろうとしていたのか気になるな」
「あと妙な波動が外へ出ていったのも」
「あれを使えば…」
「まぁ今日は気分がいい、村長と村民に免じて大目に見てやろう」
「ふっ今日の俺はどうにかしてるな」
そう言い残しバルクスは闇の空へ消えていった
「村長のメッセージは何と!?」
ミネアが困った表情でフロ-ラルに助けを求める
「時間がなかったので、ほとんどメッセージはありませんでしたよ」
「バルクスに襲われて自分の命は短いだろうと…」
「そして私の大事な息子のワタルとツバサがそちらへ向かうだろうから
助けて欲しい導いてやってくれとのこと」
「そして最後に…」
「最後に!?」
ワタルとツバサが食い入るようにフローラルに問いただした
フロ-ラルは涙を流しながらこう答えた
「愛していると伝えてほしいと…ウッウッ」
「うっ…うっ…うぉおおおおおおおお!!」
ワタルとツバサは泣きながらその場にへたりこんだ
バ-ジェットやミネア、マ-ニャ、白魔女含めみんな泣いていた
「そんな…なんで…なんで!?」
ワタルが泣き叫んでいる
「そんな言葉…ずるいよ村長…」
ツバサが言った
それからしばらくしてみんなに慰められながら
ワタルとツバサは自分の部屋へと帰っていった
ワタルとツバサやみんなが帰ったのを確かめ、
フローラルは独り言のように言った
「ワタルやツバサたちにお前の名前を
打ち明けてなかったみたいだから言わなかったけど」
「何で先に逝ったんだよパトリオット!!」
「うっ…うっ…うっ」
フロ-ラルはワタルやツバサの前で何とか気丈に振る舞っていたぶん泣き崩れた
「うわああああ」
ミネアが悲しそうに見ていた
「フローラル様…」
「すまないミネア少し肩を貸してくれるか…?」
「いいですよフロ-ラル様…」
フロ-ラルとミネアはいつまでも抱き合っていた