六話:ギルド到着
side:アマリア
「うむ、そうか・・では次の事なんだが・・イズミはこれからどうする?」
(正直、私は親がいないのであれば孤児院に入れようと考えていた・・私の旅に同行させるという選択はこの少女には過酷だろうと判断したからなのだが・・何故だろうな、頭では一番の方法だと出ているのに近くにいて欲しいと思うのは・・私も一人旅は寂しいと感じていたのかもしれんな・・いや、もしかしたら・・イズミだからかもしれんな)
そう思うと目の前のボーとしている幼い少女を見る・・年は12歳前後だろうか?腕を組んで目を閉じて考えこんでいるようだ
「イズミは・・その、親はいるのだろうか?」
アマリアが少し戸惑いながらも言葉をかけるとイズミは少し目を開けて・・また閉じた
「・・イズミ・・そのどこでも寝る癖は直したほうがいいぞ?」
「むぁ?・・むぅ、寝るのが趣味の一つなのに・・」
「・・変わった趣味だな・・とりあえず先程の質問なんだが・・親はいるのだろうか?答えにくい質問ならすまない・・」
「むー、父さんはいるよー?あぁ、でも僕は場所は知っていると何というか・・近くにいるけど遠い所にいるような・・うーん、何て言ったらいいかなぁ?」
イズミは言葉を選んでいるのか悩んでいるがアマリアは別の事を考えていた
(近くにいて遠くにいる?もしかしたら・・すでに亡くなっているという可能性もあるが、場所を知っているならそこまで送ることもできるか・・)
「ふむ、それではイズミの父の居場所を教えてもらいたいのだが・・よかったら私が送るが?」
「おぉ?いえいえーいいですよー僕はいつでも会える?はずですから~えーと、これからの事については・・アマリアさんが言ってた冒険者ギルド?って僕でも入れるんですかね?」
いつでも会えるという発言に不思議に思いながらも話を続けた
「む?あぁ、基本的には年齢や種族に関係なく入れるのだが・・家事や人の手伝いなどの依頼もあることだしイズミでも受ける事はできるぞ?」
「ほぇ?冒険者ギルドなのに家事の依頼とかもあるの?」
イズミが疑問に思いアマリアに質問をすると良い質問だとばかりに薄く微笑んで口を開いた
「うむ、まぁ理由はあるのだが・・そうだな私も依頼を達成したと報告にいくのだがイズミもその時に聞いてみればいい、私の説明よりも分かりやすく教えてくれるはずだ」
「おぉ!聞くよりも見た方がおもしろそうですしね~」
「ふむ、それならば今からでも行こうか・・アルクさん、イズミをギルドに連れていってくる」
アマリアがアルクにそう話すと少し心配そうな顔でアマリアに言った
「そう?私も行くのはいいんだけれど・・最近ギルドの酒場で荒くれ者がいるって噂だよ?まぁ、アマリアちゃんが一緒にいるなら心配なさそうだけど・・それでもイズミちゃんを泣かしたら承知しないよ?」
「おや?私の心配はないのか?大丈夫だ、イズミには指一本触れさせないからな」
お互いに談笑をしていると少し不機嫌になったイズミがいた
「むぅ、いざとなったら逃げるから大丈夫だよ~それに、多分?僕は強いから心配ないよ~」
イズミがそう言うとアマリアとアルクはお互いに顔を見合わせてプッと笑ってしまった、子供の強がりと受け止められたらしい
「そうか、まぁそれなら私も安心だな・・さてと、そろそろ行くか」
「むぅ、信じてないな~まぁいいや~僕も強いのかどうか分からないし・・闇を使えば大丈夫だけど」
最後の言葉はボソリと呟いて先に扉を出たアマリアの背中を追って小走りに追いかける
side:イズミ
「さて、ここが冒険者ギルドなのだが・・イズミ聞いているか?」
アマリアが話しかけるがイズミはウロチョロとギルドの建物前を小走りに動いていた
「おー!猫人に狼人に犬人だ~!それに髪が誰も黒の人がいないのかぁ~・・すみません~耳・・触らせてもらってもいいですか?」
見渡すとチラホラと人間とは違う種族・・獣人がいる光景を見てイズミは様々な種族の獣人を見ていたが近くにいた茶色い毛をして胸当てをつけた女性の猫人にキラキラと子供がオモチャを欲しがるような目で見上げた
(おぉー!ほへー・・体型は人の形だけど・・動物の耳と鼻・・両手や顔は薄い毛で覆われてるけど・・肉球あるのかな?凄く気になるなぁ、指はしっかり5本ある所を見ると足もそうなのかな?)
「何だ?人間か・・私の耳を触りたいだと?馬鹿なこ・・と・・い、いや少しだけだぞ?」
不機嫌そうにイズミの方に向き姿を確認して目を合わせるとビシリと空気が固まったように身を強張らせるとイズミの手が届くように屈んでみせる・・・イズミが無意識に顔の前に両手を組んで愛らしい笑顔を浮かべて上目遣いに見たのが原因だろう・・その光景を見た数人は顔を上に向けて鼻を押さえている者やほほえましい光景に笑顔になっている者やハァハァと息の荒い者などがチラホラといた
「おぉー・・うわーモフモフだー何か良い匂いもするし『ちょ、ちょっとまっ・・て嗅がないであふっ』おぉ?尻尾だ~♪『だからまっ・・掴まないでにゃぁぁ!?』・・おぉ?だいじょうぶで『イズミ!何してる!?すみません迷惑をかけてしまって』ぇー良いって言ったから触らせてもらったにーもうちょっと触りたい・・」
イズミが最初は頭と耳に感触を楽しんでいたのだが途中から猫と接した時のように顎を撫でたり近くに寄ってきたので匂いを嗅いでみたりと試していたが・・当の本人・・猫人は予想外の撫でテクに目を細めてビクビクと動いてたが尻尾を触られたのがトドメとなったのかペタリと地面に横になってしまいアマリアに引き離される事となった
「にゃふ・・あぁ・・もっとハッ!?・・ゴホン、気がすんだか?少女よ」
地面で悶えている猫人・・危うく服従のポーズをする一歩手前になっていたが正気を取り戻したのか立ちあがると何事もなかったように話はじめた・・顔を真っ赤にしながら尻尾がくねくねと動いているが
「えー、もうちょっと触ってもいい?モフモフ感が堪らない・・と、いうより抱き枕にして寝てみたいな~」
「何?まだだと・・それにだ、抱き枕とは・・し、仕方がないな!そこまで言うのならば私が泊まってる宿に『さぁ!イズミ!ギルドに用事があったな!早くいこう!迷惑かけてすまない!』ぁ、ちょっとま」
抱き枕と聞いて妖しい目に段々となりつつあり呼吸も荒くなってきた猫人に危険を察知したのかアマリアが咄嗟にイズミを腕で抱えると一目散にギルドの建物に入っていった・・名残惜しそうに手を伸ばしたまま固まった猫人を残して・・
side:近くにいた狼人と犬人
「ふん、人間に誑かされるとは・・獣人の恥だな、そうは思わんかラム?」
灰色の毛並みを持つ狼人は隣にいた金の毛並みを持つ犬人に話しかける
「うん?俺もまぁ・・そう思うぞ!うん・・ちょっとだけ撫でてもらいたいと思ったけどな」
「・・お前もか・・ふん、全く情けない奴ばかりだ!尻尾を振りおってそん『お前もブンブン振ってるじゃねぇか!』・・こ、これは散歩をするのが楽しいだけだ!断じて撫でてもらいたいとは思ってはおらんぞ!」
その後も言い争いを続ける獣人達と近くでウロウロとせわしなく動く猫人がおり通行人は奇妙な光景に首をかしげながらも通り過ぎていた
side:イズミ
バタン!と勢いよくギルドの扉を開けて中に入り周りを見渡すとなかなか広い部屋であり半分が酒場をもう半分が依頼を受ける為の事務的な仕事場や大きな木の板に何枚も紙が張られているものも・・どうやらここで依頼を受けるようだ
「むぅ、もうちょっと触っていたかったのに・・おぉ!ここにも獣人さんが!すみませ『待て、イズミ』おぉ?どうしたのアマリア?」
振り向くと顔を赤くした怒っているような呆れているような何ともいえない表情を浮かべたアマリアがいた
「その頼み方は止めるんだ!絶対だぞ?それに・・だ、抱き枕だと?イズミは無防備すぎるんだ!あのままだと宿で・・その・・悪い事をされるんだぞ!?」
最初は勢いよく喋っていたアマリアだったが赤い顔を更に赤くさせて最後に言いにくそうに喋っていた
(おぉう・・まぁ、あの猫人さんには欲望の感情があったけど・・悪い事って男ならまだしも僕は女だし相手も女性だから何もないと思うんだけど?・・うーん、だけどこれは少しからかったらおもしろそうだなぁ)
「えー、悪い事って言われても分からないよー?それに抱き枕にしたら本当に気持ちよさそうだし~それともアマリアが代わりになってくれるのかな~?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて尋ねると、アマリアは驚くと顔を赤くしながらあたふたと手をちょこまか動かしながら答えた
「わ、悪い事というのはだな・・そのエッチな事だ!・・イズミは可愛いから女性でも危ないのだ!分かったな!?それに私を抱き枕だ・・って?・・すまん、それだけは・・その・・止めてくれ今度は止めきれる自信がないんだ・・すまない」
アマリアがプルプルと震えながら喋っている光景を見てイズミは
(え?・・女性でも危ないって・・あぁ、同性愛の可能性を考えてなかったなぁ~うぅむ・・だけど男を相手にするというのも・・うん、とりあえず考えたらダメだってあれ?アマリアも同性愛なのかな?・・うぅむ、抱き枕は僕の闇にしようかなぁ~プニプニして気持ちいいし)
「それなら今度から注意するよーでもアマリ『よぉ、姉ちゃん達よぉ良い話してるじゃねえか俺も混ぜてくれねぇか?』・・うっわー・・何あれ」
イズミが声をかけられたと思い振り向くと3人の男がいた、一番前にいるのが見た目が凶悪な犯罪者にしか見えないヒゲ面の男と後ろで痩せている小柄な男と大きな体に太った男がいた・・ただ、イズミが反応したのは目を見たからであった
(うっはー・・ここまで欲望がギラギラと出てるのも珍しいなぁ~・・これなら僕の特技使わなくても誰でもわかるよ、それにあの顔だと山賊にしか見えない・・ふむ、アマリアが狙われてそうだけど相手にするのもめんどくさそうだから無視してギルドの説明受けにいこっと)
「ねぇ、アマリア早く説明でも受けにいかない?僕としてはギルドに入りたいし」
くいくいっと袖を引っ張ってアマリアの気を引いて向こうに行こうとするが、アマリアが男達の前に出てイズミを背で隠すようにして毅然と言い放った
「大丈夫だ安心しろ・・イズミが怖がっているだろうがそれに貴様ら・・酒で酔っているのだろう?絡み酒なら飲むんじゃない失せろ!迷惑だ!」
(・・えええ!?何で喧嘩売ってるの!?それに怒りの感情もあるし・・ん?、袖を引っ張る⇒アマリア振り向いて怖がってると思う⇒アマリア怒る・・・ぼ く の せ い か !!)
「おぃおぃ、俺は抱き枕が必要だって言うからなってやろうと思って親切に言ってるんだぜぇ?ついでに大人の体験もさせてやるけどな!」
グヘヘと笑う髭面の男を見てアマリアの表情が段々と感情を消えていく・・それに対してイズミは
(おぉー・・グヘヘと笑う所を初めて見たなぁ・・それに髭の人とか山賊にしか見えないんだけど・・・うん、そうだ今から髭の人を山賊A・チビガリの人が山賊B・太っている人が山賊Cと呼ぼう!)
「アニキ!こんな小さい子供を相手にするんですかぃ?確かにあっしも好みですけどエルフの娘も良いですぜ?」
チビ・・山賊Bがねっとりと纏わりつくような視線をアマリアに纏わりつかせるとアマリアが顔を伏せてプルプルと震えていた・・表情は見えないが、イズミは嫌な予感がする・・!!と、本能で察知したのかゆっくりと離れる
「今から唾つけて俺好みの良い女にするんだよ!まぁ、今でも良さそうだけどなぁ!」
「うぅん、おでとしても・・あそこのちっちゃい娘が良いなぁ~髪もサラサラそうだし良い匂いがしそうだな~」
山賊Aと山賊Cが視線を纏わりつかせようとするがその前にアマリアが体でイズミを視線から外した
「・・貴様らごとき下種に用はない・・今なら見逃してやる・・5秒以内に失せろ・・」
普段の温厚なアマリアからは想像もつかない冷たい声にイズミは少しびっくりした
(おぉー!アマリアもこんな冷たい声を出せるんだな~・・うん、僕としてこっちのアマリアも好きになれそうだな~・・だって・・ここまで冷たくて暗い怒りも珍しい・・何でここまで怒ってるのかなぁ?)
「あぁん?下手に出てりゃぁつけあがりやがって!おら!謝るなら今の内だぜ?」
山賊Aが顔を真っ赤にして背中に背負っていた斧を取りだすと両手で持ちアマリアをニタリと口元を歪めて言い放った
(あらら~・・沸点ひくいなぁ~カルシウム足りてないのかな?卵の殻でもあげようかな?えーと、闇を使うのはダメだし・・殺すのはダメかー人目が無ければ殺したかもしれないのになー・・殺したくない時は軽く殴るんだったかな?)
「黙れ、もういい貴様らはここで消えろ」
俯いたままスルリと剣を抜くと両手で前に構えた・・顔を上げずにただ黙々と
「ア、アニキ!あいつエルフですぜ?精霊魔法使うんすよ!?俺らじゃ勝てませんて!」
慌てた様子で山賊BとCはAに話しかけていた
「バカヤロウ!ギルド内では空間に魔法がかけられていて魔力を操れねえんだよ!つまり精霊も呼び出せねぇってことだ!構うこたぁねぇエルフを痛めつけた後にたっぷりと2人共可愛がってやるよ!」
そう言われてハッとした顔になった山賊BとCは腰からナイフと腰にある剣を抜いて飛び掛ろうとしている
(えぇー、ここってギルドの中だからこれって問題行動になると思うんだけどなー僕も動かないといけないのかなぁ~ハァ・・めんどくさい・・あれ?そういえば・・僕が抱き枕発言⇒ゲッヘッヘ俺が代わりになるぜ?⇒僕が怖がってるとアマリアに思われる⇒アマリア怒る⇒一触即発の状態【今ここ】・・・・・あぁぁぁ!?僕のせい!?と、言うかこれじゃぁ恩が増える!それだけは阻止しなければ!」
「死ねぇぇぇぇ!『おっと、エルフのお嬢さん止めときなここは俺に』・げふあぁぁぁぁ!?『は?』」
アマリアが相手が動いたのを確認したのか首を落とさんとばかりに斬りかかる直前に茶色い髪をした渋い顔の男性が剣を構えてアマリアの前に飛び出した・・が、こちらに向かって走ってきた男が断末魔をあげながら横に吹き飛び壁に激突してめり込んだのを見て唖然としていると
「ア、アニキィィ!やっぱり精霊魔法をつかっ『かる~くなぐろ~!』がぐっ!?」
シュンッと空気を切り裂くような音がしかたと思えば山賊Bの目の前に現れたイズミは顎を的確に狙ってアッパーを決めるとおもしろいように飛びバキバキと音をたてて天井に頭が突き刺さった
(へぇ~、すごい速さで動いてるのは分かるのにそれに目が追いつけるんだな~ふむ、スローモーションの中で動いてる感覚だなぁ)
「お~・・これまたおもしろい死に方を・・いや、死んでないか・・えーと、後は山賊Cだけだね~」
少し驚いたように突き刺さってピクピクと動いている山賊Bをある程度見ると、少し離れた位置で唖然と立ち尽くしている山賊Cの方を見てニタリと口元を歪めた
「お、おで!?山賊Cってなん『ピョンッと飛んで・・沈ませる~♪』おぎょっ!?」
また空気を切り裂く音が聞こえると一瞬で190cmはあるだろうか・・男の頭の上に移動して頭を踏みつけた・・ボコッ!と音と共に山賊Cの頭を床に打ち付ける・・抜けてちょうど頭だけが床にめり込んでいるのだが
「ふぅ~・・おぉ~♪体が軽い軽い!これは父さんに感謝しないとね~・・おぉ?・・さて、と・・僕は用事を思い出したのでこれで失礼ガシッ『さて、イズミ・・今のを説明してもらえないかな?』」
イズミが拳を握ったり閉じたりと繰り返して体の具合を確かめて周りをふと見渡してみると騒動を止めようとしたのか各々の武器を取ってこちらに駆け寄ろうとしている冒険者らしき人達がいた・・皆唖然と口を開けているが・・その空気に気がついてそそくさと逃走を図ろうとしたイズミだがいつのまにか移動したのか後ろから肩を掴まれ振り向くと・・とても良い笑顔をしたアマリアがいた
(わーお・・すごく良い笑顔だ・・だけど怖いと思うのは何でだろ?これは開き直った方がいいのかなぁ?それはそれでめんどくさい事になりそうだけど)
「え?何か見たの?僕は今から獣人達と戯れる予定なんだけど」
「そうか、私としては今まで詮索はしてこなかったが・・イズミが強いことぐらい言ってもいいだろう!?私が警戒していたのが愚か者にしか見えなくなるのだが・・」
ガクリとうなだれるアマリアを見てイズミは不思議に思いつつも口を開いた
「・・宿を出る時に僕は強いよ~って言ったはずなんだけど・・」
「・・ぁ・・い、いや冗談だと思ってたんだすまない・・」
素直に頭を下げるアマリアにイズミはもう少しいじろうと考えていたが取りやめた
(むむ、すぐ頭を下げる事ができる・・何て良い子なんだ!・・まー、どうでもいいかな~)
「良いですよ~別に気にしてませんし~」
ケラケラと笑うイズミを見てアマリアはホッと一息つくと後ろにいた茶髪の男性が口を開いた
「いや、俺でも目で追うのがやっとだったんだが・・エルフのお嬢ちゃんが信じられんのも無理はないと思うがな!・・しっかし小さいくせに強いお姫様だな!はっはっは!」
アマリアの後ろから豪快に笑い声が聞こえるとイズミは小さいと言われてムッとして返事を返した
「小さいは余計だよ~それに僕の名前はイズミだよ~呼び捨てで構わないからね~」
「ふむ、それでは私もエルフのお嬢ちゃんと呼ばないでほしいな・・名前はアマリアだ、そちらは?」
2人が自分の名前を言うと笑うのを止めてピシリと背筋を伸ばすと元気よく答えた
「おう、俺はここのギルドマスターやってるラルドってんだ!ま、ギルドランクはSだぜ?今までは暇つぶしに近くの森に散歩がてら行ってたんだけどよぉ・・今日は面白いものが見れたから帰って正解だな」
ハッハッハッと豪快に笑うラルドだがアマリアはマスターとランクを聞いて驚いていた
「ラ、ランクS・・竜種を倒す程の実力者なのですか!?申し訳ない、マスターとは露知らず『あぁ、別に呼び捨てでいいぜ?堅いのは苦手なんだよ』・・そうですか、ありがとうございます」
アマリアが薄い笑みを浮かべて謝罪をすると驚いた表情を浮かべながらもラルドは笑みを返した
「お、実力も問題なしAランクに届くと噂されてるアマリアだったな?他は礼儀正しい事で有名だし何よりエルフというのがまた珍しいからな・・まぁ、お前さんならSランクも夢じゃないと思うぜ?・・で、次にイズミ?だったなギルドに所属してる・・って訳でもなさそうだな、それにしてもその年でそこまで強いなんてたいしたもの『・・むぅ・・柔らかい布団が欲しい・・ぐぅ』・・こいつは将来大物になるだろうなこりゃ・・」
アマリアと話している間に先程まで山賊達が飲んでいたテーブルを少し片付けてそこに頭を乗せて気持ち良さそうに寝ていた
「あぁ・・また寝てる・・イズミは良く眠る子なので目を離すとすぐ寝てしまうんですよ」
アマリアが苦笑しながらも楽しそうに答えるのを見てラルドも心なしか嬉しそうに口を開く
「お、良い顔だねぇ~あんたはパーティーに入らない事でも有名だからな・・良い仲間が見つかったじゃねえかどこで知り合ったんだ?」
仲間が出来たと思い自分の事のように喜ぶラルドは何気ない質問をしたのだが、アマリアはピシリと固まったように何か考える仕草をした後に
「・・そう、ですね・・今から話す事はあまり言いたくはないのですが、満月の森の中・・満月草を採取しに行った時に川の近くで出会ったのですが・・」
「は?森の中で?しかも満月にだって?・・作り話だったらおもしろいんだがお前さんはウソをつく輩でもなさそうだしな・・少し聞かせてもらってもいいか?」
「ええ、そうですねあれは・・」
二人が話しこんでいる間にも当の本人はスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた・・少し涎が出て可愛らしい寝顔に見ていたギルド員の数人が虜になりつつあるのは別の話・・