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偽典Ⅱ  作者: 萩井灰介
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八話:ギルド加入

side:イズミ


ギルドの扉が開かれ・・3人の女性が入ってきた

一人はエルフ、一人は獣人、最後の一人は・・人間だと思われる少女が一人


(はぁ・・ぁ~ぁ・・気許しちゃったよ・・これで独りになると寂しい思いするだろうなぁ~・・あ~あ前の僕なら冷めた目で見ただろうなぁ~・・うん、でも悪くない・・だって温かいし)


落ち込んだように俯いていた少女・・イズミは途中からは少し微笑んで前を向いて歩いていた


「む?どうしたイズミ?何やら嬉しそうだが・・」


エルフの女性・・アマリアはコロコロと表情が変わるイズミを見て不思議に思っていた


「ふん!そんな事はどうでもいい!・・どこか気分が悪いとか痛い所があったら言うんだぞ!後から言われたら迷惑だからな!」


顔を赤くして目を逸らして話しをする獣人・・シャムは不機嫌そうに言いながらもチラチラと視線をイズミに向けていた


「んー?アマリアが僕に生きている限り一緒にいる!って言ったのは愛の告白なのかなって『ぶは!?』おろ、ちょうど受付が空いてるから行くね~」


無邪気に笑ったフリをして黒い笑みを内心浮かべてとことこ歩いてくイズミ・・思い出したのか恥ずかしさで顔を真っ赤にして床で悶えているエルフを残して・・


「おや?先程ご活躍された小さな姫君ですね・・失礼、ギルドマスターからそう呼べと指示されたもので・・」


イズミがカウンターらしき場所の近くまでいくと眼鏡が似合うキリッとした委員長のような女性といた


「小さい・・それに姫君・・?そう、ラルドは後でお話しないと・・ね・・まーいいやーその言い方は止めて欲しいなーイズミって呼んでねーそれじゃぁ僕はギルドに入りたいんだけれど手続きお願いできますかー?」


一瞬、黒い笑みを浮かべたイズミだが・・すぐ元のいつもの無表情ではなくのんびりした表情で話しかけた


「はい、そうですね私の名前はスフィンです、よろしくお願いします・・ではまずギルドカードについてご説明致します・・これがギルドカードですね」


女性がカウンターにことりと置かれた薄い水晶で作られたかのような半透明の真ん中に白い文字でFと書かれたカードをまじまじと見ていた


「これがギルドカードです・・特殊な製法で作られたもので金庫の代わりにも身分証明書にもなりますので紛失されますと金貨5枚頂きますのでご注意ください・・それでは他の説明をさせていただきます・・まず、この水晶にはFと文字がついていますね?これがあなたのランクを示します、依頼を達成するか魔物の素材を持ってこられた場合にギルドポイントが加算されます・・もちろん報酬や換金の方もさせていただきますのでご安心を・・ランクはSSSランクからFランクまでありBまでは依頼や魔物の素材でのポイントでランクアップできますが・・A、S、SS、SSSランクは特殊な条件がありますので条件を達成して頂いた方のみランクアップできます・・例えばAランクの場合ですと満月の夜に何らかの依頼を・・一般的ですと満月草の採取ですね満月の魔力を吸収して満月の夜にだけ咲く花です・・それを採取して依頼を報告するということですね・・何故、満月の夜なのかと申されますと魔物の強さがギルドでの強さのランクが1つか2つ上がるからです・・例えば一角兎と呼ばれるランクDの魔物ですが満月ですとCランク相当の強さになりますので満月の夜に依頼を受けるというのは強さの証明にもなりますので・・ですが例外がありまして竜種を討伐したなどのランクS以上の依頼を達成された方には該当のランクに上げさせて頂きます・・ただいま説明させて頂きました所でご質問はありますか?」


眼鏡をくいっと上げて説明を一息に終えた事におぉーと感心していた


「すごいねー噛まないで言うなんてーうん、何もないよー?続けてねー」


あははーと笑うイズミを見て少し頬を染めたスフィンはゴホンと咳き込みながらも話しを続けた


「ゴホンッ・・では、後の手続きは簡単です・・そのギルドカードに自分の血をつけていただければ自分の情報が名前、年齢、種族、職業、属性、称号が出てきます、この特性は水晶によるものと絶対神アルス様のお力によるものとの考えもありますが・・よく分からないというのが現状ですね・・ちなみに表示された情報は相手には見えず、自分にしか見えません・・見せる場合には特定の人には・・そうですね、私の場合には< スフィン オープン >と、名前を呼びながらオープンと言えば見せる事ができます・・逆に誰の名前も言わずに< オープン >と言えば誰にでも見る事が可能になりますのでご注意ください、これの応用のようなもので< 称号 オープン >と言えば称号のみ見せる事も可能です・・そして閉じる場合には< クローズ >と言えば見えなくなりますので覚えておいてください、称号につきましては何らかの条件を達成するとつきます・・ですが、称号持ちというのはなかなか入手が難しいものから簡単なものまで色々とあるのですが・・中には特殊な称号には自分の能力が上がるものと特殊な能力を得たりと良い事が多いのでがんばって入手してくださいね?・・それでは他にご質問はありますか?」


(おぉー!情報が見えないって良いな~これでめんどくさい事は起こらないだろうし~ちょっと痛いけど我慢と・・)


カリカリと歯で指先の皮膚を切るとペタリと水晶に押し当てた・・すると水晶が一瞬黒く光るとイズミに赤い文字が表示された・・その文字はアルファベットを繋げたような見た事のない文字だったが書かれている事は頭で分かった


名前:イズミ

年齢:0歳

種族:神竜

職業:闇使い

属性:闇

称号:邪神の愛娘


・・うん、大体予想通りだった・・だけど最後の愛娘って何!?・・むぅ、悪い気はしないが・・気にしないでおこう・・


「終わったようですね・・ですが普通は白い光なのですけど・いえ、何でもありませんそれでは依頼の方は向こうの木の板に張ってある紙をこちらに持ってきてくだされば受注できます・・・受けられる依頼はご自分のランクの2つ上・・パーティーを組んでいる場合は最高ランクの方を基準とさせて頂きます・・後はランクが上がれば・・例えばBの場合はCの依頼以下・・その下のランクの依頼は受けれませんのでご注意ください、これは新人の仕事を無くさない為の措置なので、他にご説明はあるのですがランクが上がれば話す事なので頑張ってギルドランクを上げてくださいね?他に重要な事では期限が決められていたり、依頼を途中で放棄する場合は違約金としてその依頼の報酬の2割を頂きますので覚えておいてください・・それでは、イズミ様の冒険の無事を祈ります」


最後の言葉を言うとスフィンはイズミの方に頭を下げて自分の仕事に戻っていった


「ほへー・・ありがとうございました~・・おお?アマリアとシャムも待ってたの?」


「当たり前だろう・・ギルドカードを作ったのか・・気になるから私と交換しないか?」


「ふん!私は足が疲れたから休んでいただけだ!・・その・・私のも見せてやるからイズミのも見せてくれない?」


アマリアとシャムは近くにあったテーブルに座っていたがイズミの姿を見るとギルドカードが気になるのか見せてくれと言う・・シャムは最後はボソボソと呟くように耳を垂れてお願いしていたが・・


「ぇー、うーん・・ま、いいか~驚く反応も見てみたいしね~シャム・・そんな悲しそうな目で見ないでくれる?見せてあげるから・・」


「な、何を言う!?私がいつ寂しそうに言ったのだ!・・<イズミ オープン>ほら、これが私のだ」


「ふむ、シャムとは交換した後なんだ・・<イズミ オープン>私も渡しておこうか」


2人のギルドカードをまじまじと見るとランクA ランクBと白い文字書かれ内容こう書いていた


名前:アマリア

年齢:72歳

種族:エルフ

職業:精霊騎士

属性:風

称号:理想の探求者


(え?ランクA?・・それに年齢がな「ふむ、何か問題があるのかなイズミ?」・・・うん、精霊騎士かぁーかっこいいなぁー・・他には称号が理想の探求者って・・まぁいいかーいつかは叶うといいねー僕がいるから無理かもしれないけど)


イズミが年齢の部分で疑問に思った瞬間にアマリアが凄く良い笑顔で話しかけたので思考を中断した・・隣でシャムがプルプルと震えているのは気のせいだ


名前:シャム

年齢:24歳

種族:獣人<猫人族>

職業:獣戦士

属性:土

称号:なし


(ふむふむ、シャムは土なのかーそれ以外は特にないかな?)


「ふん!私は称号をいつか絶対に取ってやる・・!何故アマリアにつくのだ・・それにランクBと言っていたが実はAだったと・・悔しいな」


「あぁ、これはイズミと話し終えた後に色々と自分の考えを纏めて進むべき道を定めたらついたんだよ、いやありがたいな、効果は精神系の異常を無効化する能力がつくな・・ランクAなのはイズミが受付に行っている間に満月草を納品したからだな・・イズミのも見せてくれないか?」


シャムがアマリアを睨みつけるが無視してイズミに話しかける


(あららー、僕の話で称号がつくって・・んー、まぁいいかなー?それでアマリアが喜んでいるならそれでいいし)


「えーと、<アマリア オープン・シャム オープン>・・はい、これ質問一切受け付けません」


「ははっ、そんなに凄いものなのか?まぁ、イズミが魔人だとしても私は何もか・・わら・・は?」


「ふん!私もアマリアから話しを聞いた・・例え魔人であったとしても私はイズミについていくぞ!何だアマリア?確認して分かったからといって固まるとは全く情けないなどれ、私は何もお・・どろ・は?」


アマリアが苦笑してギルドカードを見るとピシリと固まりシャムはそれを見て魔人だと思い覗いたが別の事が書かれていたので驚愕のあまり同じく固まってしまった


「さーてと、僕は依頼でも受けにいこうかな~どれど『・・イズミ、凄く気になるんだが・・教えてくれないか?』・・ぇー、だって質問は受け付けないって言ったよー?『ぅ・・わ、私も!気になるから・・その・・教えてください・・』・・うぐ・・分かったよ・・でもさー僕の属性闇だけど怖くないの?」


イズミは予想通りの反応にケラケラと笑いながら依頼の紙を取りに向かおうとしたがアマリアから説明してくれと言われたが意地悪そうな笑みを浮かべていたがシャムの耳を垂れてのお願いには仕方がないと思ったらしい


「む?今さらか?その程度で離れるような覚悟ならした覚えはないな・・ふふ、私はおとぎ話の世界にいるのだな・・竜人がいるなんて・・しかも神竜って何だ?なぁ・・シャム」


イズミは心外だとばかりに顔を顰めたが途中から色々と諦めた表情を出して感情の無い笑みで隣のシャムに話しかけた


「そうね、私としても何の覚悟もなくて仲間になった覚えはないわね・・私としては・・0歳?何?生まれたてなの?邪神の愛娘って・・え?効果何なの?あはは、今日も良い天気ねアマリア・・」


2人して気にしない・・と、いうより他の事が気になるようだ・・アハハウフフと笑いあって少し寒気を覚える空間になっていた


「あららー・・これまたひどい状態に・・仕方がないなー種族はそのままの意味でしょ?で、邪神の愛娘もそのままの意味で・・そう、娘・・なんだよね・・」


イズミは渋々説明をしていたが最後の言葉は落ち込んだ様子で話していたが2人はこれでもかというぐらいに目を剥いていた


「ふむ、そうか・・邪神の娘!?魔王なんて目じゃないレベルじゃないか!!・・まぁ、イズミである事に変わりはないな・・しかも神竜とは・・もはや伝説レベルだな・・」


「そうね・・凄く驚いたけど私も・・だけど効果が気になるわね・・教えなさい!・・いえ、教えてください・・」


アマリアが最後には何かを悟った目をしていたがシャムは効果が気になると最初は傲慢に言い放ったが、途中からは耳がしおしおと垂れて小声で呟いた


「おぉう・・シャム・・凄く撫でたい・・効果ってどうやって見ればあ」


邪神の愛娘:この称号は邪神の娘にしかつかない、この称号を持っている者は邪神に気に入られると手に入る、この称号を持っている者に危害を加えた者・・特に男が手を出すと付近に出現して対象を抹殺するこの称号は取り外しができないので取り外す場合は邪神の許可が必要である


「・・うん、効果は・・僕に危害を加えた者や僕に手を出したりする人に対して邪神・・父さんが出てきて抹殺するって・・」


(いや、え?何これ?わざわざここまで来るの?・・あ、そういえばあの山賊A・B・Cってどうなっただんだろ?ちょっと聞いてみようかな)


「ふふっ、聞いたか?シャム?イズミに近づく害虫は絶対に!始末!するんだ!でないと国が滅ぶぞ?」


「えぇ、そうね・・神様が出てくるものね・・しかも抹殺しに・・怒りがそれだけで収まるのかしらね?・・ふふふ、絶対に守りましょう?アマリア」


2人がお互いを見詰め合って笑いあっている・・ただし目が虚ろで乾いた笑いを響かせているが


「・・あ、そういえばイズミに手を出したあの3人組はどうなったんだ?「え!?もう手遅れ!?」イ、イズミ?あれは遊びだったとお父上にお伝え願えないかな?と、とにかく怒らないでほしいと!」


「んー?ちょっと待っててねー今すぐ聞いてみるからー僕もそれ気になったんだよねー」


(ねー、父さん~いるー?『ん?何だ?あの三人組ならもうこの世にいないぞ?』・・うわ、早いなもう・・まーいいかー)


(『ふむ、いいのか・・それより良い笑顔をしてたじゃないか?俺も少し嬉しい気持ちになったぞ?』・・ぅ・・見てたの?悪趣味だなぁ『お前も俺の立場なら見てただろう?それと同じだ』)


(・・ねぇ、父さんは僕といて良いの?独りがつらくなるよ?『そうだな・・一つ勘違いしてる事があるな・・俺は確かに昔は孤独を楽しんだ・・だがな昔の事だ・・今にして思えばただの強がりだったんだろうな・・今では孤独が辛くなってきた所だったんだぞ?』・・そぅ、僕の未来もそうだったのかもね・・父さん、邪魔者がいなくなったのはいいけど・・あんまりすぐ殺さないでね?殺すときは僕が殺すからね~)


(『ん?そうか?しかしお前に仲間が出来るとはな・・このまま親離れすると寂しい気もするな・・ま、それもまた親の楽しみの一つか』)


(・・と、いうより死んだらそっち向かうんだけどね~だけどいつか何て言わずにすぐにでも会いにいくよ~『・・ふん、まぁ少しは楽しみにしとくか 閉じよ』あらら・・素直じゃないなぁ~僕もだけど)


薄く微笑んで念話を終えると落ち着きなくウロウロしているシャムに達観したような表情になっているアマリア


「あ、聞いたら3人組はもういないって~終わった後みたいだよ?まぁ、勝手に殺さないように言ったから大丈夫だと思うよー」


「む、そうか・・まぁ自業自得という事もあるしな・・運が悪かったとしか言えんな」


イズミが答えを言うとアマリアはさらりと聞き流したのでイズミは驚いた表情をしていた


「あれ?アマリアなら・・何故殺した!?そこまでする必要は無いだろう!って言うと思ったのに」


「ふむ、そうだな・・私は今まで助けるのであれば平等だと考えていた・・だから私は家族がいる里を出てまで旅に出たのだがな・・イズミがいなくなるかもしれないと考えたら辛かった・・知り合ってまもない人々が亡くなるのよりも・・な・・だから私は大事な人は必ず守る、ついでに余裕があるなら他の人を助ける・・これが今の私の考えだ」


アマリアはしっかりとイズミの目を見据えて言葉を放つ・・イズミも笑うのも止めて口を開く


「そう・・だけど人々は何て冷たい奴だ!とも言うだろうね・・それが人だから・・うん、僕はその考えは嫌いじゃないよ?・・僕は依頼を受けてくるよ~」


「おや?素直じゃないな・・む?シャムどうした?」




side:アマリア


「おや?素直じゃないな・・む?シャムどうした?」


不機嫌そうにしならがアマリアを睨むシャムを見ていたがチラリとイズミを見ると視線を戻した


「・・いや、私・・無理やり入ったじゃない?・・だからその・・本当にいていいのかなって・・理由も羨ましいってだけだしね」


寂しそうな表情を浮かべているシャムに対してアマリアはポンっと頭に手を乗せた


「ふむ、私はイズミに聞いた時に別にいいと言っただろう?あの子は・・多分、他人に関してかなりきつく拒絶する子だと思う・・だけどシャムを受け入れたのだから何かしら理由があるんじゃないか?だから悩んでないで楽しめばいい、不安ならば仲良くなればいい・・ただそれだけだ」


「・・ふん!別にちょっと気になっただけよ!何も不安なんて無いんだから!」


(全く・・どうしてこうも素直じゃないのだろうか・・イズミもシャムも)


照れ隠しなのかそっぽを向いて喋るシャムに薄く微笑むアマリア


「なるほど、それが素の口調か・・いつも偉そうな口調だと思っていたが地が出たな」


「な、何よ!別にいいでしょ!?偉そうにしてたって!・・まぁ、あんたたちだけなら元の口調でいいわね」


(おや?何やら信用はしてくれているようだな・・まぁ、良い傾向だな)


アマリアは微笑ましいとばかりに笑い、シャムは机にベタリと横になって顔を隠していた



side:イズミ


「うーん、どれを受けようかなぁ・・パーティーになればAランクは受けれるから・・うーん?」


イズミは最初の依頼をどれにするかと悩んでいた・・Fランクは草刈や子供の世話など家事の依頼が目についたのだが今は外に出てみたいと思い討伐クエストの欄を見ていた


「うーん、何の敵かさっぱり分からないや・・『ねぇ、君一人?僕と一緒に依頼を受けない』ほぇ?いえいえー一緒にいる子がいるので~ありがとうです~『そっか・・残念だなぁそれじゃあまた今度!』・・これで何度目なの?・・対応がめんどくさくなってきたなー・・よし!これにしよう!」


イズミが依頼板の前をウロウロとしていると一人だと思われたのか先程から声を掛けられていた・・男性ばかりでなく女性にまで・・特に女性が声を掛けてきた時には目に欲望がギラギラと輝いてたので全力で断ったり・・その後は受付の人に依頼の紙を渡すとギルドカードに何かの機械?のようなものに通して返してくれた・・その後はアマリアとシャムがいるテーブルを目指す


「ふぅ・・どうして男よりも女性の方が欲望あるの・・アマリアとシャムお待たせ~・・ってここもか」


「いえいえ、ですから『どう?アマリアさん僕のクランに入らない?』いえ、私は『アマリアさんは俺達の所に入るんだよ!お前は引っ込んでろ!』・・・・・ふ」


イズミがアマリアを視界に入れると周りに人がわらわらと・・どうやらクランとやらの勧誘にきているようだとイズミは結論を出した、シャムの方を見ると誰もいないがそれよりもシャムを見る目に侮蔑や嫌悪が混じっているのが分かったが・・アマリアの薄く笑う声を聞くとダッシュで後ろへと走って逃げた


(こ、こわ!?絶対なにかするよアマリア!被害がこっちに来ない所まで逃げ『ザシュッ・・ゴトン』)


「・・・おや?机が真っ二つになってしまったな・・何が起きたのだろう?私は寝不足でな・・うっかり話しかけてきた者に対しても同じ事をするかもしれんな・・さてと、何か話しがあるのか?」


アマリアがにっこりと笑み・・一言で言うのならば凄い笑みを浮かべた瞬間に蜘蛛の子を散らすように群がっていた者達は去っていった


「ふぅ、魔力の無駄遣いだな・・まぁいい・・それでイズミ何か依頼を持ってきたのか?」


「え?あぁ、うんこれ・・さっきの精霊魔法つかったんだね・・」


イズミがそう言うとアマリアは軽く頷いて持ってきた紙を見る・・横からシャムもチラチラと覗く


「あら?・・一角兎?ランクはDね・・もっと強い敵でもいいんじゃないかしら?」


シャムが凄い敵を選ぶかと思ったのか拍子抜けとばかりに言う


「んー?まぁ肩慣らしって所かなー?それにシャムも油断してると危ないよー?どれだけ強くても死ぬ時は死ぬんだからねーってシャムの口調変わってない?前のはおかしな感じがしたけどそれが素なの?」


「そうね、油断は死に繋がる・・基本ね・・あら?気がついてたの?・・私・・初対面の人とかに高圧的な態度をとってしまうのよね・・うん、だからイズミとかと仲良くなりたくて・・その素の口調で・・うん・・」


少しおどおどと話すシャムにイズミが撫でろ!撫でるんだ!とばかりに動く手を片方の手で押さえながら話す


「そ・・そう、うん僕としても嬉しいよー前ならこんなこと思わないなかったんだけどねー」


「ほぉ?イズミとかと?私はついでなのか?」


「あら?いたの?私はイズミが好きだけど・・あなたは・・普通ね」


バチバチと二人の火花が散っている様を見てイズミは見て見ぬフリをして外に出ていこうとすると二人も睨み合いながらもついていった





3人が町の門を潜り抜けて草原に出ると一角兎がいる場所があるとシャムの案内についていった


「ふふん!私が新人だった頃は良くこの場所で狩っていたのよ!・・ほら、あそこにいるわ!」


シャムが自信満々に指を向けた先を見ると10匹程の一角兎の群れがいた・・一匹が中型犬ぐらいの大きさで角が自分の身長と同じぐらいに長く鋭く尖っている


「懐かしいな・・私も苦戦したものだが今は楽に戦えるだろう・・イズミ、あいつは一直線にこちらに向かって飛んでくるからタイミングを合わせて横に飛んで攻撃するんだ・・失敗すれば串刺しだからな」


「うっわー・・兎なのにえげつない攻撃するなぁ・・よし、行こうって・・すごい勢いで逃げてるんだけど・・『え?』」


見るとイズミが一歩踏み出した瞬間に一斉にイズミから離れるように逃げ出した所で頭に声が響いた


(『おぉ、すまんな・・そういえば魔物避けの魔法かけてたな・・かなり強力のな』あれ?そうだったの?それなら切ってよ~・・あれ?タイミング良すぎるって事は見てる?『・・よし!切ったぞ!俺はまだ仕事が残ってるんでな・・閉じよ』・・・後で話し合わなきゃね・・)


「ど、どうしたの?イズミ・・逃げたのは分かるけど追えばいいじゃない!ね?」


イズミが固まって黒い笑みを出していたものだからシャムは怒っているものかと思い嗜めようとしている


「ん?いや何でもないよー何だか父さんが僕に魔物避けの魔法かけてたみたいなんだよねーもう大丈夫なはずだよ?」


「あぁ、それで満月の夜なのに魔物が少ない訳か・・納得した」


アマリアがなるほどと頷いているとイズミは逃げた一角兎を追いかけていた


「お?振り向いた・・おぉー!何か飛び跳ねながらこっち来るよー?」


10匹程・・近くで見れば12匹の兎が一斉に振り向いてこちらに飛び跳ねてきた


アマリアは腰の剣を抜いて両手で持ち正面に構える、シャムも腰から双剣を逆手で握ると両手で持って構えた、対するイズミはボーとしていた


「ふむ、少し多いな・・イズミ、危ないと思ったら離れるんだぞ?後はそうだな・・・一角兎は角と肉が交換素材だけっこう旨いのだぞ?」


「ほほー・・だったら傷つけないで倒せばいいんだよねー?」


「ははは、まぁそれがベストだがなかなか難し『ベキッボキッボキャッ・・ピィィィ・・』・・は?」


イズミがニタリと笑うと自分の影を伸ばして一角兎の地面までくると闇の影で一角兎達の体を包んで首の骨を折っていった・・後に残るのは命が消える音と首の骨を折られた兎の死体のみだった


「うん、上手くいったなぁーさてと、剥ぎ取りに『・・えげつない殺し方だったけど・・今の何?』・・おぉ?まーえぐいかもしれないけど苦しまずに死なせる事ができるからねー僕の職業に闇使いってあったでしょ?だから僕の影で攻撃しただけなんだけど・・怖い?」


唖然としているアマリアとシャムだったがシャムが先に意識が戻り、イズミに質問をしていた


「そうだな・・正直恐ろしいとは思うが・・影を操れるのであれば便利だな・・自分の武器がいつも手元にあるのだからな、それにイズミはイズミだしな気にするだけ無駄に思えてきたさ・・」


「そうね・・私としても怖いとは思うけど・・イズミだしね・・何かもっとビックリするような事しそうだし・・うん、だけど私は・・イズミの仲間でいたいな」


アマリアは何かを悟ったような表情になり、シャムは少し恥ずかしそうに言う


「むぅ・・嫌われたら楽なのに・・嬉しいけど・・だけど生きる為に殺さなきゃいけないってのも事実だからねぇ~・・さてと、剥ぎ取りにいこうか・・あ、闇に沈ませた後に出来るのかな?」


イズミがズブズブと一匹を自分の影に沈み込ませると視覚と触覚を付与して中で解体していった・・後で触覚は付与しなくていいやと思ったのはこの後になる・・だって・・うん、あれだよ?


「はい、出来上がり~♪・・すごく綺麗に出来たよ~あれ?血とか内臓とか闇の中だけど・・腐らないよね?」


アマリアとシャムがイズミの影の中で何をしているのだろう?と、思っていると綺麗に血抜きされた肉と皮・・そして角が出てきた


「む、すごいな・・ここまで綺麗とは・・どうやったんだ?」


「え?中で掃除機・・あぁ、体に小さい穴を開けて血管とかに影を張り巡らして吸引しただけだよ~内臓もね~・・凄く細かい作業だったんだけどスムーズに出来たんだよねー・・父さんのお陰かな?」


「そ、そうなのね・・とりあえず焼いて食べない?そろそろお昼の時間だし・・私は木を集めてくるから周辺の警戒をお願いねー」


そういうとピョンと身軽に飛び跳ねると風のように走り去っていくシャム


「おぉー早いなーさてと、僕はちょうど草の布団があるこの場所で寝るとす『さて、イズミ周りに敵がいないか調べておこう』あ~ぅ~・・寝たいのに・・」


襟を掴まれてズルズルと引っ張られていくイズミ・・引っ張られながらも寝ているとアマリアに今度は殴られて起こされたりしたのは後の話




一通りイズミ達が周りを調べ終えるとちょうどシャムが帰ってきて火を灯すと串の代わりに木の枝を突き刺して焼きあがるのを待つ


「ぉー、良い匂いがするよ~・・自然の恵みに感謝ってそういえば魔物って食べても大丈夫なの?」


イズミが兎の串からの匂いに目を細めているとふと思いついたのか質問をした


「あら?この魔物は大丈夫だけど毒を持ってる魔物もいるのよ?まぁ、新種の魔物はすぐには食べない方がいいわね」


「そっかー・・お、出来たみたい~いただきま~す♪・・うん、おいしいな~」


「こら、イズミ行儀が悪いぞ?・・ふむ、いただきます・・いつ食べても旨いな・・」


「・・ねぇ・・私だけ仲間外れみたいなんだけど・・いただきますって何?教えてくれないの?」


イズミが真っ先に手を伸ばして串を取って食べようとする前にアマリアも2人共、自分の胸の前で両手を合わせて言う言葉に自分は知らないと疎外感を覚えたのか少し涙目になって言っていた


「あらら~・・可愛いな~・・よ~しよし撫でてあげるからおいで~」


「ふん!そんなもので許すと思ってるの!?・・私が良いというまで撫で続けたら許してあげる・・・・あぅ・・にゃふ」


イズミがおいでおいでと手を招くとシャムは恥ずかしいのか顔を赤くしながらもイズミが正座をしていた為に膝に頭を乗せると片手で串を食べつつ片方はシャムを撫でていると気持ちいいのか目を細めて甘えた声を出していた・・その間・・アマリアがシャムを睨み殺すとばかりに目を向けていたがシャムは気がつかないようだ


「ほ~れほれ・・近所の野良猫ですら警戒心を解かせて思うがままに触らせてくれる撫でテクを見せる時かなぁ~・・ごろごろ~『あふぅ・・くっ気持ちい・・い・・うう、でも少し恥ずかしい』あ、串食べ終わったからもう一本・・『イズミ!当たってる!当たってるから!』・・ん?」


イズミがゴロゴロとシャムをいじるのを楽しんでいると串を食べ終わり目の前の串を取ろうと前屈みになると膝に頭を乗せているシャムの横顔に小柄な体に不釣合いな大きな胸がシャムを押しつぶしていた


「おぉう・・ん?ほれほれ~『にゃふ!?押し付けないで・・あふ・・良い匂いがする・・頭がくらくらしてきた・・』あれ?やりすぎた?・・おぉ?シャムどうしたぬあっ!?『ペロペロ・・あふ・・』あははは!くすぐったい!僕が悪かったから止めて~!」


イズミが体をどかそうとするが良い事を思いついたとばかりに黒い笑みを浮かべるとシャムの顔に自分の胸を押し付けだすと最初は抵抗していたが段々と抵抗が無くなってくるとやりすぎたかな?と思い止めるとすくりとイズミの横に座りイズミをボーとした目で見ていたがいきなり押し倒され首筋を舐めてきたのでイズミはいたずらの仕返しをされたと思っていた・・が、目が縦に割れていたり、顔が真っ赤になっていたり、呼吸が荒い所を見てアマリアが即座に動いた


「この万年発情猫が!?昼間から盛るな!『にゃぁぁぁ!?』・・ふぅ、イズミ大丈夫だったかな?だから言っただろう・・もう少し女性らしくするんだ!そ、その胸を押し付けるなど・・駄目なんだからな!分かったな!『うぅ・・あれ?私・・何してたの?って誰が発情猫よ!?失礼な!』チッ・・目を覚ましたか・・寝ていればいいものを・・」


シャムの襟を掴むとそのまま振り向いて空中へ投げる・・もちろん猫だからか空中で受身を取っていたが・・その後はシャムが文句を言うが少しの間の記憶が飛んでいるようだ


(あれ?アマリアの性格がどんどん悪くなっていってる気がするのは気のせい・・?うん、気にしたら駄目だよねーと、いうか獣人にも発情期ってあるのかなぁ?ほへー・・あれ?僕も対象に入ってるの?同性なのに?・・ぁー・・うん、気のせいかな)


「だ、だって!あれに耐えれるのアマリアは!?どんな猛者だって無理だと私は思うわ!だから私は悪くないはずよ!『え?あれって僕の事?』そうよ!だってあの胸を見てよ!まるで食べてくださいと言ってるかのように強調してるじゃない!『えぇぇ!?いやいやいや!誰も強調してないよ!』」


シャムが恥ずかしさのあまり無茶苦茶な事を言うがイズミは胸を強調して誘っていると言われたのを理解したらしく全力で首を振っていた・・ただ、肌着に近い服1枚だけの装備なので間違いでもないのだが


「・・私もその意見には賛成だな・・だが、それはシャムの精神が軟弱なのだからだろう?『な、何ですって!?』・・そこでだ・・私も膝枕をしてもらい検証をしてもらいたいのだが・・どうだろう?」


キリッと真顔で正論っぽい事を言うアマリアだがイズミもさすがにおかしいだろうと突っ込む


「え?いやいやいや、おかしいでしょ・・膝枕ぐらいなら良いけど~・・何故にもう一回胸を押し付けなきゃいけないの!?・・まー、とりあえず食べてから話そうか・・焦げるよ?」


イズミの言葉に2人はハッとして急いで残りの串を持つと食べていく


「・・そういえば結局・・いただきますって何なの?・・教えて欲しいんだけど・・」


「いただきますは食べる前に言って動植物・・食材の命に感謝を・・食べ終わったら、ごちそうさまでした・・作ってくれた人に感謝を・・確かそんな感じの言葉だったはずだよーアマリアには教えたしね」


「そぅ・・良い言葉ね・・いただきます・・これで良いのかしら?アマリアは教えてもらっていたの?」


「ふふ、そうだな・・さ い し ょ に教えてもらったんだよ・・」


アマリアがイズミから最初に教わったと強調するとシャムは悔しそうに睨みつけるがアマリアは勝ち誇った顔をしていた・・が、シャムも何かを思いついたのかニタリと笑った


「あら?私は膝枕してもらったのだけれど・・アマリアはしてもらった事があるのかしら?・・ふふっ」


シャムが話し始めるとアマリアが苦い顔をしたので今度はシャムが勝ち誇った顔をしていたがお互いの顔を睨み続けて火花を散らしていると


「ふむ、そうだな・・この際だ・・イズミにどちらが好きなのか聞いてみようか・・」


「そうね、私は撫でてもらえるほどなのだから・・後で泣いてもしらないわよ?で、どうなの?イズミ」


シャムがイズミを呼ぶが返事が無い事におかしいと思いアマリアも気になったのかイズミの方を見ると


「うはー・・やっぱり闇はプニプニしてて気持ち良いなー・・さてと、寝ようかな・・ふあぁぁぁ」


2人の話など興味は無いとばかりに自分の影をプールのように周りに敷き詰めると大きな枕の形をした闇もついでに作ると抱きついてスヤスヤと寝だした


「・・まぁ、寝る事もイズミらしいといえばらしいな・・ウィル、すまないが周りの偵察を頼む・・何かあったら言ってくれ《ハイハーイ!マスター了解しました~怪しい人が近づいても知らせますね~》すまないな・・さてと・・おい、何をしている?『にゃ?』猫の振りをするな獣人」


イズミがすやすやと寝ている横にこっそりと近づいて横になってくっつこうとしているシャムを見つけて呼び止めたが猫のフリをしてやり過ごそうとするシャムに呆れていた


「だ、だってこのイズミの影・・闇だったかしら?プニプニしてて気持ちいいんだよ?それに太陽も気持ちいいし・・凄く寝たい・・と、いうより眠たい・・ふあ~ぁ・・すぅ」


足元の感触を楽しむかのように触ったり摘んだりを繰り返して横になるとそのままイズミの隣で寝てしまったシャム


「おぃ!全く・・うるさくしてもイズミを起こすしな・・私もたまには休むか・・うん?確かに・・これは不思議な感触だな・・癖になりそうだ・・っと、イズミの横に寝させてもらおうかな・・」


アマリアもイズミが出していた闇に乗ると不思議な感触を楽しんでいたがイズミの横になるとスヤスヤと寝だした・・風の精霊ウィルだけが自分も一緒に寝たいと思ったのか羨ましそうに見ていたが今は頼まれた為に周りを警戒していた・・途中、シャムが不穏な行動をしていたがアマリアがうっかり寝ぼけて投げた剣と「おや?危なかったな、変な行動をしていると剣も変に飛ぶのだ・・勉強になったな?」との言葉に怯えながらもおとなしく寝たのは別の話

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