ギルド
ギルドの説明前半です
それから小一時間すると、ガインが戻ってきた。
「それで?結局いくらになったんだ?」
「そう急ぐなよ。ほら、これがアシッドウルフの報酬だ。中身は自分で見てみろ」
ニヤニヤ顏でガインは袋をレンに放り投げる。
「ん。確かに受け取った。じゃあ、中身を見てみるか。」
受け取ったレンがその袋を開けると、そこには……
「金貨13枚と、白金貨1枚か。……白金貨?」
「反応薄いな……もっと驚いてもいいと思うんだが……」
「いや、驚いてるさ。金貨になるかも、ってくらいじゃなかったのか?」
「ああ、それなんだがな、どうやらあの素材の中に『メタルウルフ』がいたらしくてな。それのおかげだ。」
「メタルウルフ?なんだそれは。アシッドウルフじゃないのか?」
「ああ。ウルフ系モンスターの最上級だ。だが、それほど強いというわけではない。とにかく逃げ足が速いんだ。これを見つけて安定して狩れるのはAランククラスの冒険者じゃないと厳しいな。」
「まあ、狩るのが難しい、というのはわかったが、それがなんでこんなに高くなるんだ?希少価値だけでここまで値は上がらないだろう。」
「メタルウルフのように、モンスターの中には『メタル』という名称がついているモンスターがいる。そういうモンスターは既存のモンスターの形をしているが、体が何らかの金属でできている。今回は、なんと体がオリハルコンだったらしくてな。オリハルコン自体の売値もあるが、オリハルコンの体をしたメタルウルフなんて始めて見つかったからな。その発見料も込みってわけだよ。」
「つまり、俺達は運がよかった、と。まあ、金があって困ることはないしな。ありがたくもらっておくよ。」
「そうしておけ。もう銀貨10枚は引いてあるから、そのまま持っていってくれていい。」
意外なところでラッキーな収入があったので、少しホクホク顔でレンはガインから白金貨一枚と金貨13枚を受け取るのだった。
それから……
「到着したぞ。ここがギルドだ」
ガインが自慢げに目の前の建物を紹介する。
「これがギルドか。想像してたよりもきれいなんだな」
「確かに。私もレンの話してたイメージから酒場を巨大化したものをイメージしていたが、そういうわけでもないのか」
二人の言葉に苦笑しながらガインは説明を続ける。
「まあ、酒場もついてはいるし、建物が綺麗だろうと、そんなもの関係ない!とでも言いたげな荒くれ者もいるから、あながち間違ったイメージでもないさ。それに、ギルドは商人も利用するからな。そういう人たちにもすんなり受け入れられるように、ギルドもいろいろ工夫してるのさ」
「商人?ギルドって冒険者以外にも利用者がいるのか?」
「ああ。ギルドにはいくつかの部署があってな。それぞれ『冒険者ギルド』『商人ギルド』『魔道士ギルド』『民間ギルド』と呼ばれている。すべての部署を合わせた総称が『ギルド』ってわけだ。冒険者ギルドは、多分二人が想像している通りだな。個人、組織からの依頼や、その以来を受ける冒険者を管理する部署だ」
よくあるファンタジー物に出てくるような冒険者とさほど変わりはないな、とレンは考える。まあもちろん差異もあるのだろうが。
「商人ギルドは、商売をする場所と、扱う品物の概要を申請する部署だな。屋台程度なら大丈夫だが、ちゃんと店舗を持って商売するとなると、ここの許可が必要だな」
「なら、魔道士ギルドは?というか、呼び方は『魔道士』から『魔法使い』に変わったんじゃなかったのか?」
「ああ、それにはいくつかの説があるんだがな?最近の噂だと、なんでも今の魔道士ギルドのトップが『魔法使い』が『魔道士』と呼ばれていたころから生きているから、らしいぞ。ま、あくまでも噂だけどな」
それを聞いたレンはリーナに小声で語りかける。
「(もしかしたら知り合いかもな)」
「(いやさすがにそれはないだろう。呼び方が変わったのだって1000年前だぞ?私がアルマギアを離れたのは3000年前だ。さすがに知り合いが生き残っているとは…いや、まああいつらならなんとも言えないな。)」
やっぱり仲間も化物ぞろいだったらしい。と嘆息するレン。
「それで、最後の民間ギルドというのは?」
リーナが話をそらすようにガインに問いかける。
「民間ギルドというのは、その名の通り民間人のためにある部署だ。その街に住む人はどこどこ出身の誰ですよって証明するために、10歳になると、ここで民間人用のギルドカードを発行するんだ。家を買って住む場合もここに申請する必要があるし、住民のクレームを聞いたりもする。」
「(なるほど。役所がわりってわけか)」
「(……雰囲気ぶち壊しじゃないか。せっかく異世界に来たというのに……)」
「(リーナは帰ってきただけだろう)」
「(私にとっても3000年後の世界なんて異世界みたいなものだよ)」
ふーん、そんなものか。と返すレン。
「さて、ギルドの紹介はこんなものか。じゃあ、さっそく中に入るぞ。いつまでも入り口で立ち往生ってわけにもいかないからな。」
「そうだな。じゃ、行くとするか。」
とりあえずギルドに入る三人。だがなんとなーく、騒がしくなるんだろうなーという確信めいた思いが胸に渦巻いているのであった。