五話:心境変化の予兆
side:イズミ
「・・ぃ、朝だぞ・・朝食が出来た頃だからそろそろ起きた方がいいぞ?」
「・・むぅ、後5分・・寝か・・せて・・ぐぅ」
窓から淡い光が差し込み、木で出来た部屋を薄く照らす
その部屋にあるベッドで横になっている長い漆黒の髪を撒き散らして占領している少女が一人
その横で顔色が悪く、目が少し充血している甲冑を着た金髪の女性が一人
「・・はぁ、冷めたらおいしくなくなるし、アルクさんも怒るだろうから起きなさい」
女性・・アマリアは寝ていた少女、イズミが頭ごと被っている布団をユサユサと揺らしていた
被っていた布団をどけると眠たそうに少し不機嫌になりながらも返事をした
「む・・むぅ・・寝てると気持ちいいのに・・おはよ~アマリア~・・あれ?顔色悪くない?昨日は寝てないの?」
目をパチパチッと瞬いてアマリアを見ていると顔色が悪いのと目が少し充血している事に気がついて声をかけてみた
「ふ、私は・・勝ったのだ、己との戦いに・・少しは負けそうに、そう!少しだけ負けそうになったが勝ったのだ!」
イズミが心配・・は、あまりしていないが声をかけるとアマリアは拳を握り締めて熱く語っていた
「・・あー、えーと・・うん、勝ったのなら良かった?のかなー」
「・・イズミが原因でもあるのだが・・いや、私が悪いんだな、とにかくだ朝食が出来ているはずだから下に降りて庭にある井戸から水で顔を洗いにいこうか」
「ほへー・・井戸があるんだーうん、分かったよー」
イズミが了承するとアマリアは最初はボソボソと呟いていたが頭を振って扉を開けて出ていこうとするのを見てイズミも眠い目を擦りながら着いていった
「む、そこまで眠いのか・・階段を降りるから注意して降りてくれないか?滑ったりしたら大変だからな」
「あははー、大丈夫だよー心配してくれてありがぬあっ!?『っ!だから危ないと・・は?』」
イズミが笑いながら階段を降りる途中で足を滑らせ、アマリアが助けようとイズミに駆け寄ろうとするが前のめりの体勢からクルリと見事に空中で一回転を決めて一階の床に着地した
(ふむ、評価なら10点満点だね!・・咄嗟に前転したけど・・まさか着地できるとは・・)
「「「・・・」」」
「・・・さてと、庭はどこかなっと・・」
アマリアと朝食を食べていた宿泊客も宿の女将でもあるアルクも唖然と見ていたが当の本人も驚いていたが周りの視線に気がついてそそくさと庭があるであろう外の扉を開けていた
「さてと、井戸は・・おお~あれか~ふむふむ、この縄を引っ張れば『・・イズミ・・今のは何だ?』」
「・・いや、何か妙に前が重いなーって思ってて気がついたら足滑らせてたんだよねー・・この胸が原因っぽいけどね~まー、今のは偶々だよーもう一回やれって言われたら・・案外できるかもしれない?」
「あぁ、そうだった・・って出来るのか!?すごいなイズミは・・私でもあそこまで身が軽くはないぞ・・まぁ、それに・・だ・・その、胸が重いのは仕方がないと思うぞ?それと人前ではあまりそういう話はしない方がいい」
アマリアは納得したと表情をしていたが出来るかもしれないと聞いた時には驚愕の表情を浮かべてイズミは身体能力が高そうだと判断していた
(くっ・・この胸のせいで体のバランスが変なんだよねー・・何故こんなにも大きいんだ・・!男に戻れないのかなー・・考えたら悲しくなるから気にしない気にしない・・)
イズミが表情をまるで仇を見るような目で胸を見ているかと思えばポカンと空を見上げている動作を見ていたアマリアは不思議に思いながらも縄を引っ張って手元にあった桶に水を入れていた
「・・ふぅ、気持ちいいな・・イズミも顔を洗ったらどうだ?早く朝食を取りにいかないと冷めてしまうだろうしな」
「はいはい~っと、冷たいなーでも気持ちいいなー」
手で水をすくって顔を洗うと冷たさに少し驚いたがちょうど心地よい風が吹いて目を細めた
「おや、イズミちゃんだったかねぇ?さっきの階段の出来事見てたけどすごいもんだねぇ!はい、これは朝食だよ!ああ、それとあたしの名前はアルクって言うんだよ」
「えーと、よろしくお願いしますねーアルクさん~まぁ、体が軽かったのが幸いしてみたいです~朝食って2人前あるみたいだけど・・僕の分なの?」
2人共、顔を洗うと宿に戻ると珍しい物を見たとばかりに宿の主人であるアルクが話しかけてきた、出された朝食を見ると2人前ある事に気がついてアマリアに質問すると
「うん?当たり前ではないかあぁ、気にしなくていいぞ?これはアルクさんが無料にしてくれたんでな?それにアルクさんの料理はおいしいからな、冷めないうちに食べよう」
「ほへー・・アルクさんありがとうございます~お金を稼いだ時には返しますので~」
「あっはっは!礼儀正しい子だねぇ~お金はいいからしっかり食べて大きくなりなよ?胸は大きいけどねぇ~」
豪快に笑うアルクに対して、イズミは胸が大きいと言われて分かってはいるが少し口を引きつらせたが目はしっかりと合わせて相手の目を見ていた
(む、むぅ・・何だろこれ・・アルクさんは人間なのに・・前より拒絶反応がない?・・何故?良い人だから?・・これはちょっとまずいかなぁ・・僕がボクじゃなくなりそうだ、それに異世界の人ってこんなに親切なものなのかなぁ?うぅむ、それは無いとは思うけど・・今は何とも言えない・・か・・)
「ふむ、ここに座ろうか・・ほらこれはイズミの分だ、残すとアルクさんから怒られるからしっかり食べるんだぞ?」
「うん、分かったよー・・匂いからしてすごく美味しそうだね~・・」
アマリアが運んでくれた料理を見るとパンが2つに魚と野菜のスープ(大盛り)が朝食だったがスープから出る香りにイズミのお腹が鳴った
(・・空腹は感じるのは良いけどお腹が鳴るのはいらないよ・・!!・・恥ずかしいってアマリア苦笑してるし)
「・・ふふっイズミもお腹が減っているようだし早く食べようか」
「むぅ、笑われると恥ずかしいんだけれど・・いただきま~す・・む、おいしい・・!!」
「ふむ、いただきます?何かの祈りなのか?・・ふむ、やはりアルクさんの料理は美味しいな」
ほんのりと塩味の効いた味で魚の旨みが染み出しておりサーモンの味に似ている魚だったが少し違うとようだ、パンの方も焼きたてなのかサクサクと香ばしい
(むぅ、誰かの手料理って食べたの久しぶりだけど、この魚の味は食べた事ないなー何の魚なんだろ?)
「んー、いただきますって食べる前に食材となった命に感謝するって事?だったはずだよー僕の国の文化だねー食べ終わった後はご馳走さま~って言って作ってくれた人に感謝するって事だったかなぁ?」
「ほぅ、それはまた素晴らしい文化だな・・私も食べた後だが・・いただきます」
イズミの拙い説明を受けてアマリアは感心したのか同じ事を行った後は黙々と食べて綺麗に残さず食べた
「ふぅ、アルクさんご馳走さまでした~美味しかったですよ~」
「おやおや、綺麗に食べてくれたね~いいよ!小さな勇者様に貢献できたんだからねぇ~ま、冗談だけどねぇ~」
「あぁ、こっちも頼むよアルクさん、ご馳走さま・・勇者?ははっ、勇者様は黒き漆黒の髪が特徴と・・あぁっ!?」
アルクが冗談のつもりで言うとアマリアは軽い笑みを浮かべて返答している最中に何かに気がついたのか声を張り上げていた
(え?何で勇者?・・うーん、アマリアの話だと黒い髪が特徴らしいけど・・アルクさん茶髪だし他の人の髪の色も金髪やら緑色とか染めてる?・・いや、違う?・・でもアマリア・・特徴が黒い髪なら最初に見た時点で気がつくでしょ・・)
「あ、いや・・イズミはその・・もしかして勇者様なのか!?」
「あっはっは!アマリアちゃんこんな小さい子がそんな訳ないでしょうが!そんなに近寄ったらイズミちゃんがビックリしてるよ?・・でも黒い髪は珍しいからねぇ~もしかして本物かい?」
「いやいやいや!そんな訳ないじゃないですか~それにアマリア近い!顔が近いから!」
アマリアがイズミの両肩を掴んで目を輝かせながら問いかけると、アルクも気になるのか質問をすると当の本人・・イズミは直感で面倒な事になると感じて即座に否定した・・それから数秒して熱が引いたのかアマリアは少し頬を染めて手を離した
「い、いやすまない・・少し興奮してな・・その、勇者様に憧れていてな・・それでなんだ」
「あら、そうなのかい?残念だねぇ~こんな可愛らしい勇者様ならあたしも喜んで手助けするんだけどねぇ~」
「いいですよ~誤解が解けたのなら・・それと余り可愛いとか言わないでください・・恥ずかしいので」
(・・可愛いって言われても落ち込むだけなんだけど・・これは・・メルちゃ・・いや、父さんと今度にでも会った時に切り刻んで『ん?やっと呼んだか・・もう少し早めに呼んで欲しかったぞ』・・父さん?少し会いたいんだけど・・イイカナ?)
イズミが黒い考えをしていると突然、頭の中に声が響いて少し驚いたが即座に考えを実行しようと心の中で念じた
『・・いや、仕事が忙しくてなぁ・・手が離せないんだ悪いな』
(そう、今ならまだ・・四肢の関節を外すぐらいで『待て!よし、男に戻す方法を考えるという事で手を打たないか!?』・・うん、そうしてね~考えるだけでしたー♪・・だったらワカッテルヨネ?『・・さて、何か質問があって呼んだのか?答えてやろう!』)
(・・・いや、今はいいよー話したい時は父さんって呼べばいいの?それと話を止める時はどうすればいいの?『ふむ、そんな事か・・まあ、話す時はそう呼べばいいし閉じる時は・・そうだな、心の中で 閉じよ と思えばいい』・・案外簡単なんだねーそれじゃぁまた何かあったら呼ぶねー 閉じ『あ、言い忘れてたがイズミの闇は異端として見られやすいから人に見せるなよ?魔女狩りとやらになるかもしれんが・・まぁ、気にするな敵が人々なら人々を、国が相手なら国を、世界が相手なら世界を俺が滅ぼしてやるから・・安心して使うがいい! 閉じよ』・・え?いや、ちょっと!父さん!?・・そんな大事な事なら最初に言って欲しいよ・・うーん、あんまり使わないようにしない『・・ズミ・・イズミ!』)
「・・おぉ?あれ?アマリアさんどうしたんですか~?」
「いや、イズミがどうしたと聞きたいのだが・・いきなり考え込むようにしていたから見ていたのだが長くて少し気になったのだが・・どうかしたのか?」
「え?いえいえー、何でもないですよー」
「ふむ、それならいいのだが・・よし、イズミに説明するとの約束を果たすのとこれからの事について話したいのだが・・何か聞きたい事はあるか?」
先程まで食べていた木のテーブルに腰かけて2人は話す体勢を作った
「んー、それじゃあ最初に聞きたい事はお金の単位と世界の大陸や周りの島と国についてと種族と魔法についてかな?いっぱい聞いてごめんね?」
「いや、構わんさ・・私が知っている範囲でしか教えられないし間違っている事もあるかもしれないが・・まずは通貨だったな?・・いや、余計な詮索はしないでおこう・・銅貨、銀貨、金貨、白金貨、黒金貨とあってな?銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚、白金貨が10枚で黒金貨1枚 といったところだな・・例えば朝食なら銅貨3枚、ここで一泊するなら銀貨2枚だな、それと一般的な家庭の一ヶ月の収入は金貨15枚程度だったはずだ」
「ふむふむ、なるほど・・」
アマリアは通貨の単位を知らないと聞くと少し考え込んだが、頭を少し振って話を始めた
それに対してイズミは少し考えこむような仕草をして
(えーと、銅貨1枚・・日本円にすると百円くらい?銀貨で千円、金貨で1万円、白金貨100万円?黒金貨だと1000万円かー・・ほへーすごいなーと、すれば一ヶ月の収入は15万円かー)
「よし、次は大陸と島だったな?この国についても話しておこう・・大陸は2つあってここから北に一つと今ここに立っている大地がもう一つだな、名前は北は無い・・魔族の巣窟となっているから暗黒大陸とも呼ばれている・・ここの大陸名はラムスと呼ばれていて意味は・・分からないな・・ここの町はイスカーン帝国の領地でな、前までは小国だったのだが各地に戦争を仕掛けて領地を広げていてなこれからも大きくなっていくだろうな・・悲しい事だ、戦争は何も生み出さんというのに・・今の王は民に手を出す事を良しとしない方でな兵士のみ相手をする事で有名だな・・それでも篭城戦になった時には被害が出たようだがな・・他の国についても西に行き国境を越えれば勇者様を召還する国である 救世の国 セシル王国、その上にある北西の絶対神アルスを崇拝する神聖国メロス、更にここから北に行くと山脈がありそこを超えればまた一つ国があってな、 極寒の国 ノーザン公国、兵士が強い事で有名だな、東は海に面していて周りに大小の島があり、他は南には帝国に対抗する為に結成され一応一つの国として、ガイル連合国があるな特徴としては商業が盛んで商人たちが専属の傭兵を多く雇っている事かな?・・まぁ、近くの国としてはここまでだが・・西にあるセシル王国の先にあるミディア湖と呼ばれる湖があって先には獣人の国 メルキド 周りには広大な森があり外部からの敵に対して自然の要塞になっているな・・近くにはエルフの里もあるのだぞ?隠されているがな」
アマリアが説明を終えると一息に言った疲れが出たのか少し休んでいるとイズミは説明を聞いて頭の中で考えていた
(ふむふむ、まー色々と大変そうだなぁ~兵士しか相手にしない戦争好きな国、勇者を召還する国、神を崇拝する国、極寒の地で屈強な兵士を所有する国、商人が盛んな国、獣人達が住む国・・うーむ、どれもおもしろそうな国だなぁ)
「うん、長い説明ありがとうね~疲れたのなら休んでもいいし説明を終えてもいいよ?」
「いや、別に構わんさ・・こちらとしても自分が知っている知識を言うだけだし・・それに言えない事は伏せさせてもらうが・・いいかな?」
「おぉ?いえいえー、別に言ってはダメな事とかは言わなくていいですよー?」
イズミの返事を聞くとアマリアは薄く微笑んで話を続けた
「では、次は種族だな・・数での順で言うのならば人間、獣人が多くいるな・・それでも人間の方が圧倒的に多いのだがな・・逆に後は少数だな・・エルフ、妖精族、魔族・・それと竜人だな、種族の特徴としては人間の場合は詠唱魔法が扱える事と手先が器用な事かな?獣人は身体能力が高いことで有名だな、稀に魔力が高い種族や子が生まれる事があってその場合は詠唱魔法が使えるな、次にエルフと妖精族は精霊魔法を扱えるのが特徴だな、魔族は詠唱魔法を使い身体能力が高いこと後は人を見れば襲い掛かると言われている・・後は稀に特殊な能力を持っている事があるとされているな・・詳しいことは分からないんだすまない、次に竜人・・これは高位の竜が人の形をとる人化することができる竜の事を言っているんだ、竜人は知能が低い竜と違って言葉も普通に話すし何より莫大な魔力によって詠唱も精霊の力も無しに魔法を使う事ができる・・それに肉体も・・生半可な武器では傷一つ負わないだろうな、まぁ他にも竜の特徴はあるのだが・・これはまぁいいだろう何せ竜人は、おとぎ話の類に入るぐらい見当たらないからな逆に下位の竜も個体数は少ないが実在しているが・・何か質問あるか?」
アマリアが種族の説明をしていたが、イズミは獣人、エルフ、妖精族、魔族、同族となるかもしれない竜人に対して興味を抱いていた
(おぉー!獣人やエルフや妖精さんや魔族を早く見てみたいな~エルフは目の前にいるけど、うぅむ・・これは色々と興味が沸く事がいっぱいだなぁ・・竜人かぁ・・うーん?僕も竜人に当たるのかなぁ?見た目はニンゲンだけど、何かアマリアから子供扱いされてる気が・・見た目は確かに背が小さくって子供だけど・・)
「ふむふむ、なるほどなー・・うん、一気に全部知ってもつまらないし自分で調べて知るのも楽しいしね~」
「ほぉ、良い心がけだなさて、次に魔法についてだが・・詠唱魔法、精霊魔法、古代魔法の簡単に分けるとこうなるな・・詠唱魔法は文字通り詠唱を行い世界の理を変えて魔法を実現させるんだが、詠唱している者の魔力に左右されて威力が変わるし必ず自分が使いたい魔法を唱えなければならないのが特徴だな・・例えば火の中級魔法に灼熱の牙と呼ばれる魔法があるが炎の獣を具現化させて相手に襲い掛かる魔法なのだが・・その魔法を呼び出すために言う言葉・・呪文を唱えた後に魔力を込めて灼熱の牙!と言わなければならないんだが熟練者ともなれば魔法を使う際の呪文を唱えなくてすむようになり一言・・灼熱の牙と呼ぶだけで魔法を使うんだ」
(ほへー・・なるほどなぁ~魔法も奥が深いなぁ・・使えたらおもしろそうだけど僕って使えるのかな?魔力?が必要みたいだし)
「ふむ、ここまで長く説明してきたが・・少し休むか?後からでも話は出来るが・・」
「む?大丈夫ですよ~しっかり理解してますから~」
「そうか・・では次に精霊魔法についてだが・・ウィル出てこれるか?《ハイハーイ?お呼びですかー?マスター》・・このように精霊と契約をして己の魔力を精霊に渡して魔法を使ってもらうんだ」
アマリアが空中に向かって声をかけるとフワリとイズミの頬を風が通ったかと思えばいつのまにか緑の髪をした女性が浮いていた・・体が透けているが
「・・おぉ?幽霊とはこれまた珍し《誰が幽霊ですか!?あんなのと一緒にしないでください!》おおぅ幽霊いるんだ・・ほへーそれにしても綺麗ですねー・・これが精霊ですかー」
イズミが精霊を褒めるとアマリアもどこか嬉しそうに微笑む
「ふむ、で《やーん、本当の事でも言われると嬉しいですねー♪イズミちゃんも可愛いよー?》・・・・精霊魔法は契約すれば使えるようになるのだが人間と獣人には見えないし話をする事もできない・・今はこうして魔力を与えて見えるように話せるようにしているのだが・・顔も分からない程に透けて見えるだろう?」
(可愛いってまた言われた・・そう、気にしなければいいんだ・・気にするから悲しくなるんだうん、そのはずなんだけど・・やっぱり嫌だ!)
イズミが頭を抱えて悶えていたが気づかずにアマリアが一通りの説明を終えるとイズミに問いかけるがウィルが先に答えた
《あれ?でもマスターさっきこの子・・私のことを見て綺麗だねー?って言ってたよ?》
「・・・は?イズミ・・見えるのか?精霊が?・・人間だと思っていたのだが・・」
アマリアが口をまさかとばかりに開けていたが気を取り直して言葉を続けた
イズミは人間と思ったと言われ少しムッとしたが・・すぐに表情を元に戻した
(うん、やっぱり僕はニンゲンが嫌いだなー少し安心できたけど・・以前よりは嫌悪感が少なくなってきているのも実感できるし・・これはまずいなぁ)
「ほえ?あぁ、見えますよー体は半透明ですけど~顔も透けてますけど輪郭も分かりますしー」
「・・イズミはハーフエルフなのか?いや、聞かれたくない事ならば詮索はしないが」
「ん?ハーフエルフ?・・あぁ、ハーフですかーいえいえー僕は違うはずですよー種族はお世話になっているアマリアには言うべきなんだけど・・確信が持てたら話すという事にしたいので・・ごめんなさいです」
「いや、気にしないでくれ・・そうだな見えるなら紹介しておこうウィル」
《分かりました~!私は風の精霊でウィルって名前だよー!強さは精霊の中では・・中の上ぐらいだからけっこう強いんだよ!》
アマリアの言葉に元気に答える風の精霊ウィルに対してイズミも自然と珍しく少し明るく答える
「そうですかぁ~僕はイズミです~おぉ、どのくらい強いか分からないですけどすごいって事は分かりますね~」
「さて、精霊魔法は精霊と契約して行うが同じ魔力を使ったとしても詠唱魔法よりも遥かに強い・・その理由としては詠唱魔法は言葉を使い世界の理を無理に変えて魔法を実現させるが、精霊魔法は精霊自体が自然・・世界から生まれてきたものだ・・故に世界の理を変える際には精霊の方が優しく扱う事ができるのだ・・まぁ、弱点としては風の精霊と名がつくように・・他の属性が使えない事だな・・他は精霊に頼るために精霊の力が弱いと魔法も弱くなると言った所か・・悪いが特徴はまだあるのだが・・これは言ってはいけない決まりでもあるんでな・・すまん」
アマリアが申し訳なさそうに謝ると慌てたイズミは言葉をかける
「おおぅ・・どちらかと言えば謝るのは僕の方なのに・・申し訳ないです」
(ふむ、何というかどこまで良い人なんだろうねぇ~まずいなぁ・・アマリアに対して心を許ししつつある・・僕と性格も似ていない・・考える事も全く違う・・そう、僕とアマリアは違う・・よね)
「そうか、そう言ってもらえると助かる・・次に古代魔法とついでに属性についても話しておこう、そうだな古代魔法は失われた魔法と言われて使えば不老不死の妙薬を作る事も死者すら蘇らせる事も可能でありその威力は山を消し飛ばす程の威力とされているが・・記された書物は国が保管していたり強力すぎて使うことが出来ないなどの欠点があるとされているんだ・・詳しくは私も分からんのだ、すまない、次に属性は得意な魔法を示している、火、水、土、風、光、闇・・特殊なものでは、時間、空間などがあるな、例えば火と属性が示された時は火の属性魔法を使えば効果が上がるし火の魔法を覚えやすい、逆に対極にある属性・・この場合は水だな効果が低くなるし覚えにくい他の風、土は上がりもしないし下がりもしないのだが時間や空間は属性が違うのであれば難易度が格段に上がるな・・それほど難しいんだ、光と闇は例外でなこれは先程の火、水、土、風、時間、空間の6属性では使えないんだ光や闇の魔法がな、同じく対極で自分が光の場合は闇を扱いにくくなるが他の属性・・火、水、土、風は最上級魔法まで覚える事も可能とされている・・まぁ、かなり有利な属性だな闇も同様だが・・これは魔族が得る属性なのでなあまり人に知られると良い顔はしないだろうな・・ちなみに私の属性は風だ、人に知られれば弱点ともなりうるので無闇に教えてはダメだぞ?」
長い説明を終えるとアマリアが伸びをするとイズミも説明された情報を元に考える
(なるほど・・つまりは光と闇になればお得と・・ただし、闇の場合は迫害の対象にもなるかもしれないのかぁ~・・僕の闇・・影は使えないかってあれ?得意属性とか調べられたら闇って出るんじゃい?・・おおぅ、これはまずいなぁ)
「ふむふむ、分かりました~説明ありがとうございます~アマリアさん少し待っててくださいね~ちょっと水もらってきますので~」
「む?あぁ、すまないな・・ちょうど喉が渇いていた所だ」
イズミがアルクの所まで歩いていき水を2つもらうとアマリアに渡して自分も飲みだして一息ついた
「ふぅ・・ここまで長く喋るのも久しぶりだな」
「おぉ?すみませんね~僕のせいで時間取らせてしまったようで・・」
「いやいや、別に構わんさ私としてもどの道ギルドに行って依頼を受けてどこかに行ってたさ」
イズミはアマリアの目を見ていないが彼女は本心から言っているのであろうと今までの事から予想した
「そうですかぁ~そう言ってもらえると助かります~」
「うむ、そうか・・では次の事なんだが・・イズミはこれからどうする?」
少し間を置いてアマリアは話を始めた・・本人は気づいているかどうかは分からないが寂しそうな表情を出しながら・・