日陰彼女
羨ましいと思う。
ボクとは真逆の日光に当たる明るい彼女が。
いつだって笑顔だから。
ボクは表情の変化に乏しいから。
彼女はいつだって中心人物だ。
そう、小説や漫画でいうと主人公。
ボクはモブ中のモブ。
その他大勢。
村人Aにすらなれない村人Bとかそんなもの。
頭も良くて運動もできる文武両道。
ボクの成績なんて中の上がいいところ。
運動は苦手。
綺麗でスタイルも良くて、笑顔が可愛らしい性格もいい子。
だというのに、彼女は何が不満だったのですか。
その外観も中身も完璧でしたよね?
何が不満だったのか教えてください。
何が足りなかったのですか。
何が不要だったのですか。
美しかった彼女から流れるのは、他の人と同じ赤黒い醜いソレ。
彼女の机に置かれた汚れなき白の百合。
菊じゃないんだ、とか、下らない疑問。
確かに彼女には似合うだろうけれど。
脳裏に焼き付く彼女の笑顔。
瞼をちらつく彼女の最期。
「要らないなら、くれればよかったのに」
彼女の全ては、ボクがどんなに頑張っても手に入らない。
ボクが欲しかったもの。