七話:仲間
side:アマリア
「と、すれば魔人かもしれないという可能性が一番高いな・・ここでアマリア・・あんたに質問だ、お前はこの娘を信じられるか?どんなことがあっても何をしても・・だ」
アマリアはラルドがギルドマスターであることと、ある程度信用できそうな人柄だと判断してアマリアとイズミと会った時の事を話した・・結果は魔人かもしれないという可能性が高い事は予想できたが信用できるかと問われた
「信じられるかどうか・・とはどういう事ですか?私はイズミが良い子だと思っています」
(この人は何が言いたいのだろうか・・いや、大事な質問なのだろう・・表情に嘘は許さないと出ているからな・・)
「いや、率直に言おうか・・この娘が魔人だったとしてもお前は今の関係を維持できるか・・こいつが人を殺しても信じられるかどうかだ」
アマリアは唖然としていた、魔人という可能性もあるのは分かっていたがそんな訳がないと心のどこかで思っていたからだ・・そして最後の人を殺してもという言葉にも驚いた
「そう、ですね・・魔人だったとしてもイズミはイズミです、私は信じると約束しましょう・・ですが、人を殺すというのはどういうことですか?そのような事はしないと『それじゃあ、今治療してる奴ら見てみな?どいつもこいつも生きてはいるが骨が何本かやられてる奴もいるな』・・っ」
アマリアが言われた方を見ると三人とも血をダラダラと流して近くにいた魔法使いが水の回復魔法をかけていた
「・・あれは正当防衛でしょう、それに生きてるでは『あぁ、殴ってる時は容赦なくやってたな・・笑いながら無邪気にな』・・殺す事は悪い事だと知らない・・と、いうことですか?それなら私が教えてあげればいいはずだ!」
アマリアはいつのまにか声を張り上げてラルドに向かって話していた
(この人は何が言いたいのだろう?確かに悪い事だと知らないというのであれば教えてあげればいいはずだ、それに私は・・私は何があってもイズミを信じると誓おう・・どんなことがあってもだ)
「ほー・・良い顔になってるじゃないか信じると覚悟でもしたか?だけどな、覚えておけよ?相手を信じるならば裏切られる覚悟を持て・・俺の持論だがな?ま、回りくどい言い方は止めるか、ギルドマスター何てやってるとギルドには色んな奴がくる、名声を求める者、金を求める者、生きる場所を求める者・・どんな奴でも受け入れるのがギルドの決まりだ・・規則さえ守ればな」
ラルドが最初はニヤリと口元を浮かべて笑っていたが最後はどこか遠い目で語った
「更にそいつの心の中身っつーかどんな奴かってのも長いこと人を見てると分かるようになってきたんだよなー何となくだがな?・・この娘は精神が壊れかけてるな・・恐らく、考え方もかなり一般の奴らとは違うはずだ・・で、起きてるんじゃないか?イズミ?」
アマリアが話を聞いて唖然としていると突然ラルドがイズミが寝ている方に顔を向けて話しかけた
むくりと顔を上げてアマリア達がいる方向へ顔を向ける・・ただただ無表情に、無感情に
「あらら~?ばれちゃったかぁ~何か嫌な感じがするなーって思って目を覚ましたんだよ~?に、しても壊れてるってひどいな~そうかもしれないけどね~」
ケラケラと途中から笑い出したイズミを見てラルドは苦しそうに顔を歪ませて口を開いた
「・・なぁ、お前さんに何があったかは知らないが過去は過去だ・・消えるもんでもないから先の事を考えて進んだ方がいいんじゃねぇ『・・ごめんね?もう喋らないでクレル?』・・そこまでひどいのか・・質問なんだが人が嫌いか?」
ラルドの話を遮って無感情に話すイズミ・・ただその目は赤く光っているはずなのに暗く死んだ目をしていたがその様子を見てラルドは一つの質問をした
「おぉ?これまた的確な質問するね~・・うん大嫌いだよ~?・・全部・・ケシタイグライニ」
イズミが最初は微笑んで言葉を喋るが最後には無表情になり冷たく言い放った
(っ!?・・これは最初に会った時に感じた寒気!?・・イズミがこんな冷たい・・いやそんな訳がない!イズミが悪い子だとしても私が正しい道へ直してやればいい!・・そう、これが最善の選択のはずだ!)
・・その言葉を聞いて2人は一瞬、無意識に後ろへ一歩下がったがアマリアは我慢ができないとばかりに口を開いた
「っ!イズミ!そんな事を言っちゃ駄目だ!言って良い事と悪い事があるだ『アマリア・・・お前さんは真面目なのはいいがな・・その言葉は今のこいつにとっちゃぁ逆効果だ』何故だ!私が言ってる事に何の間違いがあるというのだ!?イズミが悪い方向に走る前に止めるのが一番良いにき『黙っていろ!こいつはもう手遅れに近い状態なんだよ!今は綱渡りの状態で精神保ってるだろうがお前の言葉は谷底へ突き落とすぐらいにきつい一言なんだよ!』・・な、に?ラルド・・あなたに何が分かるといのだ!?」
アマリアとラルドが口論をし始めたのを見て周りに人々は何が起こったのだろうか?と、周りからチラチラと見ていた・・ただ一人イズミだけがケラケラと笑っていたが
「ちょっと待て、ここじゃあ話すと目立つから奥の俺の部屋に来い・・イズミも楽しいのか分からんが笑うのは止めてこい・・後なアマリア・・お前もイズミの事を考えてるかもしれんが俺も考えてるって事を忘れるな」
周りの視線に気がついたのかラルドは話を切り上げて奥の部屋へと進んでいく・・最後の言葉はポツリとアマリアにだけ聞こえるように話したのだが・・聴覚が良くなっているイズミには聞こえていたり
「・・分かった・・イズミも来れるか?すまない、騒がしい事になってしまって・・」
「えー・・めんどくさいなぁ・・でも僕の事みたいだし行かなきゃならないんでしょ?」
(めんどくさいと言いながらも行ってくれるのだからイズミは良い子なはずなのだ・・何故、ラルドは気がつかないのだろうか?」
アマリアは首をかしげながらもラルドが進んでいった扉へと向かった
side:イズミ
トコトコとラルドが開けた奥の部屋に進んでいった2人は応接室のような部屋に通されて近くにあった木のイスに腰掛けるようにといわれたので腰掛けて前を向くと両手を組んでいるラルドがいた
「さて、と・・話の続きでもしようか・・最初にアマリア・・お前さんの話は正しいよ確かに正しい・・だけどな正しすぎるっての問題なんだよ、人が人らしい人道的な行いが当然だと言いたいんだろ?だけどな・・俺が考えるに人が人らしいってのは非人道的な一面もまた人らしいと考えている・・まぁ、これが俺の考えだ・・お前さんには出来ない考えだろう?」
ラルドが話し終えると視線をチラリと何かを言いたそうなアマリアに向けた
「出来ないに決まっているだろう!ラルド・・あなたは人殺しや盗みが正しいとでも言うのか!?」
理解できないとばかりに吼えるように話すアマリア・・それに対してラルドは涼しい顔をしてイズミは・・肩を震わせて笑いを耐えているようだ
(アハハー、見てる分にはおもしろいな~だけどラルドって人・・人間だけど僕に近い考え方でもしてるのかねぇ?・・逆にアマリアは苦手かも・・・)
「・・まぁ、場合によっちゃぁそうだと俺は思うな・・汚い所を見てる内にそう考えるようになった後なこれは俺の考えだ、変えるつもりは無い・・アマリア、お前も自分の考えを変えるつもりはないだろう?イズミも自分の考えを持っている・・だからだ、アマリア自分の考えを他人に押し付けるな」
(おー、結構きついこと言うなぁ~・・アマリアも納得いかないって顔してるしね~確かに僕は僕の考えを持ってる・・普通の考えじゃないだろうけどね~)
ラルドがアマリアに対して嗜めるように話すがアマリアも怒りのせいなのか少し顔を赤くして話した
「っ!・・あなたも自分の考えを押し付けようとしてるのではないのか!私の考えは全ての人がお互いを助け合う事こそが正しい事だと思っている!その考えのどこが『あっはっは!アマリアそれは考えじゃなくて理想だと思うよ~?それに助ける事が全部が良い事でもないよ?』・・っな、何?そんなはずがないだろう!・・イズミも根は良い子なのだろう?だからそんな事を言ってはダメだ・・」
イズミが突然笑い出してアマリアの言葉を遮るとアマリアはイズミに縋るように・・自分に言い聞かせるように口を開いた
「おろろ?良い子ねぇ~・・それじゃあ正しい事って何だろう?例えば人を殺す・・盗みを働く事も正しい事もあるんだよ?『そ、そんな訳があるはずが』さて、ある村で謎の疫病が発生しました・・その疫病は治療法はなく村人が3人かかりました・・その村にふらりと旅人が立ち寄り話を聞くと診察を始めましたが彼は突然その村人3人を殺しました、その後は家に火を放ち焼き払いました・・その様子を見て殺された3人の子供や友人である村人達が旅人を一斉に非難しました・・旅人が何かを喋っていますが村人は話を聞かずに彼を同じ目にあわせてやると旅人を火あぶりにして殺しました・・さて、どっちが正しいでしょう?」
イズミが意地悪そうな笑みを浮かべてアマリアに問いかけるが顔を顰めて少し考え込んで口を開いた
「・・それは・・旅人が悪いに決まっているだろう・・診察をすると言っているのに殺した後に火を放つなどむごい事をするのだからな」
イズミは予想通りの答えだと笑みを深くして話す
「ふむ・・では、旅人の最後に言い放った言葉をよく聞くと村人達はこうだったと言った《治療法が見つからなかった!このままではあなた達が疫病にかかって死んでしまうかもしれない!死体を残すと疫病が広がってしまうから焼いたんだ!あなた達の為にした事だというのになぜ分からない!?》と・・さて、どっちが悪いのかな?」
唖然としているアマリアは少し震えながらも喋る
「そ・・んな・・そんな事が起きるはずが!『絶対に無いとはありえない・・疫病が今まで広がった事はないのかな?』・・そ、それは・・確かにあるが『どっちが正しいと思う?』それは・・どちらも正しいと私は思う・・家族や友人を殺されて平気な者はいないだろうし・・旅人も村人達の事を考えてした事なのだろう・・だが!ちゃんと説明すれば村人も納得して!『それじゃあアマリアは今から親を殺させてもらいます、何故なら病気が他の人にかかるからですって言われたらどうする』・・断るだろうな」
アマリアがハッと気がついたような表情をして顔を歪ませながら小声で喋る
「そう、言ってしまったら・・もしかしたら家族が村の外へ運び出して逃げるかもしれない・・そうすれば他の村や町に疫病が広がるし、仮に村の村長さんが殺すべきだと村の為に判断したとした家族や友人が村長さんを良い思いで見る事はないだろうね、下手すれば恨むだろうしね・・そこまで考えて自分が無断でやれば自分だけが恨みを背負う事ができる・・ま、こんな聖人君子みたいな人はあまりいないだろうけどね・・さて、次は盗みが正しい事だと信じた人の仮の話をしよう『っ!・・まだ・・あるのか』」
少し顔を青ざめて聞きたくないと視線をイズミから外すが関係ないとばかりに話す
「ある日アマリアが大通りの店が並び立つ場所を歩いていると『・・私か?』泥棒ー!と、叫ぶ店の主人の声を聞いてその場に向かうとこちらへ走ってくる中年の茶髪の男がいました『それ、俺じゃないよな?』・・どうやらその男が盗みを行ったようだ・・アマリアは当然の事だと思い泥棒を取り押さえようと片手を掴むが簡単に転んで動かなくなりました・・店の主人が走ってくると泥棒である男を殴りつけて怒鳴っていました・・さて、アマリアはどうする?」
イズミがチラリとラルドの方を見て視線を戻して話す・・再び口元を三日月に歪めるとアマリアはまだ少し顔が青いがしっかりとした口調で話した
「・・また意地悪な事を言うんじゃないか?・・そうだな、主人に殴るのを止めてもらい男に謝罪をさせて後に品物であれば返して食べ物や消耗品ならば代金を代わりに払える金額ならば払うな・・後は説教でもするぐらいだろうか?悪い事をしたのだからな」
当然だとばかりにアマリアが言うとイズミは少し以外な顔をした
(うーむ・・許すように自分が謝るとか予想してたけど代金まで支払うとは・・まぁ、話の続きでもしようかな~)
「さて、主人は二度とするなよと言って去っていきました・・残された男を立たせてみると手からコロリと一個のパンが落ちました・・男をよく見ると痩せ細り立っているのもやっととばかりに痩せていました、男が言うには自分の名前はラルドと『おぃ!何でだ!?』・・自分は家もなく働く場所もなくて盗みをするしか生きられなかったんだと言いました・・さて、この男が盗んだのは正しい事だったのでしょうか?それとも盗みは駄目だと牢獄にでも繋いでおきましょうか?・・さて、どっちだろう?」
アマリアは驚いた表情でいたが目を瞑り考え込むようにしていた
「そうだな・・仕方がない事だと認める・・だろうな・・」
顔を歪めて苦しそうに答えるアマリアにイズミは笑うのを止めてアマリアの目を見ながら話す
「そう、正しい事・・正義とも言うのかな?人によって全然違うという事が分かったかもしれないけど・・例えばアマリアがさっき言ってた全ての人が助け合うって考えが皆違うから不可能だと僕は思うけどな~?それに助けるなら裏切られる覚悟は出来ているの?『・・裏切られる覚悟・・?』そう、例えば僕がアマリアと一緒にいた時・・部屋で寝た時とかに殺そうと思えば殺せただろうね・・お金目当てで近づいてくる人もいるだろうしね~僕は今回はしなかったけど次はするかもしれないよ?『そ、そんな事をイズミがするはずが』するはずが無い・・助けられた恩があるから?助けられた事に恩を感じない考えを持っている人ならどうする?・・アマリアみたいに心が綺麗な人って僕は今まで見たことないよ・・」
イズミが最後には少し寂しそうな表情をしたがすぐ元の無表情に戻した
「私の・・考え・・いや、理想なのかな・・間違っているのだろうか?私は人を助ける事が正しいと思っていたのだが・・違う・・のかな?『いや?正しいと僕は思うよ?』っ!・・だったら何故だ?・・私が正しいのであれば『誰しも正しいと思う考えはどこか間違っているのが正解かなぁ?僕の考えだけど・・完璧に正しい答え・・考え何て無いと思うよー?アマリアも正しい、僕も正しい、ついでのラルドも正しい・・だけど皆・・他の人から見たら間違いだと言う人がいるだろうねー』・・そう・・か・・」
アマリアは最初はボソボソと声に力がなく・・表情も少し泣きそうになっていたがイズミの言葉を聞いて少し嬉しそうに噛み締めるように呟いた
「・・俺はついでかよ・・まー、いいかアマリアもイズミも少しはお互いの事が分かったんじゃねぇか?これからも仲良くしていったらいい『あぁ、それはいいよ』・・何?お前は・・独りでいられるのか?」
ラルドが苦笑しながら話していたが途中からイズミが遮り視線を向けると少し寂しそうな顔をしたイズミを見て離れようとしているのが分かった
「うん、恩返しはまだしてないんだけどな~・・ここでアマリアとは別れるよ『な、何?何故だ?』・・僕は独りの方がいい・・独りが楽しかったんだ、暗くて冷たい心を・・世界を持って落ち着けた、寂しいとか悲しいとか感じなかった・・同時に普通の事では嬉しいとか楽しいとかも感じなかった・・感じるのは冷たさだけ、感じるのは人の不幸を楽しむ事だけ、感じるのは壊れ続けている自分を感じるだけ・・・だけどアマリアといると壊れてしまう・・楽しいと感じた、嬉しいと感じた、温かいと思った、僕の世界に光が差してきた、だけど・・僕の世界に温かさはいらない、だから離れるよ、さようなら」
アマリアが驚いて声をあげるが淡々と・・言葉を最後まで放つとドアを出て行こうとする
「ま、待てイズミ!わ、私はイズミにとって邪魔かもしれない・・だが!・・ぁ・・」
アマリアが止めようとするがイズミは振り向かずにそのまま出ていった・・唖然と口を開いたままの・・アマリアを残して
side:アマリア
「・・何故・・独りが良いのだ・・私は今まで一人旅だったがそれでも寂しいと感じた・・寂しいのは嫌だと思ったんだ・・それなのに何故・・イズミは・・何・・で・・」
目に熱いものが溢れてくる・・何故・・どうして・・と何度も呟くアマリアに対してラルドが話しかけた
「・・本当に重症だなあいつは・・どうしたらあんな考えが生まれるのか俺には分からねぇな・・だけどなアマリアよ・・お前はそんな泣いたままでいいのか?『っ!私は邪魔だと言われたのだぞ!?私がいると・・邪魔だと!そんな私にどうし』黙れ、お前・・俺が最初に言った言葉を覚えているのか?何があっても信じ続ける事が出来るか?って聞いてよぉ・・信じると約束するって言ったよな?で、お前は今はどうなんだ?本人から邪魔だ、来ないでくれ・・で、お前は何もしないと?『・・私は・・出来る事なんて思いつかない・・何も・・どうすればいいのか』・・とりあえず追いかけて嫌だ、来ないでくれって言われてもしつこく追えばいいんじゃねぇか?・・本当にイズミを仲間だと信じるならな『・・・』」
ラルドに諭されるアマリアだが決心がつかないのか考え込むように口に手を当てている様子を見てラルドが呆れながらも話す
「なぁ・・あいつの言葉に人の不幸を楽しむって言ってたよな?事実、お前が悩んだりしている時は笑っていたが・・だけど人の不幸が・・苦しむ姿が好きなら最後にお前の考えは正しい何て言わないよな?・・それにだ・・あいつはお前がいて自分が変わりそうだから近づかないでくれって言ったんだよ『そぅ・・何でしょうか?』・・それなら無理やりにでも近づいて一緒にいてよぉ・・変えてやればいいんじゃねぇか?楽しい事とか嬉しいと思える事を教えてやったりよぉ・・大事な奴なら何が何でも一緒にいてやりなよ」
(そう・・か・・私は慰められたのかもしれないな・・ならば今するべき事は一つ・・!)
ラルドの言葉を聞いてアマリアは顔を上げた・・少し目が赤いが・・強い光を宿して
「あ~ぁ・・やっと行く気になったのかよ・・慰めるなんざ俺のキャラじゃねぇのになぁ~で、お前はこれからどうする?大体の答えは分かるがな」
「そうですね・・とりあえず勝手に離れた事を怒った後に無理やりにでも後をついていきましょう・・・私も何故こんなにも執着するのか分かりませんが・・確かにイズミといて楽しいとも感じました・・だから私は・・イズミと一緒にいたいと思います」
まっすぐに相手の目を見て話すアマリアに満足そうに頷くラルド
「・・良い目してるじゃねぇか・・こりゃお嬢ちゃんなんて呼べねえな!ハッハッハ!・・後は信じ続けてみろよ?イズミも頑固かもしれねえがお前さんも頑固そうだしな!・・あーあ、俺も仲間を・・本当に心から信じ続ければ・・楽しかったんだろうな・・」
(この人も・・昔に何かあったのだろうか・・だが今はそんな事を聞く暇なんてない!)
ラルドは楽しそうに豪快に笑っていたが・・どこか遠い目をして何かを思い出しているようだった
「・・そうですか、ならば私も同じ過ちを繰り返さないようにしましょう・・それではイズミを見失うかもしれないので失礼します」
サッと踵を返してスタスタと早足で歩いていくアマリアに苦笑を浮かべていた
「おいおい、そこは何があったのか?とか聞くべきだろうが・・ま、俺はここでゆっくりしときますか」
後には豪快に笑うラルドを残して後を去ったアマリアは豪快に部屋をバタン!と音をたてて部屋を出ると周りを見渡すとギルド加入の際の窓口に3人程並んでいる所を見つけるとイズミが最後尾に並んでいるのを見てダッシュで走って向かった
(絶対に逃がさん!勝手に離れるというのであれば私も勝手にさせてもらう!)
side:イズミ
せっかくギルドに来たのだからまた来るのもめんどくさいと思いイズミはギルドに加入する為の窓口に並んでいた
(むぅ・・何でこんなに並んでるんだろ・・あんまり長いとアマリアに会っちゃうんだけどなぁ・・めんどくさい・・だけど、少し胸がチクチクするなぁ・・はぁ・・前なら感じなかったのに早めに離れて正解かなぁ・・まあ、嫌われただろうけど少しは人を疑うことを覚えてくれると良いなぁ~・・駄目だ、やっぱり人の事を考えるなんて・・変になってる・・元の僕に早く戻さないと・・)
そうこうしている内に一人手続きが終わったのか残り2人になった所で突如、先程までいた部屋の扉が勢いよくバタンと開かれたチラリと視線を向けると辺りをキョロキョロと見渡しているアマリアがいた
(あらら、性格からして落ち込んでる時間が長いかなーって思ったのに・・何か前より元気になってる気がするのは気のせいかな?僕を探してるのならめんどくさいなぁ・・)
ピッと視線がアマリアに合うとニヤリと口元を歪めたアマリアを見てイズミは少し寒気を覚えた
(え?ニヤリ?・・何かアマリアと違う気が・・ってえええ!?何で走ってくるの!?嫌な予感が凄いするんだけど!)
ダッと走ってくるアマリアを見てイズミが本能的に外のドアへと一直線に走って外へ出ると後ろから叫び声のような大きな声が聞こえてきた
「絶対に逃がさん!イズミ!私から逃げ切れると思うなよ!!」
(えぇぇ!?何で!?何かキャラが違う気がする!・・っておお?さっきの猫人さんだ・・)
「ふ、ふん?奇遇だな・・そういえばお前の名前を聞いていなかったな?私はシャ『そこか!』・・すごい勢いでこっちに向かってくるのだが・・あれは何だ?・・」
イズミが勢いよく外に飛び出ると先程、耳などを触らせてもらった猫人がいた・・どうやら外でウロウロとしている内に会ったようだ・・そしてイズミが猫人が話しかけているので聞いていると後ろから声が聞こえてきたのでとっさに猫人の後ろへと隠れた
「あ、あら可愛い・・はっ!?・・ふん、何だ貴様は?私の後ろへ隠れおって・・仕方がないおい、貴様は何だ?そういえば前に私が撫でられて気持ちの良いのを邪魔・・ふん!触らせてやったのを邪魔した奴だな!?」
猫人が恍惚とした表情を浮かべていたがすぐに表情を戻してこちらへ走ってきたエルフへと顔を向ける
「ふむ、それはすまなかったな・・とりあえず邪魔だから退いてくれ・・退かないのであれば排除する」
(あれ?アマリアが今から猫人さんを攻撃するって言ってるような・・気のせいだよね~だってアマリアが・・あのお人好しの人が「ふん!エルフだろうがこの人々の中では精霊を使えまい!身体能力で獣人に勝とうなどとは思わ『忠告はした・・失せろ!』にゃあぁぁぁ!?」えぇぇ!?投げ飛ばしちゃったよ!猫人さん・・あら、空中で回転して着地してる・・おぉーさすが猫だす「さて、イズミ話し合おう」)
話し合おうと言いながらアマリアの目を向けると怒りの感情が読み取れた・・ただし尋常じゃない程の怒りの感情が見えたのでとっさに逃げたイズミは悪くないはずだ
(・・どこで選択を間違えた!何でアマリア怒ってるの!?・よっと!ふぅ、ここまでくれば少しは時間が稼げ《ガシッ》「さて、絶対に逃がさんと言ったなイズミ?話し合おうか・・」・・気のせいだ、僕は屋根に飛び乗ったんだ・・けっこう高いはずなんだ・・それなのに一瞬でこんな・・アマリアが見えるのも気のせいだ・・そう、早く逃げ《ゴッ》「あいた!?何故に殴るの!?」
イズミが民家の屋根に着地して先へ進もうとした瞬間に後ろから感情の無い声と逃げられないように万力のように肩を掴んだ手からギリギリと音が聞こえるとイズミは現実逃避しはじめたが許さないとばかりにアマリアから片方の手で頭を殴られて思わず返事をしてしまった・・痛みは感じないようだが思わず言ってしまったようだ
「ふむ、少しスッキリしたな・・さて、イズミ一緒に旅にでも行くか!」
「え?何で?と、いうか僕は邪魔だから来ないでくれって言ったんだけど、意味が分からなかったの?」
イズミが不機嫌そうに言うがアマリアはどこ吹く風とばかりに話を続けた
「ん?私が無理やりついていくだけだが?拒否は認めん!・・それに私は誓おう・・私が生きてる限り、イズミが生きてる限りは私はお前の傍にいたい・・私も一緒にいると楽しいのだぞ?まぁ、自分勝手な理由だがイズミも自分勝手にしてるのだから私もしていいはずだ!」
ドーンと効果音がつくとばかりに声を張り上げて言うとイズミは信じられないとばかりに口を開けていた
(・・あれ?誰これ・・アマリアの性格はおとなしいと思ったんだけど・・あれ?むぅ、それに何やら僕に無理やりついていくと言ってるけど・・《トクン》・・ぁーぁ、嬉しいと普通に思ってしまうまで僕がボクじゃ無くなってるし・・ここが別れ道・・なのかな・・)
「アマリア、今から10秒以内に消えてほしい・・じゃないと僕は君を殺さないといけない、僕がボクであるために」
ただ、無表情に淡々と言い放つイズミは目の前にいるアマリアを睨みつける
「ふむ、そうか・・ならば私は一歩も動かん殺すなら殺してくれて構わない『っ!?』」
アマリアも無表情になると眉一つ動かさずに毅然と言い放った
「・・死にたいの?死にたいのであればそこから頭から落ちれば死ねるよ?」
「いや、私は死ぬ気はないしイズミの事は私は何も分からない・・だが私はイズミを信じる事にしたんだ、だから私は今ここにいる」
(・・何・・で?どうしてそこまで人を信じられるの?僕には理解できない、分からない、感じる事もできない、信じるって何?ボクにハ分からナイ・・ナンデ?そこまで・・人をシンジラレル?)
「分から・・ない・・何でそこまで・・信じるって・・な・・に・・・ぁ」
「うん、私も分からない事だらけだ・・だけどな分からないのであれば知ればいいのではないか?」
イズミが壊れた人形のように目が虚ろになりながら言葉を呟いているとアマリアがいつのまにか近づいてイズミを胸に抱き寄せていた
「・・僕は人間が大嫌いだし・・アマリアの考えも嫌いだ・・人間じゃないから良いけど」
「ほぉ、そうか人間じゃなくて良かったと今は思うよ・・私の考えは変える気はないぞ?私の性格も私を現しているのだからな・・イズミもイズミのままでいい・・無理に変わる必要はないし変わるのであればゆっくり変わればいいだけの話だ・・・ん?おや、雨が降りそうだな・・少し空の様子でも見るか」
「そ・・ぅ・・あ、雨が降りそうなんだね・・もう止みそうだから僕はギルドに加入してさっさと町を出るよ・・・」
ただ、空は晴天だった・・雲一つ無かった・・だけどアマリアの胸の中では確かに雨が降った、アマリア自身は青空を見上げて呟いた
「そうか、では私も勝手についていくことにしよう」
「・・勝手にすればいい・・僕は何も知らない・・」
お互いに顔を見合わせるが少女の方は恥ずかしいのか顔を逸らして呟く、もう片方の女性は笑顔になり嬉しそうに言った
「あぁ!よし、ではさっそく・・と、言いたい所だが・・さっきから何を見てるんだあの猫は・・」
「にゃ!?・・う、うるさい!出るタイミングが分からなかったんだ!」
アマリアが視線を横にずらすと体を伏せて見ていた猫・・さっき投げ飛ばされた猫人がそこにいた
「・・おぉ?猫人さんだ~あれ?じゃぁ最初から見てたの?・・・・・ぅ『ぶはっ!?イ、イズミそれは・・駄目だ』・・ん?」
イズミが恥ずかしさのせいか無意識にアマリアの後ろに移動して少し腫れた目でアマリアを見上げた・・結果、アマリアが膝をつく事になった
「ふん、まぁ・・すまないな私としてはエルフに仕返しをしてやろうと思ってきたのだが・・断じて!そこの少女が心配で来たのではないぞ!?・・ついでにいえば私も勝手についていきたいのだがいいだろうか?」
「ほぅ?人の言葉を真似するとは良い度胸だな・・躾けがなってないようだ・・私がしてやろうか?」
とても良い笑顔を浮かべたアマリアに寒気を覚えた猫人は一歩後ろへ下がるがしっかりと目を見据えて答えた
「・・そうだな、冗談は無しだ・・私としてもお前達を見ていて・・正直羨ましいと思ったんだ、確かに獣人同士の絆は強い・・だがお前達はエルフと人間『え?違うよ僕は』は?違うのか、すまない・・まぁそれでもだ・・そこまで信じる事ができるのに・・その・・羨ましくてな・・私もお前達と一緒についていきたいのだが・・いいだろうか?」
その猫人に対してアマリアはどうする?と、顔を向けて意思を伝えるとイズミはぶっきぼうに
「勝手にすればいいんじゃない?僕は知らないし『ふむ、喜んで迎えると言っているな』ち、違う!僕はそんな事言ってない!・・と、いうかアマリア性格変わってない?『イズミの性格に似てきたんだろう』・・そうですか・・」
(えぇー・・何かアマリアの性格が悪くなってるんだけど・・何で?僕のせい?・・前の純粋なアマリアは苦手だったけど・・まぁ、いいか・・アマリアはアマリアのままだね)
「そ、そうか!ふん、まぁいい私の強さを見て驚くがいい!獣人の底力を見せてくれる!」
嬉しそうにしていたが途中で恥ずかしくなったのか目を伏せて顔を逸らしていた・・・尻尾は嬉しそうに動いているが
「うん、それじゃあ僕の名前はイズミって言うんだよー・・これは独り言、勝手に言うね?」
「そうか、では私も勝手に言おうギルドランクBのアマリアだ・・よろしく頼む」
「ふ、ふん!私もギルドランクBのシャムだ!・・勝手に言っているんだからな!」
そう3人が変な自己紹介を終えると3人はお互いに笑いあっていたが屋根にいるのと地面から飛び乗るという離れ業を披露した為か周りから注目されたいた為に3人がそそくさと降りてギルドに向かうのはまた別の話
side:????
そこはギルドの建物から少し離れた暗い裏路地に3人の男がいた
くそ!ふざけやがって!あのアマ!ギルドから出てきたらぶっ殺して犯ってやる!・・あん?やっと出てきたか・・って小娘の方じゃねえか・・一人か?おっと、もう一人も出てきたか・・あのエルフと小娘もろとも復讐してやる!あいつらのせいで俺ぁギルドカードを没収されたあげく治療費まで請求されたんだからな!
「アニキ!あいつら向かいの家の屋根に飛び移りましたぜ!・・何してるんでしょうね?」
「お、おでも頭が痛いんだな・・もっと頭が悪くなったかもしれないけどあの子のせいなんだな!」
・・てめえが頭が悪いのは元々からだろうが!・・まぁいい・・あん?何だ?抱き合ってるじゃねえか・・ちょうどいいな
「おぃ、てめえら弓で一斉に射抜くぞ!絶対に外すなよ?」
「分かりましたぜアニキ、俺もあいつには痛い目みせられましたからねぇ・・それっと」
よし、弓を引いてと・・後は離すだけだ・・ぐへへ舐められたままで終われるかよ!
「・・無粋な奴らだな、俺の娘に手を出すなんて命知らずもいるもんだ」
「ぁん?何だてめえ?・・・その姿から小娘の親ってか?」
俺達が声がした方向へ振り向くと暗い奥の道から長い黒髪に赤い目・・あの小娘と似た姿の男がいた
ただ、俺達は気がつくべきだった・・男が出てきた場所は行き止まりだという事を
「へ!のこのこと親が出るとはな!てめぇの娘にやられた恨み・・少しは解消しねぇとな!お前ら!さっさとこいつをぶっころすぞ!」
「「へ、へい!」」
そういうと手下2人を向かわせた・・各々の武器を持って向かわせてすぐにでも殺されると思った髭面の男はニヤリと笑みを浮かべたが・・突如、目の前の2人の頭が消えてカクンと音を立てて崩れ落ちた
「・・ひっ!?て、てめぇ!何しやがった!?」
「あぁん?俺は機嫌が悪いんだよ・・せっかくよぉ娘の成長を見れるかもしれないって時に貴様ら下種の・・邪魔のせいでよく見れないだろうがぁぁ!」
赤い目の男が怒りの声を上げると回りの影・・闇が動き出し髭面の男を取り囲んだ
「ひ、ひぃぃぃぃ!?ば、化け物だぁぁ!だ、誰かたすけ」
最後まで言い終わる事もなく男は闇に喰われた・・その場にあった2人の死体も綺麗さっぱり取り込んだ
「あーあ、気色悪いもん取り込んじまったな・・後で吐き出すか・・に、しても良い顔してるな・・俺に対しても向けて欲しいもんだ・・いや、俺もこんな事を考えるんだから変わったな・・ま、悪い気分ではないがな、後で話でも聞かせてもらうか」
男は己の娘と認めた者を視界に入れると微笑んで暗い道へと戻っていった