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魔法使いレン  作者: 雪零
ラージハルの街
6/7

驚き、驚き、また驚き

今回は、今のアルマギアの説明回の様なものです

「・・・い。おい!起きろ!」



ゴン!と。

リーナは文字通り蓮也を『叩き起こす』。



「痛っつ!・・・なんだ?街に着いたのか?」



「全く、呑気にもほどがある。少しは状況を見ろ。」



「状況・・・?」



蓮也は不思議そうに辺りを見回す。すると・・・





「なんで兵士らしき人達に囲まれて剣を突きつけられてるんだ?」


「そんなの知らん。私に聞くな」




絶賛大ピンチ(?)の光景が広がっていた。



「それで?剣を突きつけて俺たちをどうしようと?」


「おとなしく投降しろ。そうすれば手荒な真似はしないと約束する」


「いきなり剣を向ける奴の言葉を信じろと?」


「まあ待て。おい、衛兵。投降すればいいんだな?」



急に衛兵の言う通りにしようとしはじめるリーナの態度に疑問を持ち、蓮也は小声で尋ねる。



「(おい。どういうつもりだ。)」


「(バカ。蓮也、少しは考えてもみろ。こいつらの格好を見れば何処かの組織に所属しているのは一目瞭然だ。なら、こいつらについて行けば・・・)」


「(人のいるところに辿りつける・・・と。なるほどな。)」



蓮也は納得し、リーナと同じようにこの兵士らしき人物達に向けて言う。



「悪かった。投降しよう。」


「協力、感謝する。では、すまないが手足を拘束させてもらおう。それが終わったら、あの馬車に乗ってくれ。」



蓮也がもう一度辺りを見回すと、確かに少し離れたところに馬車が見える。



(まあ、縛られたくらいでこいつらにやられるほど弱くは無いしな。)



そんな事を心中で考えつつ、蓮也とリーナは手足をロープで縛られ、馬車に乗せられるのであった。





そのまま体感で数時間ほど進むと、ふと前方に大きな壁が見えてきた。



「あそこはなんだ?」



蓮也が当然の疑問を口にするが、兵士達は逆に驚く。



「あそこはラージハルの街だ。そして、私達はラージハルの街の守備隊だ。君たちはラージハルの街を知らないのか?ならなぜあそこで休んでいた?」


「俺は街に着いたら起こしてくれといって寝ていただけだ。リーナに聞いてくれ。」



そう言われて兵士はリーナに顔を向ける。



「私達はもともと、どことも知れない山奥で魔術の修行をしていたんだ。そうしたら、私達の育ての親が、そろそろ外の世界を見てくるべきだろうと言って、私達を転移の紋章が刻まれたゲートに突き落としたんだ。そうしたら、向こうの山の麓の森で目覚めた。そこから当てもなくさまよってここまで1日かけて来たら、お前達に捕まった、と言うわけだよ。」



リーナがペラペラと嘘を並び立てると、兵士は驚いたように目を見開く。



「じゃあ、君らは『ヴェノム』のメンバーじゃないのか?」


「ヴェノム?なんだそれは?」



蓮也が聞き返す。が、



「いや、違うならいいんだ。そうか。良かった」



兵士はただ安堵しながら自分の発言を誤魔化すだけだった。

まあそれは後でもいいか、と蓮也は考えて、もう一度質問する。



「ヴェノムとやらがなにかは知らないが、そんなに簡単に人の話を信じてもいいのか?お前らは街の守備隊なんだろ?」


「ああ。信じるに値するだろう。なんせ今時『魔術』や『紋章』なんて言葉を使っているんだ。私が読書好きな人間でなければ、君らは変人扱いだろうさ。」


「・・・どういうことだ?」



蓮也はわけがわからない、といった様子で尋ねる



「1000年も前に廃れた呼び名を未だに使い続けていると言うことは、余程の山奥に住んでいたと言う確証になる。そんな人間がヴェノムのはずがないからな。それに、メンバーならもっとましな嘘を付くはすだ。そんな信じられないような真実よりも、な。」



なるほど。3000年前の知識しかなかったのが幸いだったのだろう。

この兵士は上手くリーナの嘘を信じ込んでくれたようだ。


そのまま蓮也達はラージハルの街の外壁にある守備隊の詰所に案内される。



「さあここだ。一応取り調べ室ということになってはいるが、そんなに物々しい場所ではないので安心してくれ。」



そう言って蓮也達を縛る縄を解くと、ひとつの部屋に案内される。

確かに、入ってみると取り調べ室というより、ただの会議室といった面持ちだった。



「さて、自己紹介から行こうか。俺はこのレイダー領ラージハルの街の守備隊隊長、ガインだ。」


「俺は「私はリーナ。リーナ・ラミアスだ。よろしく。」



蓮也が口を開こうとすると、遮ってリーナが自分から自己紹介を始める。



「(おい、なぜわざわざ遮った)」


「(遮りもする。蓮也。今そのまま本名を名乗ろうとしただろう)」



何かまずいことがあるのだろうか?と蓮也は首を傾げる



「(考えてもみろ。『三神蓮也』は名前としてアルマギアではかなり珍しい部類に入る。せっかく出自を誤魔化す嘘をついたのに、名前が珍しいからと出身地を聞かれ回る羽目になるぞ。)」



なるほど。と蓮也は納得する。

外国人の転校生に「どこの国の人?」と聞くために群がる様なものなのだろう、と。

リーナが『クロイツ』まで名乗らなかったのも、似たような理由なのかもしれない。



「俺はレン。レン・ラミアスだ。」


「(蓮也だからレンか。安易だが悪くないな。姓は考えつかなくて私のを真似したのか。)」


「うん?二人は兄弟だったのか?」


「いや、捨て子だった俺たちを拾ってくれた育ての親の姓を二人で名乗っているだけだ。」


「・・・すまない。余計なことを聞いたな。」


「いや、いいさ。気にしてない」



もともと嘘なので気にするもなにもないのだが、そう言うわけにもいかないので、気にするなとだけ返す、蓮也改めレン。



「しかし、君たちの『親』も随分と思い切ったことをするものだな。君ら二人だけをモンスターもいるこの平原に放り出すなんて。」


「仕方ないさ。転移先はランダムみたいだったからな。それに、二人きりでもない。」



リーナの言葉に不思議そうな顔をするガイン。

対するリーナは、懐から小鳥のサイズまで縮んだフェニックスを取り出した。



「こいつだよ。一緒に暮らしてたんだが、餞別替わりに連れて行く許可をもらったんだ。」


「・・・それは、フェニックスか?」


「おお。よく一目でわかったな。今は小鳥サイズだと言うのに。」


「サイズが小さくても、特徴は変わらない。それに、うっすらだけど体に炎を纏っているからな。」



どうやらガインは以外と博識らしい。



「しかし、そんな伝説級の聖獣がいるようなところに住んでいたのか。随分と人里離れたところに住んでいたんだな。」


「まあ、私達も家がどこにあったのかわからないしな。何せ、森の中、と言うことしか手がかりがない。」



なるほど。どこかわからない、と言うことにしておけば、後からボロが出ることも無いってわけか。と、レンはリーナの詐欺師っぷりに感嘆する。



「さて、事情聴取はこれで終わりか?なら、街に入りたいのだけど?」


「それなんだが、身分証がない人は通すわけにはいかないんだ。」



ここまで来て街に入れないのか?と思ったレンだったが、どうやらそういうわけではないらしい。



「だから、身分証の無い人間が街に入るためには、銀貨10枚を払ってもらった後、俺の案内でギルドに登録しに行くことになるんだが・・・君たち、金はあるか?」



二人はそろって、無い。と自信満々に答える。



「胸を張っていうところじゃないと思うんだが・・・。まあ、そういった人のための救済措置もある。何か換金できそうなものを持っていればここで換金できるし、それでも足りなければ、ここで金を貸して、後で返してもらうということもできる。」


「換金できるもの、か・・・。モンスターの素材なんかでどうだ?」


「ああ。それなら大丈夫だ。なんの素材なんだ?」



リーナはレンに言ってコートに収納してある何かの毛皮や牙を次々と取り出していく。

ガインはその光景に驚き、レンに詰め寄る。



「!?そ、それは『魔法陣』か!?それも『収納魔法』!」



魔法陣?収納魔法?と聞きなれない言葉に首を傾げるレン。



「あ、ああ。すまない。取り乱した。君たちには『紋章術』と言った方がいいかもしれないな。それで、それは『収納の紋章』なのか?」


「ああ。そうだ。だがそんなに驚くようなものなのか?」


「そりゃ驚きもするさ。今の時代、魔法陣が書けるということがまず珍しい。しかも、それが『収納魔法』の様な汎用性の高い魔法陣となると、書けるのはごく一部だからな。どこでそんな高価な一品を手に入れたんだ?」


「収納の紋章に関しては、リーナが書いた。それと、世間では『紋章術』は『魔法陣』って呼ばれてるのか?」


「その通りだ。君たちは人里離れたところに住んでいたようだから知らないみたいだが、1000年前あたりから魔術は『魔法』、紋章術は『魔法陣』、魔道士は『魔法使い』とその呼び名を変えている。」



やっぱりこの時代の常識を学ぶ必要があるな。とレンは考える。出自のおかげである程度誤魔化せても、限度があるだろう、と。



「それはそれとして。素材といったら今持ってるのはこの程度だが、これでいくらになる?足りるのか?」



そう言うレンの目の前には、牙と毛皮が10個ほど積み重なっている。



「ちょっと見せてくれ。・・・って、これは!」



今日は驚きまくっているガインである。心臓止まったりしないだろうな、とレンは心配するが、その驚きの元凶が言えたことではない。



「これは『アシッドウルフ』の素材じゃないか。アシッドウルフは唾液が酸になっていて、噛まれるとひとたまりもないCランクモンスターだぞ?よくこんなに倒せたな。」


「Cランクがどの程度かわからないが、対して強くもなかったぞ?」



その言葉にまた驚くガイン。



「そうか。二人は強いんだな」


「まあな」



もういちいち気にするのはやめたようである。



「とりあえず、これだけあれば銀貨10枚どころか金貨にだって届くさ。当面の生活費は問題なさそうだな。」


「銀貨1枚の価値がまだよくわからないんだが、聞いてもいいか?」


「そうだったな。驚くことが多すぎて説明を忘れていた。価値・・・か。大体、リンゴ1個で銀貨1枚~2枚といったら伝わるか?その銀貨が100枚で金貨、さらに金貨が100枚で白金貨だ。わかったか?」


「ああ。大体分かった。」



日本円ではリンゴは100円~200円くらいなので、銀貨1枚は日本円で約100円と考えればそう違わないはずだ。ということは、金貨1枚で1万円、白金貨1枚で100万円といったところだろう。



「まあ白金貨なんてものをつかうのは貴族や大商人くらいのものだから、俺たちが気にするのは金貨までだな。さて、ちょっとまっててくれ。いま素材を換金してくる。」



そういって席を立つガイン。それを見送ると、レンとリーナはなにやら話をはじめる。



「リーナ。さっきの話、どう思った?」


「『魔法』の話か?確かに驚いたな。やっぱり3000年も経つといろいろ変わるものだな。とりあえず、今の時代の常識を把握するまでは、私達は軽率な行動を慎むべきだ。」


「ああ。『紋章術』・・・いや、『魔法陣』ひとつ取っても『書けるのが珍しい』だ。考えなしに魔法を使って、それが現代では失われた技法だったりしたら洒落にならないからな。ひとまずの目標は、『今の』アルマギアになじむ、といったところか」



とりあえず目標を決めた二人は、これからまだまだ驚くことになるだろうガインを心配しつつ、同じことを考えているのであった。




((これからしばらく力を出せないのか・・・はあ。))




どうやらレンも段々リーナの戦闘思考に染められているようであった。






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